真空管ラジオの修理 ゼニス ラジオの修理 (H−615)

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奇麗なゼニスのラジオが修理にやってきました。
依頼主が手入れしたそうで、素晴らしいです。
なお残念ながら型名が判りません、シャーシ型番から推定しH−615らしいです。








アメリカで修理されたらしく、ケミコンが外部に取り付けられています。

12BA6 12BE6 12BA6(12BD6) 12AV6 35L6ーGT 35W4です。


修理前のシャーシ内部です。

ケミコンテスターで試験して、漏洩電流は1mA以下、出力管のG1の電圧も0だったので、OKとして通電してみました。
しかし無音です、仕方なく真空管をTV−10で測定してみました。
35W4のエミ減でした、他の真空管は問題ありません。
交換して通電するとブーンと言う物凄いハムです。
これはケミコンの容量不足と判明しました。
この様にケミコンテスターでは漏洩電流の測定は出来ますが、容量の測定は不能です。
通電しても大丈夫と言う目安に過ぎません。

外部のケミコンを取り外し、オリジナルのケミコンに47μFを半田付けしました。

これでハムは消え、受信は出来るようになりましたが、問題が残りました。

@ガリガリ音がでる。
AAVCが効かない感じがする、これはよほど注意しないと区別できませんが。
まずガリガリ音の退治です。
最初に疑ったのはオリジナルのケミコン(ブロック型)です。
このケミコンは取り外すと外観に影響しますのでそのままとし、ラグ端子を別につけてここにケミコンを取り付けました。
47 100μFとしました(オリジナルは50 80)。

この写真は下のものと同じです、修理完了時のもの。
ケミコンの部分のみ参考にご覧ください。
ケミコンの交換は非常に大変でした。
率直に言って、1台5球スーパーの簡単な修理が出来る位の時間がかかりました。
何しろからげ配線で、ケミコンの端子が中継端子を兼ねていますから、本当に泣きました。
この際チューブラコンデンサーの脚が取れるなど副作用が頻発しました。

これで解決化と思ったのですが、違いました。
オシロスコープを持ち出したり、散々苦労の末検波段のIFTが怪しいと見当をつけました。

この取りはずしにも苦労しました、最初は半田の吸い取り線で挑戦しましたが無理でした。
仕方なくニッパーで切る事にしました。



IFTのケースを外したところ。
配線を切った残骸が残っています。

同調コンデンサーが見当たりません。


さらに分解して見ると非常に巧妙な仕掛けになっています。

IFTの端子の出し方が普通のものと違うとは思ったのですが、
端子部分がマイカコンデンサーを挟む電極の役割をしています。
大量生産品としてはよく考えられています。


端子の電極引き出し部分です。
黄色の矢印の部分にマイカコンデンサーを挟む仕掛けです。


ドーナツ型のマイカに2個のコンデンサーが蒸着されています。
壊さないと取りさせませんので、破壊して取り除きました。


別にコンデンサーを付加して再組み立て。

IFTの修理を参考にしてください。
これで完了と組み込みました。
正常に受信できます、でもなんとなく変です。
音量を大きくすると音が歪みますし、放送局毎に音量が違いすぎます。
所謂 AVCが効かない状態です。

この様なときにはAVC用のコンデンサー0.05μFがリークしている事が多いです。
早速外してみましたが、結果的には大丈夫でした。
しかしコンデンサーの反対側の脚が取れてしまい、結果的に交換するはめになりました。
からげ配線のラジオの修理は嫌らしいです。

さらに調べてゆくと、初段のIFT部分のAVC電圧が0Vです、検波直後ではかろうじて−電圧が出ています。

どうも検波段のIFTも怪しいと言う事で、取り外しました。
テスターで絶縁を図ると200MΩでした。
やはり こちらもリークがありました、でもガリガリ雑音が発生するまでにはなっていません。


結局 IFTは2個とも修理しました。
さすがに2個目の分解修理は慣れもあり簡単でした。

取り外したマイカ板。
密封されていないので、不良になりやすいのでしょう。


これで終了と思ったのですが、AVCは0Vのままです、別に不良箇所があります。

さらに調べてゆくと真空管12BA6の不良が判りました、1番ピンと6番ピンの間にリークがあり、測定してみると10MΩです。
真空管試験器では合格です、絶縁不良の試験も当然出来ますが、ここまで大きな抵抗値では測定不能です。

しかしこの様な不良は初めての経験です。
外から中を見ましたが、変わった様子はありません、原因は不明です。




三和のEM−10テスターで絶縁試験。
オペアンプつきで1000MΩまで測定できます。

AVC回路の不具合は原因が2つありました。
ただこれだけの故障で、AVCが+にならなかったのは理由があります。
アメリカ製ラジオの特徴として、AVC回路が12AV6の遊んでいる方の2極管のプレートを中継端子として使っています。
この様にすると、プレートが+になると電流が流れ、結果的に0Vで留まる事になります。

真空管を交換して、正常動作、調整をして修理完了。

これで返送しました。
ところが到着後電源を入れてもパイロットランプが一瞬ついて消えるとのこと。

このラジオのPLホルダーが壊れたらしく、別のものが取り付けられていますので、ランプの「赤い窓」とPLの中心が必ずしも一致しません。
暗い状態ではキャビネットの外からは滅灯しているように見えます。
B電源回路の不良の場合、この様な現象が起きる事があります。
B回路のケミコンを交換したので、半田付けが外れたのではと疑いました。
嫌らしいので、再度送りなおしていただきました。

現物が到着して通電してみると、確かに一瞬PLが点灯して、直ぐ滅灯します。
B電源回路に異常はありませんでした、予想は外れでした。

結果的には12BE6の不良でした。
この様な不良はST管なら良くある事ですが、mT管では非常に珍しいです。
35W4のエミ減は常識的不良ですが、12BA6の電極間リークと言い、この12BE6のヒーター半断線の2つは非常に珍しい故障です。
それもアメリカ製のmT管で起こるとは、2つ続けておきる確率は宝くじに当る確率より低いのでは??。

梱包にはクッション材が充分に使われているので、輸送中の振動で、不良になった可能性は低いと思います。

このラジオは普通の5球スーパーの10倍くらいの工数がかかりました。
RFつきのスーパーではありましたが、この様な経験は初めてです。
費用は2倍程度いただきましたが、いやはや・・・・泣き!。



2005年7月22日
2005年7月27日

2005年8月16日移転

2006年6月24日移転

修理のノウハウは「真空管ラジオ・アンプ作りに挑戦!」をご覧ください。




ラジオ工房修理メモ

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