大内(JE1SWO)さんより寄稿いただきました。
昭和30年代から40年代はまだ真空管を使用した機器が多く、私は数百本の真空管を使用したシステムの保守整備を担当していました。
真空管試験器は必需の計測器であり、TV-7,J/I-177,TV-2その他国産品(国洋電気製)や米国製のパンチカード式のもの等を使用しましたが、
TV-7シリーズが一番使いやすく携帯にも便利でした。
自衛隊用に国産化したJ/I-177がありましたが設定用の大型サムホィールSWが使用中に手が触れて動くことがあり注意が必要でした。
TV-7は正確にはTV-7 C/UあるいはD/Uが多かったように記憶しております。
真空管はTube真空管試験器はTube
Testerと呼んでいました。
TV-7は頑丈で国産化したJ/I177よりも故障が少なく、10年以上使用して故障した記憶が有りません。
せいぜいLamp FuseのOpenや酷使によるMT管ソケットの磨耗程度でした。
Tube
Testerの使用の基本はTubeを挿す前に設定をして誤りが無いか確認し、ショートテストを最初にすることです。
これにより指針の振り切れや、Lamp FuseのOpenをかなり防げます。
一時期米軍MIL仕様の計測器を自衛隊用に防衛庁が国産化させましたが、同じSpec.で製造しても、故障が多く弱い印象を受けました。
品質管理や生産技術が当時は米国に較べると低かったのではないかと思います。
中身は先端技術ではなかったのですから。
TV-7はgm直読ですが試験器によってはメーターがGreen Zone、
Red Zoneだけのものもあり境目に指針が振れたときは使用する回路によっては判断に苦しみました。
一般的に単なる増幅回路の場合はテスターの指示を信用しても良いのですが、
パルス回路に使用する場合はOKの値を示していても正常に回路が動かない場合もあり、
そのような回路はスペアのTubeを差し替えて一番状態の良いもの使うことになります。
新品のTubeをテストするとメーカーによりかなりのばらつきがあることが判ります。
指針の振れが大きいことが必ずしも良い球であるとは限りません。
レーダーのIF AmpはIFが30MHzや60MHzで6AK5等の多段IF AmpでしたがS/Nを少しでも良くするためにノイズの少ない中古のGMが低めの球を1段目に使用し、
新品は最後の段に使用するのが良いようで、受信感度の測定をすると明らかに差が出ました。
昭和40年代後半になると米国や日本で真空管の生産をやめたために一時期はヨーロッパのトムソンやフィリップス製の真空管が入荷し、
USA TYPEの真空管名とヨーロッパ名が併記してありました。
真空管から半導体に移る一時期に真空管の不足からFETを使用して真空管と1対1で互換できる物(MT管のソケットが付いている)が米国で作られたようですが実物を見たことありません。
注意事項
低電圧放電管のOA2 OA3 OB2等は放電を安定させるために、内部のガスに放射性同位元素(コバルト60等)を入れてあります。破損させなければ問題ありませんが、ガスや内部の物質を吸い込まないよう注意が必要です。本来は放射性廃棄物として廃棄すべきものです。
この稿は真空管試験器を実際の業務に使った経験のある大内さんに書いていただきました。
参考にしてください(内尾)。
2005年10月18日
2006年7月2日より