真空管試験器

真空管試験器 I−177

昭和20年代中頃 ラジオアマチュアーの憧れの的。
当時の日本製真空管試験器は所謂エミッションチェッカーで5極管でも全て2極管接続にして、エミッション試験をするものです。
当時の真空管は戦時中の材料不足から鉄線をリード線に使った物が多く、半田付け不良の製品が多かったのですが、電極は全部プレート一括接続するので、その判定が困難だったようです。
ここでGMが測れる本機の人気が想像できます。
このそっくりさんが三田無線にある。
試験方法は左下のAとBのSWで真空管に合わせた設定をします。
TV−7が7つのSWの設定が必要なのに比べ、操作は楽です。
ただデーターシートに記載の無い真空管の試験は大変。
GM直読と、良 不良の判別の2つのテストが出来る。
軍用として、どんな兵隊さんでも使える工夫か。
右上の9ピンmTソケットとSWは双3極管テスト用に、エーコン管のソケットを外して取り付けた。
この機種は先輩から頂いて、修理して使っていた。
製造時期の関係かデーターシートはSTとGTが大部分で、mT管は少ない。
特に9ピンタイプはソケットも無い、この試験器用にソケットの接続を自由に出来るアダプターが製品(MX−949A)としてある。
下記のデータは昭和55年頃177を利用していた時代(試験器を勉強中の時代です、信用度は??)に自分用に作成したもの。
全てが正しいわけではありません、参考程度にお考えください。

     ソケット  A   B   Fil(V)  L    R    Mut Cond.  
6WC5   D    2   10  6.3   28   17     750      Amp
            1   10  6.3   28   17     750      OSC
6ZDH3A C    2   10  6.3   42    0    1000     (実際は500あれば充分使える) 
            9    3  6.3   0     0               Diode
6ZP1   C    8    5  6.3   61   19     
ここでAとBは電極接続の切替スイッチ。 Lは感度調整、Rはバイアス設定用。
GMを測定する時はLを60の目盛りにあわせること。
普通の設定数値の場合は良 不可の区別に使用する。

MX−949Aは新ラジオ資料館の昭和33年のジャンク屋さんの広告をご覧ください。


I-177の回路図

昔 真空管販売店で、使われていたという「真空管試験用ラジオ」の外観図。
これは器用なラジオ屋さんなら自作できるので、使われたようです。
ただ相当エミ減の球でも動作します、エミッションチェッカーよりはましでしょう。

デリカ 1001型真空管試験器

長年欲しいと思っていたデリカの真空管試験器を寄贈いただきました。
有難うございます、感謝。
この測定器は上記の177と良く似ているのですが、
どこか違うかぜひ確認したかったのです。

定価などは昭和32年 三田無線の広告をご覧ください。


デリカ1001の内部写真。

真空管試験器 TV−7D

真空管試験器としては最もポピュラーなもの、中々の優れもの。
十数年前、アメリカのジャンク屋さんから完動品と要修理品を輸入した。
米軍の放出で手ごろの値段で購入できるのが素晴らしい。
勿論 要修理品も修理してしまった(写真のもの)。
製作時期により、TV−7 TV−7A TV−7B TV−7D等がある、段々改良されている。
特にTV−7は初期バージョンなので、校正が多少不便だが、試験器として使うには全然問題は無い。

詳細はTV−7Dを参照ください。

原理的にはI−177と同じです。
グリッドに5V(BとCレンジ、なおI−177は4.7V)を加え、
プレートには165Vを83で整流した(脈流の)150Vが加わっている。
グリッド電圧は測定レンジで変わり、Dレンジは2.5V、Eレンジは0.5V。
なお6AK5など電圧増幅管を測定する時、TEST(GM)ボタンを長く押すとグリッドが赤熱して、球を駄目にする事がある、テストは短時間で。
ヒィラメントなど全ての電極をロータリーSWで自由に設定できるので、データーシートに載ってない真空管も簡単に試験できる。
7個のSW(H、H、P、G1、G2、G3、K)の設定が必要なので、I−177より手数はかかる。
GMは単なる数字として出てくる、これも使い易さへの配慮か。
米国の真空管屋さんから中古球を買うと数値が書いてある事があり、TVー7で試験した事を示す。
なおこのデーターシートの数値はGMが新品の60%程度が記載されている、但し球により、多少上下あり。
メーター目盛りの最大値は120です。
この数値はBレンジでは3000μモー、Cレンジでは6000μモー、Dレンジでは15000μモーに相当します。
したがってBレンジでは読み取った数値を25倍、Cレンジでは50倍すればμモーに換算できます。
なおこの数値はレンジと併記して意味があるので、GMで表した方が無難かもしれない。
I−177のメーターが1.4mAだったのに、これは200μAです、断線し易いようです、大事に使いましょう。
自分はテスターと同じように、シリコンダイオード2本を利用したメーター保護回路を愛用しています。
なおソケットは消耗品と考えた方がよさそうで、mT用は何度か交換した。
使い方等の注意は修理メモ6を参照ください。

