ソニーTFM−2000Fの修理 


TFM-2000Fの修理(2021年6月22日)

久しぶりに修理をしました。
かろうじて受信するのですが 音が歪んでいます。
それとSメーターが振り切れるのです、通電したときだけなのでメーターは活きています。
ただ 断線させる恐れがあるので ダイオードのメーター保護回路を早速組み込みました。

回路図をみるとIF回路のTR 2SC710(Q303)のコレクターにメーターが入れられています。
このTRの不良と思い 交換作業に取り掛かりました。
基板は 画像右上の部分に相当します。
基板を傾け TRを交換しました。
これで一応正常に音が出るようになりました。



なお この基板は初期型です。
後期型とはコイルやトリマの位置が違いますので 注意が必要です。
技術者が最高性能を狙って アマチュアーの自作品のように設計した通信機です。
保守性は考えられていませんので 修理は充分注意して取り掛かったほうが無難でしょう。
技術的に最高感度を狙って作ることと 保守性は残念ながら両立できていません。
壊れないという信念で作られているので 壊れると大変です。
基板を外すのに沢山の配線を外す必要があり、部品交換後 動作確認は 仮配線をしないとできません。
とにかく 手間がかかります。



ただ この基板はあちこち配線がされていて間単には外せません。
配線の一部を取り外して 開くと図示の形になります。
この状態でTR を外すのは大変です。

この時代のソニーは半導体は永久保証と言って販売していた時代なので、
基板への組み込み方も 取り外し易さという配慮が全くありません。
さらに悪いことにパターンの接着剤が熱に弱くパターンが簡単に無くなるのです。

愚痴はさておいて Q 303の交換を済ませました。
これで通電してみると 見事回復です。
他も交換しようかと悩んだのですが 手間が大変なので 正常動作をよいことに組みたててしまいました。





これでMWの試験 目盛りあわせが終わり SWの目盛りあわせがほぼ終了したころ、
マリカリと小さな音が出始め 数分後だんだん大きくなりました。
やはり IF段のほかのTRも駄目なようです。
その後 再度分解して Q301 Q302 Q304を交換しました。



実はこのTRの交換が大変でした 5800や5900のおなじTRの交換に比べ20倍くらいな手間がかかるんのです。
本当はもう1段あるのですが 諦めました。
悪くすると 基板を壊して 修復不能になりかねません。

取り外せれば あるいはもう少し手前に引き出せたらずいぶん楽に交換できるのですが・・。




なおチューナー部は大丈夫でした。
ここも 将来の安全のため 交換をしたかったのですが、基板を取り外すのに 配線を7箇所 ネジを3箇所 外す必要があり
試行してみたのですが 基板が外れません、残念ですが諦めました。
動作不良なら 当然分解しますが 正常なので これで良し としました。

注記

このラジオ(TFM−2000F)の修理は もう引き受けられません、手間がかかり 依頼主に迷惑をかけるからです。
最悪修理できないこともありえます。
修理し易さは全くありません。
2021年6月22日

 TFM-2000Fの修理(1台目) 

ソニーの高級ラジオの修理を回路図つきで依頼されました。
回路図さえあればほとんどのものは修理できます。
MPX端子にイヤホーンを挿入したらスピーカーから音が出なくなったというもの。


外観は比較的綺麗です、ただ良く見ると大分 手が入れられています。
アンテナの先端はICF-5900のものがつけられています。
どうも相当器用な人が手入れしたようです。
このようなラジオは内部も相当手が入れられている可能性が高いです。

裏蓋を開けてみるとだいぶ修理された跡がある。
裏蓋を止めたネジもオリジナルでないのか、
またはばか穴になったのか、きっちり締まらない。



故障の原因はMPXジャックの故障であった(右から2個目)。
写真では良く見えないが可動片が半田付けされている。
どうもこの可動片が折れたので、以前の持ち主が半田付けしたらしい。
このラジオもオークションで入手したそうだが、
どのような条件で購入したのか不明なので、評価は避けたい。
このMPXジャックを単純に交換すれば良いのだが、まったく同じ物が入手できず、新品と交換した。
処が寸法が違うので、MPX端子のみを交換できず、AUX端子のものをMPXに、AUX端子用に新品を取り付けることで修理した。

この写真はラジオ工房手持ちのTFM−2000F
上記の依頼品と比べてみると修理された形跡が無い。




ダイアル目盛り合わせとトラキング調整を依頼されたので始めようとしたが。
生憎調整部品の位置を書いた資料が無い。
仕方なく手探りで、コアとトリマの場所を確認して、調整した。
このラジオは3連バリコンなので、調整箇所がMW SW1〜4の 5(箇所)×3(ANT RF OSC)で合計15箇所あり、
判別に苦労した。
この為自分のTFM−2000Fを分解して、トリマとコイルの位置を1個ずつ確認して調整完了。
この調整は経験が必要です、無闇に触らぬほうが無難です、念のため。

2)2台目の修理

同じ方から2台目の修理依頼がありました。
結果的には修理を諦めました。
この時代のラジオはやたら配線が多く、それも個々に違う配線がしてあります。
一度も修理していなければ良いのですが、今回のラジオは修理されています、こうなると悩ましいです。
全ての配線が正しいかどうか調べる必要があります。
ところが下の写真に示す如く、個々に違います。
こうなるとお手上げに近いです。
時間さえかければ修理可能ですが、修理できた後の価値と比較して割高な費用になるので困ります。
どこかで割り切る必要があり、今回は修理中止としました。
修理中止した理由は下記分解をしてみて、作業が大変だと言うことがわかったことです。



