真空管ラジオの修理 ゼネラル RF付スーパー 7S−2 



ゼネラルの高級ラジオが修理にやってきました。
RF増幅 マジックアイ付、の当時としては最高級品でしょう。

到着時の内部写真。
中は綺麗です、掃除をしたのでしょう。

早速修理を始めました。
真空管は6D6 6W−C5 6D6 6Z−DH3A 42 12Fが挿して有りましたが、整流管のオリジナルは80です。
それとRF用の6D6はグリットキャップが取れていました。
代わりのキャップをつけようとしたら、割れ目から空気が入ってガラスの一部が白くなっているので、諦めました。
ペーパーコンデンサー類は全て交換しました。
6D6と80は手持ちがありますので、TV−10で試験してみると6D6は大丈夫でしたが、80はエミ減でした。
これを機会に代用真空管(試験用の)を作ることにしました。
最初はシリコンダイオードだけで作りましたが、出力電圧が高過ぎるので470Ωの抵抗をそれぞれダイオードに直列に入れました。
RF増幅つきのスーパーに使用して、ほぼ80と同じ出力電圧が得られました。

試作じのデーターは下記のとおりです。
ダイオードのみ 310V(出力電圧)
ダイオード+R  250V
80         260V

手持ちの関係で470Ω 2Wの抵抗をそれぞれのダイオードに直列に入れました。


取り外した真空管の本体部分(右)とベース。



抵抗が発熱しますので注意が必要です。

真空管を入れて動作させてみると、受信はしますが、音量の調整が出来ません。
VRの不良です。
手持ちのものと交換しようとしたのですが???。

スイッチの配線を見るとなんとなく変です、しかし交換された形跡はありません。
丹念に調べると、特殊なスイッチがついていることが判りました。
端子が3個出ていますので、通常の切替式と思ったのですが、
2個の独立した ON OFFのスイッチを1個にした形式のものです。

下記配線図を見ると納得できます。

依頼主と相談して、PU端子への切替は省略することにしました。
したがってVRはスイッチ無しの500KΩ A型を取り付けました。

回路図は真空管ラジオ回路図集を参照ください。


ケミコンは試験した結果、漏洩電流は少なく、このまま使えますが、念のため80の出力側のケミコンC20を新品の400V 18μFにに交換しました。
取り外したオリジナルの20μFはC19の位置に並列に入れました。
したがって、C20 18μF C19は40μFに計算上はなります。
ケミコンが不良になった場合の被害はC20の方が大きいので、こちらを新品に変更したわけです。




これで無事修理は終わったのですが、ダイアルの動きがぎこちないです。

ダイアルの糸のかけ方に問題がありました。
昔 修理した時、糸かけの方向を間違えたようです。




ダイアルの途中まで動かすと、糸が絡むので、停止してしまいます。



修正したダイアルの糸かけ。

一見同じに見えますが、こちらは上からの糸が奥で、
水平の糸が手前から出ているのが違います。
(修理前は上からの糸は手前から)


この様になんら問題ないような糸かけでも、全体のダイアルの構造で、途中で引っかかります。


調整

まずIFTの調整です。
アンテナ端子に250PFのコンデンサー経由でSSGの出力をつなぎます。
勿論 SSGのアース端子はラジオのアース端子(シャーシ)に接続します。

このラジオはRF増幅がついていますので、SSGのIF信号出力(455KHz)は普通の5球スーパーより多少大きめに入れる必要があります。
一見矛盾しているようですが、3連バリコンを使った同調回路のため、受信帯域外のIF信号を大きく減衰させるためです。
この時ダイアルは周波数の低い方に合わせたほうが、減衰が少ないです。

どのIFTのネジを最初に調整するかはこだわる必要はありませんが、455の信号は最初は大きくても、最後は出来るだけ絞って(弱くして)仕上げをしてください。
これはAVCの働きで、同調点が微妙に動く可能性があるからです。
弱い信号を受信した時 最高感度になるようにしておいたほうが良いでしょう。
マジックアイがついていますので、目が閉じる方向で調整すれば簡単にピーク(同調点)が確認できます。

目盛りあわせ


キャビネットのガラス板に周波数目盛りが書き込まれています。
これを白紙に写します、ツマミの位置に穴を開けておくと位置決めが便利です。。
左端  600(or700) 1000 1400  右端と目印をつけます。