TV−7で出来ることは
1)GMチェックとエミッションチェック
2)電極ショートテスト
3)ガステスト
4)ノイズテスト
5)ラジオ用パイロットランプの点灯試験

真空管試験器 TV−10

現用の真空管試験器 TV−10です。
これは原理的にはTV−7Dと同じですが、ST管や7ピンmT管等はヒーター回路の切替SWの操作は原則として不要です。
またGMが直読出来ます。
I−177とTV−7の良いところをとったような試験器。
多少大きいのが玉に傷。
友人が壊れたTV−10を2台買って、修理を依頼され、修理代替わりにいただいた残り1台を修復、校正して使っているもの。
中央下側のロールチャートが不動なのが、惜しいが。

メーター上の自作小型シャーシは双3極管テスト用のアダプターです(このシャーシ側面のスナップSWの操作で、3極管の2つのユニットの試験が簡単に出来ます。P1 G1とP2 G2をSWで切替)。
双3極管の試験を数多くやる時はSWの切替えが意外と面倒ですが、これを使うと楽です。
TV−10の右側はYHPのブリッジ。
TV−10の左側にぶら下がっている赤いものはmT管のピン矯正器。

先日mT管のソケットが接触不良になったので交換した。
この写真はTV−10の内部です。
右側に83と5Y3GTが見えます。
巻き紙は規格表です、このTV−10はこの巻き紙がうまく動作しません。
7ピンのmT管ソケットはトランスの下になります。


GM測定の回路図(GM測定原理説明図)もご覧ください。
双3極管のテスト用のアダプター

12AX7や6SN7などの双3極管のテスト用のアダプター。
TV−7やTV−10で共用して使える。
側面のスナップスイッチで切り替える。
沢山の双3極管を試験するときは威力を発揮する。

真空管試験器 TV−2

米軍用の真空管試験器、小型の送信管まで試験できる。
1ドル240〜300円の時代にアメリカから個人輸入した。
メーターが6個ついた豪華版。
原理はTV−7とほぼ同じだが、グリッドに加える信号電圧が小さく設計されていて、より正確に測定できる。
また各電極の電圧も可変(TV−7は一定)で、メーターをみながら実際の電圧に設定できる。
(メーターはヒラメント電圧、グリッド電圧、プレート電圧、スクリーン電圧、グリッド信号電圧、GM(100%目盛り)用の6個)
申し分無いようだが、実際の操作は設定項目が多すぎて、手間が大変。
またGMが直読出来ず、正規のGMに比べ、試験球は標準に比べ何%かを指示する仕掛けになっている。
GMを直読するには工夫が必要(換算数値がアメリカの真空管試験器のサイトにある)。
同じ真空管を多数試験するには良いが、多品種の試験をするラジオ修理用にはTV−7が楽だ。
なおこの測定器の最大の弱点は電流値が読めない事。

余談
カタログで見るとこの真空管試験器は非常に魅力的ですが、操作が煩雑です。
実用目的に購入する場合 TV−7を薦めます。
自分も実際は使いきれない、持っているだけで満足する測定器。

国洋製 真空管試験器 VG−4

ユーザー用として最高級の真空管試験器。
銘板が無いので、詳細不明だが、VG−4型の一つらしい。
ユーザー側の受入試験用で、ソケットや部品から見て、恐らく、真空管試験器としては最新で最後の物と思われる。
中の回路は半導体で構成されていて、すぐ立ち上がる。
TV−2は脈流を電極に加えるので、電圧しか読めなかったが、これは完全な直流電源を持っていて、電流まで読み取れる仕掛けになっている。
一般に真空管の試験は電圧より、電流を規定した方が正確に測れると言われており、その意味でも理にかなっている。
使われているメーターは0.5級の高級品。
6BD6の試験中、規格表と同じ条件で試験できるので便利。
ただ設定に時間がかかるので、ラジオの修理用としては取り扱いが煩雑。
本機は以前 奥山様より寄贈頂いたもの、感謝。



国洋製 真空管試験器 (型名不明)

