真空管ラジオの修理 ヘルメス420B型 並四受信機の修理体験記

並四受信機が修理にやってきました。
本物の並四受信機(第1世代の並四)の修理は久しぶりです。
最近まで小さな音ながら動作していたとのことでしたが、開けて見ると意外や故障箇所が多く驚きました。
@スピーカー断線
Aチョーク断線。
B1:3トランス断線。
C真空管の26ボケ。
D電源のコンデンサー不良。
Eペーパーコンデンサー不良。
Fその他

まずコンデンサーのリークを測定してみました。
B電源回路に250Vを加えると数mA程度の電流が流れます。
平滑用のペーパーコンデンサーは製作当時のオリジナルですから、この程度リークであれば非常に優秀と言う事でしょう。
持ち主が最近まで、小さな音が出ていたとは肯ける内容です。
でも今後の事を考えると交換しておいたほうが無難です、それに4.5μFではハムが出ます。
(オリジナルの回路はチョークとハム打消し回路で対応してありました)
更に結合コンデンサーの調査です、26Bのグリットに電圧が出ます、これはコンデンサーの絶縁不良です。
コンデンサーも全品交換する事にしました。
真空管を試験してみると12Aと12Fは戦後交換したらしく外観も綺麗で、動作もOK。
56は真っ黒になっていたので心配したのですが、GMは大丈夫でした。
26Bは戦前(恐らくオリジナル)のものが付いていましたが、さすがにエミ減が激しく新品時の数分の1程度でした。
(TV−10で試験すると破棄すべき数値の更に半分以下)


シャーシ内部。

回路図はありません、部品の配置から元の配線を推定するしかありません。
ペーパーコンデンサーなど不良部品を取りはずと
元の回路が推定できるようになりました。 

  
非常に珍しい回路です。
詳細は写真かここをクリックください。




中央のトランスは1:3の低周波トランス。
電源トランスの下は電源用チョーク。
B電源平滑用のチョークコイルは断線していました。
これは数十年前に断線したらしく、代わりに3KΩの抵抗が付加されていました。
取り外すと上側が寂しくなるので、あえて取り外しはしませんでした。
回路的には接続されていません。

1:3の低周波トランスも断線です、抵抗結合にする方法もありますが、せっかくの本格的な並四ですから、トランス結合で修復します。
手持ちがありませんので、秋葉原に買出しに行ってきました。
トランスは内田ラジオで1,500円でした。
電源コードも並四に似合うように昔のスタイルの袋うちコードを購入してきました。
プラグは半世紀前のラジオから移植しました。
安全性から見るとプラグつきのビニールコードを使ったほうが良いのですが、
依頼主の希望なので、使う時は十分注意してください。


修理完了したシャーシ内部。
バリコンの下のペーパーコンデンサーとその右側の抵抗は接続されていません。
これはハム打ち消し回路と思われる部分の残骸です。
あえて取り外しはしませんでした。

オリジナルのコンデンサーの個々の値は不明ですが、
2+1+1と思われます、これを10+10+10にしました。
平滑用の抵抗は少しでもB電圧を高くしたいので2KΩに変更しました。
26Bと12Aのバイパスコンデンサーは4.7μFを使いました。
ここはオリジナルの回路でも良いのですが、
少しでも大きな音がでるように変更しました。
これで相当ボケた26Bでも満足する音量がえられました。


26Bがエミ減です、代わりの真空管で試験してみました。

代用真空管も結構使えました。

更に良品のアメリカ製26で試験してみました。
ボケた26Bより多少大きな音がしますが、
26Bでも実用に使えそうなので、このまま利用頂く事にしました。
バイパスコンデンサーをいれた効果が多少あるようです。



試験用に使った代用真空管ハムを心配したのですが、まず大丈夫でした。
不良真空管のベースを利用し、サブミニ管をのせたものです。



スピーカーは残念ながら断線していました。
コイルを冶具を使って外しているところ。
修理方法はマグネチックスピーカーの修理をご覧ください。。



動作試験中の並四受信機。
AL AM ALの端子がでています。
これはアンテナ線の記号で、長いアンテナを使う時はALに、
短い時はASにつなぎます。
感度と選択度の兼ね合いから、どれか一つを選んで接続します。
短い線だとasが良いでしょう。
再生を効かせないと、感度も悪いし、選択度も悪いです。
受信するのにコツが必要です。




電源ケーブルは袋うちコードを秋葉原で購入してきました。
プラグも昔のものを探し出してつけました。
安全性からはビニールコードにしたかったのですが、依頼主の希望でこうなりました。
ただキャビネット内部はビニール線です。


写真は裏蓋に貼付されていたシール。
内部には薄く?20Bとあるので、総合すると420B型らしい。
球の構成から昭和12年中頃から昭和14年頃にかけて作られたと思われる。
原型(Bの付かない420型)は整流管が12Bの可能性あり。

 ラジオの修理を自分でやる方は このホームページの他真空管ラジオ・アンプ作りに挑戦!、や真空管式スーパーラジオ徹底ガイドも参考にしてください。
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当方に依頼される方はラジオ修理工房をご覧ください、こちらは有償です。
 


2003年10月1日
2003年10月3日
2003年12月17日 代用真空管の写真を追加。

2005年8月16日移転

2006年6月24日移転

修理のノウハウは「真空管ラジオ・アンプ作りに挑戦!」をご覧ください。




ラジオ工房修理メモ


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