印をつけた紙を写真のように貼り付けます。

これで準備が出来たので、目盛り合わせをします。
指針は左右両端まで円滑に動くか、偏りは無いか確認します。

600KHzをSSGから入れ、600KHzの目盛りで受信できるよう、発振コイルのコアを調整します。
次に1400KHzを発振させ、1400KHzの位置で受信できるようバリコン付属のトリマを調整します。
次にもう一度600KHzの位置で大丈夫か確認してください。
相互に多少影響しあいますので、どちらでも狂いが無いよう調整します。
なおSSGが無い場合、NHK1(594KHz)とJORF(1422KHz)を利用すると良いでしょう。
右端の光っているものは試験用のマジックアイ

次にトラッキング調整です。
まず600KHzの信号をいれ、RFコイル(IFTと同じ形のケース入り)を調整し、最高感度になるよう調整します。
アンテナコイルはコイルの中に調整棒を入れて、どちらを入れてもマジックアイの目が開くか確認します。
今回は6D6は依頼主が手持ちのものを使うと言うことで、アンテナコイルの厳密な調整はしませんでした。
ほぼ大丈夫と思われる程度の確認はしました。
本格的にやろうとすると空芯なので意外と大変です。


アンテナコイルの調整棒を入れたところ。
真鍮 とコアのどちらを入れても感度が下がる(マジックアイが開く)よう、調整する。
コアを入れたとき感度が良くなれば→巻数を増加。
真鍮を入れたとき感度が良くなれば→巻数を減少。
(実際は大変です)

次に周波数の高い方、1400KHzはバリコン付属のトリマを調整して、マジックアイが最も閉じるようにします。
これはアンテナ回路(6D6と6W−C5の間) RF回路(6W−C5と6D6の間)のトリマを最高感度になるよう調整します。
ここまで終われば、調整したネジ類が緩まぬよう、ラッカーなどで固定します。
(緩めどめです、簡単に取り除けるのが良い)


仕上げ

完成したのでキャビネットに入れようとしました。
ところが写真で判るように電源トランスと出力トランスが接触しそうです。
メーカー品でこの様な設計はまず考えられません、昔修理した時間違って取り付けられたようです。





正常と思われる方向に変更しました。
製造後半世紀以上経過していますので、古いラジオは元の姿を想像しながら作業する必要が有ります。



ダイアル正面の写真です。
PLが3個使われていて、ダイアル指針用にそのうちの1個が利用されています。
指針全体がほのかに光りますから、綺麗です。

小野さんの修理体験記もご覧ください。

その2(2011年8月11日)

ゼネラルの7球スーパーの修理です。
当時の最高級機種ですね、作りも素晴らしいです。
ナショナルや東芝のラジオを一流品とすると ゼネラルは超一流品といえると思われます。





本来 ゼネラルのダイアルはあずき色のはずですが、何故か菓子屋の包装紙が貼られています。
福岡のお菓子屋さんの名前があるので、以前の持ち主がやったのでしょう。



新宿の伊東屋に行ったのですが、あずき色の紙が有りません。
緑色で我慢していただくことにしました。



修理前のシャーシ内部です。
PU切り替えスイッチはVRの付属のものを使いますが、
2回路同時ONになる仕掛けのもので、現在では入手できません。
分解して、接触部分を清掃するなどして、何とか使えるようにしました。


修理後のシャーシ内部。
コンデンサー類はケミコンを含めほとんど交換しました。
両波整流で B電圧が高いので、400V 15μFと400V100μFのケミコンを使った。

IFの調整をしてトラッツキンギ調整も済ませた。
非常に高感度です、さすが高周波増幅付といえるでしょう。

取り外した 部品、マジックアイも交換した。




修理完了後の7S−2 なかなか高感度です。


背面から見たところ。



 ラジオの修理を自分でやる方は このホームページの他真空管ラジオ・アンプ作りに挑戦!、や真空管式スーパーラジオ徹底ガイドも参考にしてください。
不明な点はラジオ工房掲示板に実名で投稿ください、修理ノウハウの提供は無償です。
初歩的なことでも結構です、ただし他人が解るように書いてください(神様や占い師にするような経緯を省略した質問は返事不能です)。

当方に依頼される方はラジオ修理工房をご覧ください、こちらは有償です。
 

2004年11月11日
2004年11月12日

2005年8月16日移転

2006年6月24日移転

2011年8月11日:2,327 その2を追加。

修理のノウハウは「真空管ラジオ・アンプ作りに挑戦!」をご覧ください。




ラジオ工房修理メモ

radiokobo-all