昔 購入してあった国洋の真空管試験器です、一部半導体化されています、コンパクトにまとめられています。
6BM8 1本と低電圧放電管5651が2本使われている、他はトランジスター。
型名は不明で、自衛隊用と思われると書いていたら教えていただきました。
国洋での型名はVG−4型で自衛隊ではJI−177Cとよばれているらしい。
但しVG−4の後の文字は不明、上の試験器の兄弟?。
なお良く似た形の真空管試験器があり、手持ちもあるはずなので捜していますが行方不明です。
(どうも行方不明のほうがJI−177Cらしい)
何故銘板が無いかの理由は破棄した時に銘板を外した可能性が大です。
この種の真空管試験器のユーザーは自衛隊、電電公社 NHK 国鉄 電力会社 警察 国際電電などで、大量の真空管試験器が使われていました。
メーカー型名と納入先型名の2本立ての可能性が大きいです。
したがって官公庁かそれに順ずる部署から破棄されるわけですから、銘板は取り外されるはずです。
ラジオ商で使われたものは三和やデリカや米軍放出品、あるいは自作品が多いでしょう。
この測定器はチャートが無い場合でも真空管規格表(例えばGEの簡易な規格表)があれば、実用的に使える点がTV−7より優れている、
さらにグリッドには適正な電圧しか加わらないので、真空管に無理がかからない、惜しむらくは寸法が大きい事か。


ST管はユニバーサルタイプのソケット。
mT7ピンと9ピン、subMT、オクタル、ロクタルのソケットがついている。
プレート電圧は6種、G2の電圧は連続可変。
TV-7に比べ、相当真面目に試験できる仕掛けです。

なおこの測定器を実用的に使った経験はありませんが、
スイッチ類を正規の値にセットした後、真空管を挿したほうが無難でしょう


唯一残っている銘板、機器銘板は取り外されている。

JI−177Cの操作面

どうも上記写真はJI−177Cでは無いらしい。
左図のようにほんの少し違うようだ。

大きな特徴はPとかG2とかの表示があること。
行方不明のものは恐らくこちらでしょう。

測定原理

詳細は不明ですが、下記はこの機種の一つ前の型番 JI−177Bの測定原理図です。
西尾さん著の電子管測定より、詳細回路図はJI−177Bをご覧ください。
恐らくこの1部分を半導体化したものがJI-177Cと思われるが不明。



横河電機 JI-177B(民生用型名VTV-112)


アンプ修理工房の田中さん提供の画像です。

JI−177Bは防衛庁向けの型名です。
真空管の電極接続はパッチボード(リード線で接続)で行います。
TV−7などに比べ測定方法は理想的だが、操作は多少面倒でしょう。

下記回路図は西尾さん著の電子管測定より。


国洋電機 VG−16 ELECTRIC TUBE TESTER


松木さん提供の写真。

テストチャートに昭和44年11月第4版 250部とあるのでその頃の製品らしい。


下記機種が共通に使える。
VG−16 
VG−14A 
WT−009

WT型番は電電公社納入用と思われる。

三和無測1001型 真空管試験器


昭和25年製の測定器。
雑誌では良く見かけるが、現物ははじめて見た。
立派な木箱に入れられていて、想像以上に測定器らしい作りで吃驚。
下記の回路図は間違いがあるので要注意。


動作試験をしてみたら、AC電圧調整の表示が狂っていた。
他に スナップスイッチ(トグルスイッチ)の不良が3個ほどある。
交換すれば 動作するようになるが、全く同じ形のスイッチは入手できないので、
交換するのは悩ましい。
現在実用的に使えるかと言えば疑問があるので、現状のままとすることにした。




この回路図は現物と少し違うようだ。
PLが2.5Vになっているところを見ると、戦前の製品の回路図かもしれない。





現在判明している違い。
@現物のACライン電圧は1次側から取り出しているが、この測定器では別巻線(約6V)位の部分から取り出している。
APLは5V端子から取り出している。
Bスイッチ3・4で切り替えるカソードとフィラメントの接続部分に誤植がある(赤丸)。

米国 ヒコック製 Hickok 752 真空管試験器


二十数年前 ハムフェアーで購入した物です。
その後TV−7を入手したので、殆ど使用していません。
定電圧放電管の試験も出来た記憶があります。

真空管測定器の例(現物の手持ちなし)



VG4型(電電公社WT−001型)回路図 

日本製の高級タイプの回路図です(電子管測定より)。

上記より少し新しいもの(1960年頃)の真空管試験器(電子応用測定器より)
これらはメーカーの型番以外に納入先(電電公社 NHK 警察 防衛庁など)ごとに別の名称がつけられている事があります。

国洋VG−4F 国洋VG−4G 国洋VG−6D


武田 明さん提供の波H03号gm試験器の写真。
波は電波管理局を意味するのかも?。

ツマミの形状からするとVG4Gか?。
時期的にも一致するので、その可能性は高い。
この機種は本格的に試験が出来るので素晴らしいのだが、
設定が複雑で、ラジオ球の試験をするには勿体無い。
実験室で精密に測定する場合に向いている。


