真空管ラジオの修理 テレビアン 4ペン M−48型 受信機 

昭和11年製の4ペン受信機の修理です。
オリジナルの真空管は24B 24B 47B 12Bの4球です。
58 57は当時売り出されていたのですが、あえて少し古い形の真空管を選んだようです。
ラジオ雑誌の解説記事によるとケミコンを採用したと記載があります、ただ痕跡がありませんし、ペーパーコンデンサーが残っていますので、
このラジオそのものはペーパーコンデンサーを採用されていたのかもしれません。


錆びは酷いですが、この程度であれば良い方でしょう。
バリコンが腐食しています、これ以上進行すると困りますが、
何とか使えそうです。


シャーシの内部。
200Hのチョークコイルはオリジナルが残っているが、断線。
電源平滑用のチョークも断線(シャーシ上に配置)。
47Bの負荷でスピーカー結合用の特殊トランス(単巻トランス)は昔の修理の段階で取り去られている。
これはシャーシ内部左隅に取り付けられていた痕跡(取り付け穴)がある。
現在はスピーカーは直結。


回路の解説などは真空管ラジオ回路図集をご覧ください。


あまり埃が酷いので、清掃の為コイルカバーを取り外してみたら、
驚いた事にコイルの1次側が黒こげ状態。

これは正直 大変な事になりました。

絹巻線を解いたところ。
ベークのボビンが黒こげで炭化しており今にも崩れ落ちそう。
これは悲劇的になってきました。
バリコンとの連動がありますので、今売られているコイルに交換するわけにはゆきません。
手巻きで修理することにしました。

炭化した部分を削って表面にセメダインスーパー(エポキシ接着剤)を塗りました。
凹凸が出来ますが、仕方ありません。
1晩置いて翌日もとの位置に同じように巻線をしました。

完成したコイルは下の写真をご覧ください。



このコイルのリードの出し方は
巻線の上から2次側のE(アース)、G(グリット回路)、 A1 A2 A3 E(アース)の順になっている。
戦後の高1コイルは上から 2次側G E、 1次側のE AL AS(短いアンテナ)の順で作られている。 

修復したアンテナコイルの1次側とコイル用シールドケース。
シールドケースの内部は燻されたようになっている。
上の綺麗な方は検波コイル用のシールドケース。

残念ながら完成と思って通電したのですが、いま一つ感度が悪いです。
組み立てる前にQを測定してみたら低いので、嫌らしいとは思ったのですが、残念。

当然アンテナをつなぐと快適に受信できますが、A1 A2 A3のアンテナ端子に順次アンテナを接続すると、
普通は音が順次小さくなるはずですが、様子が変です、特にA2の時におかしいです、これでは気分が悪いです。
それに感度が悪いようです。
検波コイルに直接アンテナを接続してもほぼ同じように受信できますのでRF増幅部分が殆ど増幅していない事になります。
半日かかって巻いたコイルですが、再度やり直しです。


1次巻線の部分を解いてしまった(写真 左の部分)。
白濁している部分はエポキシ接着剤で炭化した部分を補強したもの。
この部分に巻線をしたが駄目だった。


方針を変更する事にしました。
右側の直径の小さなボビンを準備し、これに1次線(アンテナ側)を巻き、途中でタップを2個出しました。
これでA3(AL 長い空中線) A2  A1(AS 短い) それにE(アース)を準備した事になります。
全体(A1−E間)のインダクタンスは20μH強あった。


上記を組み立てたところ。
内部に見えるのが今回新しく準備したコイル。
なおオリジナルでは1次側はコイルの下に巻かれていた。
同じ理屈で言えば下側に取り付けるのが良いのだが、下記理由でこの様にした。
普通アンテナコイルは巻線の上から順に@2次側のG A2次側のE B1次側のE C1次側のAL D1次側のASとなっている。
オリジナルのコイルは@2次側のE A2次側のG B1次側のA1(AS) C1次側のA2(AM) D1次側のA3(AL) E1次側のEとなっていた。
これはシールドケースに入れた場合にこの様な方法がよかったのか、時代により作り方が異なるのかは不明です。

