クーガ7の修理体験記    

相当酷い状態のクーガ7が修理にやってきました。

電池の液漏れをしたり、アンテナは折れてしまったりしたのですが、想い出の品物で、
ここ2〜3年家で聴いてましたが、とうとう音が出なくなりました。
前から音声が突然大きくなったり、雑音が入ったりして他のですが、何とか聴くことができていました。

まず通電してみると、確かにNGです。
スイッチやタイマーも故障で通電できない事がたまにありますが、どうも現象から違うようです。
この機種は外部機器に電源を供給する為のDC OUT端子が装備されています。
この部分から給電してみました、こうすると電源スイッチ無関係に通電できます、
ランプが点灯し通電が確認できました。
ただ雑音さえ出ません。


分解してみると、DC INジャックの半田をつけた部分のプリントパターンが破損しています。
普通に使ってこの様なことはまずありえません。
どうも持ち主が分解したようです。
電池の金具(バネ)が錆びているので、あるいは磨いたのかもしれません。

なお何度も分解したのか、写真右上のネジを受ける「ボス」がバカ穴になっていて、ネジが締まりません。
さらに左下の「ボス」は破損していました(写真参照)。
ネジは無理に廻すと壊れますので、分解は丁寧にお願いします。

これで正常に通電できるようになりました、最初は良くあるバンド切替SWの不良かと疑ったのですが、これも違いました。
何回かSWを操作すると音がでるようになりましたが異常です。
よく見ると写真左上のセラミックコンデンサーの様子が変です。


上記の拡大写真です。
薄く横筋が見えると思いますが、半田付けをはずしてみたら完全に半分に割れていました
下側にパラフインが付着していて、これで固定されていたようです。

常識的に判断して 機械的に壊した感じです。
自然に半分に割れるとは考えにくいです。
輸送時の衝撃で壊れた可能性も否定できません。
手持ちのセラミックコンデンサーに交換しました、しかしそれでも回復しません。
音は一応出るようになりましたが、ガリガリと音がしたり、急に大きな音になるなど不安定です。
あるいは持ち主の方の「突然音が大きくなる」云々の状態まで回復したのかもしれません。
JOAKを受信しながら、5900で局発の信号をモニターしていたら、Sメーターが激しく動きます。
どうもクーガ7の局発用のトランジスターが変だとオシロスコープでモニターしてみました。
異常発振を起こしている事がはっきりしましたので交換しました。
これで正常に受信できると期待したのですが、駄目でした。
短波は一見正常です、でもMWを受信すると様子がおかしいのです、音が歪んでいます。
感度調整のVRを操作し感度を下げると、正常な音になることが分かりました。



クーガ7のブロック図

クーガ7は比較的珍しい構成になっています、FMとAMの高周波増幅が共通です。
ジャイロアンテナはFETで直接受ける構造で、クーガ2200と同じ方法です。
これはQが非常に高いので、高感度ですが、トラッキングがずれると逆効果になります。

感度調整を低くすると正常な音になると言う事はAGC回路の不具合ではと推定しました。
クーガ7はMIXのトランジスターと中間周波増幅回路用ICにAGCがかけられています。

左の写真はICの部分です、マジックインキで緑色に塗ってある部分が入力(信号+AGC)回路に相当します。
この機種はパターンを追いかけてゆくのが楽ではありません、意外に苦労します。
同じ現象が発生した時の為に追記しておきます。
AN210は14ピンのICで写真では左の一番上のピン(Mピン)がAM入力になります。
もう一つ FM・AM MIXと書かれたトランジスターのベースにも加えられています、こちらの写真はありません。

Sメーターは見かけは正常に動作しているようです。
まずAGC軌電回路の抵抗の断線を疑いました、これは大丈夫でした。
AM MIXとICの入力側の電圧を測定してみました。
DC電圧が異常に高い事がわかりました、原因を追求してみると結果的にMIXのトランジスター不良と判明しました。
EとCの間が抵抗をパラに抱かせた感じになっていて、導通が有ります、勿論増幅も多少します。
この部分の電圧が高く、AGCが効かなかったのが理由のようです。
ソニーのラジオでトランジスター不良はよくあることですが、松下の物では珍しいです。
しかし不思議な現象でした、この様な故障は初めてです、随分悩まされました。


半分に割れたセラミックコンデンサー。
ガリガリの原因の1つかもしれないが、
半分でもコンデンサーの働きはするようだ。

交換したトランジスター。
結局発振用とMIX用の2本を交換したことになります。


壊れた「ボス」左側が取れた跡で、右側が「ボス」の破片、
エポキシ接着材で元の位置に固定した。

輸送時の梱包方法。

このラジオは深さの浅い菓子箱状のもので、送られてきましたので、あるいは輸送中に衝撃を受けたのかもしれません。
BCLラジオの梱包は多少深さのあるダンボール箱に入れて、送ったほうが無難です。
クーガ7は出っ張りが少ないので、被害は少ないのですが、5900や2200などは充分注意した方が良いでしょう。
ダイアルメカが壊れると費用が高額になり、実質的に修理できなくなります。
最後に
この様に故障が沢山重なっているBCLラジオは初めてです、普通 多くとも2〜3箇所くらいなのですが、いやはや。