手持ちの2000F




前回修理の2000F


今回依頼された2000F
手持ちのものに比べトリマの位置さえ異なっている。

修理可能かどうか検討する為に手持ちの2000Fを分解してみました。
最悪壊す可能性が有ますので、自分の物を実験材料に使います。












ここまでは比較的簡単に分解できます。
回路を追いかけてゆく為にはさらに分解する必要があります。
左に見えるのがフライホイール、この為ダイアルの操作感が素晴らしい。
中の作りはこの様に豪華であるが、
これ以上の分解は半田付けを外さなければならない。



外部から中を確認しようとしたが難しかった。
@3連バリコンを使った高周波増幅付で、調整すると感度が大幅に変わるので、Qも相当高いと想像できる。
今回修理依頼されたものはMWの感度不良だったが、RFコイル(RFとCOV間)の部分がどうも不具合と思われる現象だった。
ANTコイル(バーアンテナ)はDIPメーターで確認したがトラッキングはOKだった。
ASWは問題が無いので、MWのRFコイル付近が怪しい。
BRFコイル部分を確認したかったが、基板を裏返さないとパターンが追いかけられず、最後は諦めた。
C1台ジャンクがあり、基板を裸にすれば、比較的簡単に修理できそう。
Dどちらにしてもこの機種は多くは市場に出てこないので、ジャンクは期待薄。
ここまで調べるのに1日半くらいかかってしまった、残念。

3)3台目の修理に挑戦

持ち主から
ACコードをコンセントに挿すとブレーカーが落ちます、但しDCでは作動します。
しかしFMは即受信出来ますが。AMは電源スイッチを数秒間のインターバルで10回前後繰り返さなければ作動しません。
まずAC動作の確認です。
電源部を分解してみました、ヒューズは大丈夫です。
ACプラグで導通を測ってみました、適当な抵抗値があり、ショートはしていないようです。
スライダックを使って低い電圧から徐々に加えてみました、結果的には100V動作OKでした。
あるいは他に原因があるのかもしれませんが、少なくともAC単独では動作は大丈夫でした。

この機種の特徴は所謂ジャンパー線があちこちに跳んでいることです、また製造時期によって基板が異なるので、
誰かか修理した後は大変です、結果的に前回は修理できませんでした。
内部は修理した形跡があります、配線をやり直していない事を祈るばかりです。
このジャンパー線を間違われると、見つけるのは至難です。
さて
通電してみるとFMはほぼ正常に動作します。
SWの一部でかすかに受信します、感度は非常に悪いです。


写真でみると1台目のものと同じようなトリマ配置です。
まずバンド切替スイッチを疑いました。
SW MW用スイッチとAM FM切り替え用の2つとも接触不良がありました。
しかしこれだけではありません、水晶発振子用のソケットも接触不良です。
水晶発振子はNSBや特定の放送局を安定的に受信する為の物です。
報道機関などで使われる事が多いので、このような配慮がされているのでしょう。

これで中波放送も受信できるようになりました、Sメーターも80%くらいまで振れます。
しかしトラッキング調整をしてもどうもSメーターの動きが変です。
調整時コアやトリマを動かすと敏感に反応するはずのSメーターが殆ど変化しません、
調べてみるとジャンパー線が外れています。

ジャンパー線が途中で切れている様子。
(右上から中央に向いている透明ビニールチューブの線)
どこに接続されていたのかわかりません。
虫眼鏡で断線の痕跡を捜したのですが、見つかりませんでした。
仕方なく回路図から追いかけてゆく事にしました。


何とか以前 接続されていた場所を特定しました。


半田付けした様子。
この配線で中波の受信もトラッキング調整も正常に出来るようになりました。
不良箇所があちこち分散していて、それぞれが少しずつ悪さをしていましたので、見つけるのに苦労しました。
短波の感度が悪かったのはトラッキングのずれが大きいのも影響したようです。
このラジオは内部はアマチュア-の手作り的配線もありますが、全体的には豪華なつくりで、操作感も素晴らしいです。

内部の止ネジもバカ穴になるくらい分解を繰り返し、修理してある様子でした。
1969年頃の製造ですから、いたし方ありません。
耐用年数は過ぎていますので、騙し騙し使っていただくしか有りません。

4)4台目の修理に挑戦

症状は下記
感度の低下。
各スイッチ、バンド切替の接触不良。
ボリューム等のガリなど。

このラジオはソニーの体質を良くあらわした作り方になっています。
なんとなくアマチュア―の自作品の雰囲気が残っているのです。
あちこち リード線が張り巡らされていて 保守性が極端に悪いのです。
正直 修理したくないラジオです。



分解して 本体をケースから取り出し、各部分に注油します、これで多少円滑にバンド切替SWが動くようになりました。
ソニーのラジオでは5800や5900と共通ですがAMとFMの切替SWがあり、この部分の接触不良が極端に悪かったです。
このSWは裏面からみて右側の低周波基板に組み込まれています。




MW SWの調整はそれぞれANT RF OSCの3か所(コイルとトリマ)有りますので、
MW SW1〜SW4まで入れるとコアとトリマの30か所の調整になります。
この調整で感度は一段と上がりますので、まじめにやる必要があります。

感想

このラジオの修理は面倒なので、出来れば遠慮したいです。

BCLラジオの修理をご希望の方はラジオ修理工房をご覧ください、メールには住所 氏名をお忘れなく。


このように修理できないときは無料です、送料のみは負担ください。



2002年5月25日
2002年8月3日
2002年8月4日

2006年6月26日
2012年5月15日 3,382 まとめ その4を追加。
2012年5月19日 3,397 4台目の修理を追加。

2021年6月22日:7,497 五台目の修理





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