9Rー59Dの修理
9Rー59Dの修理 その2
9Rー59Dの修理 その2B
9Rー59Dの修理 その3
9Rー59Dの修理 その4
9Rー59Dの修理 その5
9Rー59Dの修理 その6

トリオ 9R−59D 修理体験記 その7(2020年2月23日)

調整だけと依頼されたが とんでもない状況だった

 始まりは

「オプションの定電圧放電管(VR-150MT)を取り付けてあります。
★電解コンデンサーとオイルコンデンサーは全て交換してあります。
★抵抗も必要に応じて交換してあります。
★RF-GAINボリュームに残留抵抗がありましたので、回し切った時にスイッチでショートするようにしました。
★取扱説明書にある基本的な調整をしました。周波数目盛は完全には合いません。
★AM放送等強力な信号を受信すると音が割れてしまい、RFゲインを絞る必要があります。
★Sメーターの振れが悪いです。

以上です。調整だけでいいと思います。」
というメールでした。

動作させてみると確かにSメーターがほとんど振れません。
IFの調整などをやってみてもJOAKでも外部アンテナでもほとんど振れないのです。
目盛りも 勿論 合いません。
依頼主は 調整だけで大丈夫と思い込んでいるようです。

下記画像は 全ての調整が一応終了した時です。
普通はほぼフルスケール状態なのに。




目盛りが合わない件で2日ほど 始点の調整など いろいろ試行錯誤しましたが、
最後の手段でバリコンの容量測定をしました。

OSCバリコンで最大で446PFあり、やはりバリコンにCRCなどを噴射したらしい。

測定結果は
容量 最大値      446PF  440PF  435PF
600KHz位置で   337    335    331
700         243    240    238
800         176    174    173
900         134    133    132.5
1000        103.7  102.4  103.5
1100        80.6    79.3   79.4
1200        60.8    60.0   60.2
1300        46.0    45.4   45.6
1400        34.0    33.6   33.8
最小値         13.4    13.5   13.4PF

測定は秋月で売られている簡易容量計です。
  


どうも接点復活剤をバリコンの羽根に掛けたらしい、時々この種のトラブルには出会いますが、

 


組み立て不良

最初に組み立てた方がまずかったのか 判りませんが 半田付け不良が見つかりました。
芋半田です。
キットの修理は 最初に組み立てた方の技量が先々まで影響します。

これを見て全体的に 間違いがないか調査することにしました。
この作業が 大変でした。




なお RFゲインが大きいと音が歪む件は 調査の結果 RF部分の真空管部分で歪むというより、
検波回路が怪しいという事が 判った。
結果的に 依頼人が交換したコンデンサーの容量が20PFのところに100PFが組み込まれていた。
この部分を交換したら 解決した。

なお出力管の6AQ5はバイアスが6Vくらいで動作しています。
これはG2の電圧も低いためですが、
AFゲイン を上げてゆくと簡単に出力管のAF入力がバイアスを越しますので歪みます。
(尖頭値が6V以下 実効値で約4Vを越すと歪む)

画像 基板 左側の青いものが間違って組み込まれた コンデンサー




なお基板面以外に配線の間違いがないか調べた。
意外に これら配線の正常さの確認が大変で、この手間が合わせて 数日分 かかった。
基板と 普通の配線が混在しているので 判別が大変。





インダクタンスを減少させるコア代用

これは発振子ですが 金属の缶に入れられています。
その金属がインダクタンスを減少させる働きをします。
発振子として利用しているわけではありません。

またリード線はコイルの中に固定するために利用しています。

実装写真は下記の画像をご覧ください。
(リード線はアース端子に半田付け)

ただRFコイル(6BE6の負荷コイル)は
取り付け方向の関係でコアが入れられない。
この部分は調整ができない(感度が少し落ちる)



さらに 6BA6を手持ちのもの(新品)に変更するとわずかにSメーターが増加する。
メーカーも同じで GMもほとんど変わらないのに不思議だが、交換した。
新品の方は松下の3角マーク?、依頼品はナショナルのマークがついている。






ナショナルのマークつき6BA6


新品に交換した場合



これで良しとして、BCDバンドを調整した。
なおBCDはコイルのインダクタンスがコアで変えられるので、小細工は不要。



改造途中の9R−59Dの修理 (2020年3月12日)

止めネジが半分くらい無い 不思議な9R−59Dがやってきました。
どうも改造途中だったようで、その後の苦労は予想だにしませんでした。

不思議なのは途中で切れた配線が有ったり 別の真空管がさしてあったりすることでした。





何故か 低周波増幅とBFO部分には 6AQ8の代わりに12BH7(A)が使われていました。
松下の規格表を下記に転載しますが、12BH7は望ましくないのです。
増幅率も異なります。

