真空管ラジオの修理 ナショナル AH-610

ナショナルのHI FIスーパーです、スピーカーは2個付いています。
6BE6 6BA6 6AV6 6AQ5 6X4 6Z−E1。
ツマミも無く、スピーカーコードも切断された状態で修理にやってきました、修理を途中で諦めた感じの状態です。

このラジオはオークションで購入したそうです、説明文は下記。。

電源は入りますが、スピーカーとボリューム間の線が断線している為、
スピーカー出力しません。その為、受信も未チェックです。
ジャンク品とさせて頂きます。修理できる方入札お願いします。
外観は使用感が有りキズ・汚れが有ります。
付属品は付きません。

出品者はプロのリサイクル業者の方だそうです。
説明文に嘘はありません、状況を正直に書いてあるだけですが、これだけだと信じて購入するととんでもない事になります。
不自然な部分が切断されている時は、他も壊されていると想像した方が無難です
どこが壊されているかは修理して見ないと分からない事が多いです。

現物を見ると
@バリコンの取り付けがガタガタ。
A ダイアルプーリーが壊れかかっている、軸を止める部分が弱いので修理する時は注意すること。
Bパイロットランプがつかない。
CACコードのゴムブッシュがなくなっている。
DVRのガリ
E結合コンデンサーのリーク。
Fバイパスコンデンサーのショート。
Gダイアル指針のネジ部分紛失。
Hマジックアイ 劣化。
Iスピーカーの断線 2個とも。


この種の大きなシャーシのラジオを修理するときは
バリコンの軸についている大きなプーリーを壊さないように注意が必要です。
このラジオは軸とプーリーを固定する部分ががたがたになっていました。
シャーシを裏返すと、丁度この部分が支えになるので、無理な力が加わります。




この部分ががたがたになっていました。
何とか修理できて良かったですが、もう少し破損が酷いと修理できません。



VRは特殊な為、分解して対応しました、ガリが再現する可能性はあります。


ACコードの穴もゴムが取れていました、安全の為この部分はゴムを取り付けました。


ナショナルのこのタイプのIFTは調整時、コイルを巻いた軸(ボビン)が回転しやすいです。
注意しないと、コアを廻したつもりがボビンごと回って、結果的にコイルが断線します。
悲劇を何度も経験しています、充分注意してください。



シャーシ内部 ブロックケミコンをテストしました、リークは1mA以下でした、
念のため6X4のカソードに新品の400V15μFを入れ、
この部分のケミコンは次段のケミコンと並列につないだ。
こうしておくと万一の場合でも次段のケミコンとの間に200Ωの抵抗があるので、
真空管がやられる前に抵抗が断線するので、多少安全でしょう。

出力管の結合コンデンサーはリークが有ったので交換した。
写真左の青色のセラミックコンデンサーは出力管のバイパスコンデンサーです、
ここに入れたあったペーパーコンデンサーがショート状態だった。
話としては良く聞くが経験したのは非常に珍しい。

ダイアルの指針を固定するネジの部分が無くなっていました。
この部分の工作は意外と面倒です。
旧JISネジを短く切断して使う必要があります、新JIS(ISO)ネジだと簡単なのですが。

この種大型ラジオの修理をする場合、バリコンのプーリー(横の大きなドラム)を傷めないように注意してください。
出来るだけ復元しましたが、完全に元通りではありません。
ゆがみの為 ダイアルの糸が外れやすいです。


ツマミはつけてありません。


旧JISネジを短く切断して固定金具を作成。








さて完成とキャビネットに入れたのですが、問題発生、音が出ません。
調べてみるとスピーカー2個ともボイスコイルが断線しています。
稀に断線はありますが、2個とも同時にと言うことは初めてです。
どうも壊れたと言うより、壊したと言った方が正解かもしれません。

試験用のスピーカーでテストしたので、気がつかなかった、
それにしても2個とも断線とは・・。

キャビネットに組み込んで動かしてみると、ツマミの回転とダイアルの指針の動きが逆です。
表示は正常なのですが、気持ちが悪いので調べたら軸に糸を巻きつける方法が違っていました。
ダイアルプーリーまで壊すぐらいの修理をした人の後始末ですから、ここも注意すべきだったと反省しています。
とにかく無茶苦茶な作業がしてあるので、今回は随分泣かされました。
壊れたものは修理しやすいですが、壊したものは復元が大変です。
購入する時は充分注意しましょう。

ダイアルの糸かけ関係で延べ4時間くらい試行錯誤を繰り返しました、この部分を壊したものは要注意です。
スピーカーそのものは持ち主に時間をかけて捜していただくことにしました。
一時しのぎに手持ちのナショナルのスピーカー(難有り)1個つけて返送することにしました。
取り付け穴の位置は大丈夫なのですが、フレームの大きさが多少大きいので組み込めません。
一時しのぎの対策であり、上部を加工して組み込みました。
(箱を加工する方法もあります)



2006年7月7日
2006年7月8日

その2







例によって PLランプの配線がボロボロ。
ヒューズを跳ばしてしまった。

PLが4個ついている、この配線の交換が一番時間がかかった。


PL配線以外で 交換した部品。
出力トランス。
ペーパーコンデンサー
とチューブラ型ケミコン。


修理完了したシャーシ部分。
トランスは東栄製を使用した、
インピーダンスが多少違うが実用上は問題無かった。

出力トランスをシャーシに組み込むと経験上断線することが多い。



ペーパーコンデンサーは全て交換した。
このラジオはVRも正常で程度は素晴しく良かった。





2007年2月25日:1061
2015年3月20日:5,652 AH−610の調整を追加

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