そんなわけで現代風にコイルの巻線方法は変更しました。

同調コイル(2次側)は裸の状態で280μHありました。
上にシールドケースを被せて測定すると210μH(簡易測定です)でした、随分数値が変わります。
75%にインダクタンスが減少しました。
市販のコイルはシールドケースに入れて使う事は考えられていません。
逆に言うと代わりに使用する場合、受信周波数が違ってくる事になります。
330PFのバリコン用コイルを使った方が多少好結果が得られそうです。

シールドケースに入れられているので、簡単に実験が出来ません、本当はもう少し試行錯誤をして、最適な巻線を工夫すべきです。
適当なところで妥協することにしました。

VRの交換
戦前のVRは修理はまず難しいので、交換します。
ツマミが差し込み式ですから、オリジナルの部分を利用する必要があります。
写真のように部品を準備して作成しました。
ただ残念ながら軸が短く、パイプ部分もこれ以上短くできません、ツマミを挿した時に多少前にはみ出す事です(全部押し込めない)。

肉厚0.5mmのパイプを使いました。
ナットがパイプの外形より大きいので、組み立てが非常に便利です。


試験動作中のM−48。
47Bは壊すと大変なので33改造の47B代用品を利用しています。
代用真空管の作り方もご覧ください。

左下のトランスは電源用のチョークコイルです。
これは断線していますが、取り外すと外観が変わりますので、取り外さずそのままにしてあります。


修理完了時のシャーシ内部。

配線材料は出来るだけオリジナルの電線を使いました。
ただ製造後70年近く経過しているので、半田が奇麗に乗らず、苦労しました。
古いオリジナルの配線材料を使うのは止めた方が無難かもしれません。
相当注意はしましたが、芋半田状態になり、故障の原因になりかねません。
この部分はオリジナルの部品を残すか残さないかの悩ましい部分です。

マグネチックスピーカーのコイルが断線していたので、巻き換えました。
細い線(0.1mm)を巻きますので、汚れは禁物です、手袋をして取り扱います。
手の汚れが付着するとこの部分から錆びて断線すると言われています。
実際確認したわけでは有りませんが、注意した方がよさそうです。



動作中のテレビアンM−48。
このラジオは昭和11年に製造された物です。
「ラヂオの日本」昭和11年4月号に回路図が有ります。
無線と実験にも解説記事が掲載されていますが、持ち合わせがありません。

正常に動作するようになりました、ACコードも念のため新品の袋うちコードに交換しました。
ただトランスを初め古い製品が多数残っています。
使わない時はコードを抜くなど火災予防に充分注意ください。





今回取り外した部品 電源用チョークは不良で 使っていないが、ラジオに取り付けたままです(オリジナルの外観を保つ為)。


 ラジオの修理を自分でやる方は このホームページの他真空管ラジオ・アンプ作りに挑戦!、や真空管式スーパーラジオ徹底ガイドも参考にしてください。
不明な点はラジオ工房掲示板に実名で投稿ください、修理ノウハウの提供は無償です。
初歩的なことでも結構です、ただし他人が解るように書いてください(神様や占い師にするような経緯を省略した質問は返事不能です)。

当方に依頼される方はラジオ修理工房をご覧ください、こちらは有償です。
 


2005年5月7日
2005年5月12日
2005年5月15日

2005年8月16日移転

2006年6月24日移転

トランスなど主要部品は製造後70年近く経過しています。
使用時のみコードをコンセントに挿すなど火災予防に 充分ご注意ください。
安全性の保証は出来ません。

修理のノウハウは「真空管ラジオ・アンプ作りに挑戦!」をご覧ください。




ラジオ工房修理メモ

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