特にBFO用としては用途も違うし もともと規格のよく似た12AT7を利用することにしました。
12AT7はFMなどのVHF用の増幅管です。
規格もほぼ同じですが、違うのはユニット間にシールドがありません。
12BH7Aの代わりに挿しても そのまま動作します。
下記画像で見ても 12BH7Aとは全く違います。


6AQ8  12AT7  12BH7A



これらはナショナルの出版物より転載
 


 




次は VRの処理です。
なぜここにVRがつけてあるかは不明です、もしかしたらバリキャップを使うつもりだったのかも。
でも 配線もありませんので 謎のままです。



手持ちのトリマを組み込んで試験 これで前面パネルも組み込んで最終試験した。


容量は最大で20PF 

いろいろ試験後 周波数変化が3.5KHzくらいしか無いので
自然浮動も考えると厳しい。
(180度回転で3.5KHz)


3日後 最終的に問題と判断し、交換することにした。
これが苦労の始まりだった。

穴拡張工作までやったが無駄だった。

トリマの組み込みは 同じ取り付け寸法だと簡単だが、ポリバリコンだと微妙に違う。
穴あけを工夫したが 無駄だった。
組み込みは可能なのだが 前面パネルが ネジの頭の影響で浮き ぴったり組み込めない。





ポリバリコンを組み込んだところ。
電気的には大丈夫で 正常に動作するが、
前面パネルが 浮いてしまう。



容量的には大丈夫だが ネジの頭が邪魔になり 前面パネルが組み込めない。
いろいろやすりがけしたが無駄だった。
最終的に ミゼットバリコンの羽根を少し 少なくして組み込んだ。
この作業で3日も無駄な作業に費やしてしまった。


オリジナルのトリマは30から40PF位と想像されるが、
ミゼットバリコンの羽根を切断して使った。
多少 容量は大目と思われる。
(あまり理想的とは思えないが)

異常動作

これで全て条件が整ったので 調整に入りました。
全て 受信できるのですが Cバンドのみ なんとなく様子が変なのです。

特定の周波数で がさごそ雑音が聞こえたり 受信状態が不安定なのです。
調べてみると Cバンドのみ 発振管の6AQ8を抜いても バリコンの特定の位置で発振しているのです。
下記画像は OSC回路のバリコンの様子をオシロで観察しているところです。

6AQ8無しで発振(特定の周波数で)、6BE6を抜くと 発振は止まる、
ただしヒーターが冷えた状態でも 挿すだけで発振する。
念のため12BE6で試しても同じ、どうも電極間の静電容量が影響しているらしい。
RF増幅の6BA6を抜くと発振は止まる。





6AQ8付近の配線を見ると いやに混みあっている。
最初は正常に動作するので そのままとしたが、念のためこの部分を正常の配線に戻した。
これであら不思議 怪しげな動作は消えてしまった。



なぜこのような回路にしたのかは理解できません。
6AQ8は双3極管で1本分余っているので、
もしかしたらバッファにするつもりだったのかも。

正常な回路に修正しました。






これで 調整して 完了です。
なお 出力管の6AQ5のバイアスは普通の使用状態より低い(G2が低いので)ため VRをあげると歪みます。
(6AQ5)のAF入力の最大値はバイアス電圧以下でご利用ください。

さらにこのモデルは いやにSメーターが振れます、原因は未調査です。





9Rー59Dの修理

9Rー59Dの修理 その2

9Rー59Dの修理 その2B

9Rー59Dの修理 その3

9Rー59Dの修理 その4

9Rー59Dの修理 その5

9Rー59Dの修理 その6

9Rー59Dの修理 その7

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9R−59D(S)の修復については下記も是非ご覧ください。
花澤さんの修復記
JA9TTT加藤さんの修復記

リンク切れなので カウンターに関するリンクを下記に掲載
http://ja9ttt.blogspot.jp/2009/03/hamtest.html

下記書籍を参考にしてください。

 2004年2月25日
2004年2月27日
2007年8月29日:3266
2007年9月3日:3719 回路図を追加。
2010年8月17日:6,969 9R-59DSの修理を追加。
2011年4月26日:10,348 
2012年3月5日:14,630 
2012年6月15日:16,441 5月31日調整分を追加。
2012年8月3日:17,366
2012年10月26日:18,890
2013年3月7日:21,540 続きを作成
2016年1月29日:40,283 カウンターの接続を追加。
2017年4月1日:48,192 DSCF0777 DSCF0780を変更(拡大)
2020年3月14日:72,017

ss

2020年2月26日
2020年3月14日:306

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