昭和35年11月の文字。

富士測定器 1010 富士測定器 VGM−6 横河電機 VTV−112

ラジオ雑誌などで良く見かけた測定器
ラジオアマチュアーやラジオ商が良く使ったと思われる真空管試験器です。
アマチュアーが購入した測定器はエミッション測定型が多いようです。
この形はメーカー作成の真空管試験表(テストチャート)が無いと使用に不便です。
中古品を購入してもチャートが無いと宝の持ち腐れになる可能性があります。
エミッション(簡易)型はあれば面白いが、実用的には問題があると考えた方が良いでしょう。

型名 外観 備考
三和無線測器
SGM-17
新ラジオ資料館に回路図あり、
画像をクリックしてください。
昭和31年発行の電波技術増刊号より。
三和無線測器
SGM-19
なし
昭和31年発行の電波技術増刊号より。
三和無線測器
SEM-20
新ラジオ資料館に回路図あり、
画像をクリックしてください。
昭和31年発行の電波技術増刊号より。
エミッション測定器。
三和無線測器
SEM-14
新ラジオ資料館に回路図あり、
画像をクリックしてください。
昭和31年発行の電波技術増刊号より。
エミッション測定器で簡易型。


倉島さんのホームページに解説が有ります。
詳細ですから,参考になるでしょう。
(リンクは2010年11月13日追記)
三和産業
無測1001型
真空管試験器
新ラジオ資料館に回路図あり、
画像をクリックしてください。
電波科学増刊号(1949年)より。

エミッション測定器で簡易型。
三和産業
1004ラジオマスター
新ラジオ資料館に回路図あり、
画像をクリックしてください。
電波科学増刊号(1949年)より。
エミッション測定器で簡易型。
国洋  VE3 新ラジオ資料館に回路図あり。
電波科学増刊号(1949年)より。
エミッション測定器で簡易型。

昭和初期の真空管試験器

真空管ラジオの故障修理に便利な試験器の一つとして、セットアナライザー またはセットテスターなどの名称で試験器が売られていました。
昭和15年の無線と実験に掲載された日本電気計器の広告をご覧ください。

昭和8年の無線と実験に真空管試験器の作り方の記事があります。
回路図を掲載してあります、ご覧ください。


真空管試験器の自作記事

その他の話題

真空管試験器四方山話 

経験者(JE1SWO 大内さん)の思い出話を寄稿いただきました。
自分は所詮アマチュアーに過ぎませんが、大内さんは実際の仕事に使った方です、非常に参考になると思います。

NECニュース掲載の真空管試験器(実用的で簡単な試験器)

具体的な作り方は梅田さんの「ラジオ温故知新」にあり、上記からリンクされています。

参考図書
  
ラジオの歴史、
スーパーの原理など
ラジオの基本を
詳細に説明。
ラジオの修理方法を
詳細に説明
書名
お奨めの理由 読み物としても楽しいです。
初心者向き。
復刻版は未確認ですが、
原本は誤植が多かったです。
真空管の歴史が判ります。 ラジオ修理に役立ちます。
戦後生まれの真空管が主。
真空管の歴史がわかります。
お奨めします。
真空管ラジオ愛好者にお奨め。

2006年7月2日より

2003年8月14日 更新  測定器の項目が重くなりましたので、真空管試験器の部分を独立させました。更に昭和初期の試験器のデータ−を追加しました。
2004年1月2日 自衛隊用と思われる国洋の試験器を追加。記載事項の一部修正。
2004年1月19日
2004年3月22日 TV−7Dを別ページとして独立させた。
2004年11月1日 TV−10の回路図を追加。
2005年9月18〜27日 参考回路図などを追加。
2005年10月7〜8日 VG−4G VG−4Fなどの資料追加。
2005年10月18日 真空管試験器四方山話を追加。
2005年11月6日 三和産業 1001 1004型を追加。
2006年9月22日JI−177Cの操作面のイラストを追加。
2006年11月28日amazonのリンクを追加。
2007年8月18日:8340
国洋電機のVG−16と三和産業1001型を追加。
1960
2008年8月19日:15,167 VG4の写真を交換した。
2009年11月16日:22,426 波H03H03号の写真を追加、国洋VE3の回路図へのリンクを追加、その他の一部記載内容追加。
2009年12月11日:22,979 TV-7Dの修理を追加、Hickok 752の写真を追加。
2010年4月25日:25,399 JI-177Bの回路図と画像を追加。
2011年11月20日:34,561 新ラジオ資料館に移転

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