素人修理のクーガ7

秋葉原のお店で買ったと言うBCLラジオが修理にやってきました。

突然、右上のPOWER−スイッチを切っても電源が切れない現象が発生しました。
裏蓋を一度開けようとしたのですが、
本体の基版と結線されていたと思われる配線は1箇所抜けたのか?まったく受信しなくなってしまいました。

裏蓋を開けてみるとスピーカーのアースリードの半田が外れています。
電源が入らなくなったのはこのリード線が別の部分に接触した為でした。


この部分の半田付けは熱容量のあるものでないと上手くつきません。
真空管ラジオ用の半田鏝なら簡単ですがTR用だと厳しいです。



このように半田付けをする必要があります。



分解してみると、DX切替スイッチつきの子基板のネジが緩んでいます。
この部分はMWの受信周波数を合わせるときに取り外す部分です。
調整後締め付けを忘れた感じです。
ただ目盛りが合っているかと言うと、狂いが大きいと言えます。
特に周波数の高い部分のJORF(1422)が数十KHz狂って受信できます。
結果的に調整も真面目にやってない感じでした。
驚くほどの素人修理で、これでは購入する人が気の毒です。
この修理をした方はこちらと同じ方のようです(推定です)。
この方がbCLラジオ修理読本を作成した方ですから 進歩したものですね。


全く無音のクーガ7の修理(2013年4月5日)

通電できるが 無音のクーガ7の修理です。
通電すると やたら電流が流れるのです、出力トランジスターの不良と思ったのですが、違いました。
取りはずやら 散々調べたうえで解ったことです。
バイアス用のダイオードの不良でした(画像の○印)。

アンテナも短く、最下段が半分くらいしかありません。
これではどうしようもないので、別のアンテナを移植しました。
これで大丈夫と組み立てたのですが、無音です。
実は試験はモニター用のスピーカーで確認していたので、スピーカー不良に気がつきませんでした。
無音だったので その時 確認すべきでした。
ただこの機種でのスピーカーの断線は非常に珍しいです。



スピーカーは別のクーガ7から移植しました。



受信確認中のクーガ7.


ここからは重複(最近のBCLラジオの修理のコピー)

MWが受信できないクーガ7の修理(2010年1月5日)

MWはノイズだけで全く受信できません。
SWの受信は正常です。


SWが正常で、MWが受信できない場合はこの機種の回路から考えて発振回路の故障が怪しいです。
不良になりやすい部品を取り外して、試験しているうちに回復して正常に受信できるようになってしまいました。
部品を取り外した時の半田こての熱が影響しているようです。
こうなると 不具合が再発するまで待つしかありません。
あちこち触っていると、怪しいところがある雰囲気になりました。
休憩しているうちに現象が再発しました、良かったです。

オシレーターコイルの不具合らしいと見当をつけて取り外しました。
交換用には手持ちのクーガ7から抜きとりました。


左側が今回のクーガ7に組み込まれていた物です。





分解してみると コイルはこのような形をしています。


上下逆にして、写したものです。
脚の部分と巻線が外れています。
これはコイルを基板から外す時に脚(ピン)を引っ張った可能性があります。
組み込んだ状態では先端部分が接触していた可能性が高いです。
(偶に動作していたので)
手持ちのクーガ7から抜き出したOSCコイルを組み込んで修理完了です。





添付メモが役だった クーガ7の修理(2017年7月7日)

非常に不思議な故障でした。
下記のようなメモが同封されていました。
現状 乾電池で使用しております。
電源が時々入らなくなり、ラジオの裏側を受けて軽くトントンと叩くと電源が入る状態です。
あと、たまにダイヤルライトを点灯させると、電源が切れる場合が有ります。
まず通電してみたのですが、正常です、問題ありません。
扱いに困り、しつこくたたいてみると電源が切れます。
現象がやっと再現したので修理です。
このようなメモがないと故障は見落としがちです、メモ付でよかったです。

再現すれば 見つけるだけですが、原因は半田割れでした。
この部分はラジオの基本電源となるリップルフイルターのエミッター回路の一部分です。
半田割れで ラジオの受信部分の殆どの回路に通電できなくなっていたわけです。
生きていたのはランプ回路と音声出力回路だけでした。

この種の半田割れは 実際見て判断することは困難で、通電しなくなり、
回路を追いかけて結果的に判るわけで、偶然見つかるわけではありません。
また殆ど回復していることも多く、持ち主の観察眼によるメモが重要です。
場合によっては見落とすこともあります。


上記半田割れの部分は下記パターン面の丸印の部分になります。





ランプのLED化も依頼されていましたので、電球色のLEDを組み込んで終了です。
なおLEDには拡散キャップを被せます。

勿論 調整は別途慎重に行います。


2005年7月1日
2005年7月2日

2006年6月26日

2007年7月31日:1155
2013年4月5日:6,273
2017年7月7日:11,239





ラジオ工房BCL1へ