トリオ R−300 修理体験記 


R-300の修理です、2台預かりました。
1台は正常に動作していたが、DC電源(13.8V)にAC100Vを加えてしまって故障しているもの。
もう1台は動作するもののどこか異常のあるものです。
2台を1台にして、完全なものにして欲しいとの希望です。


動作品は持ち主によれば
(1)S−Unitのメーターの振れの異常
(2)感度低下
(3)雑音レベルが高い
(4)読み取り誤差 (これはある程度しかたないのかも?)
(5)選択度が低下?(故障品が動作していた時より悪いような気がしますが・・・)       

まず動作品を開けてみました。
最初に驚いたのは、電池への接続ケーブルが外れていることです。
これは悪い予感です、内部を開けてさわった可能性大です。
反対側を開けると今度は糸かけが外れています。
これは相当酷いと覚悟を決めました。


中央やや右の糸が外れた部分。
この糸はバンド切替SWの表示に連動している。
目立たないので、持ち主も気づかなかったようです。







やっと元に戻しました。
結構大変でした。
これで通電。
しかし動作がいまいち良くありません。
この機種の修理経験は数台しかないので、これからが大変です。
時間がかかりそうなので、
故障品の方に「基板」を入れ替えて修復することにしました。
(「基板」 電源 電力増幅部分の基板)



故障品はダイオードが破裂。
ビニール線が溶断しています。

不良箇所を修理。


DC12Vのところに、いきなりAC100Vが加わったので、
この基板が故障(破損)していました。
動作品の方から移植しました。
幸いこの基板はソケットに挿されているので移植は簡単でした。
(上の写真の右下 青色のソケットに挿入されている)

これで準備完了、通電すると上手く受信できます。


Fバンドを調整しているところ。
このバンドだけダブルスーパーになっています。
他はシングルスーパー。

トリオはコイルメーカーから出発した会社だけに,
さすがバンド切替Swとコイル群は立派です。
この受信機の中心はコイルだと思います。

安定度は良いのでしょうが、
感度は2200や5900とほぼ同じ程度と思われます。
メイン目盛りは比較的良く合いますが、あくまで当時のレベルであり、
印刷目盛りですから多少の誤差は出ます。
マーカー信号を間違うほどの誤差は当然ありません。

音は決して良い音ではありません。
クーガ115の方が断然良いです。
通信型受信機らしい音と言えましょうか?。


調整終了、よく見るとパネルに少しキズがあります。


持ち主は2台で1台にして欲しいとの希望です。
出来るだけ外観の良いものにしたいと思い、
パネルを外そうとしました。
ツマミを外して、パネルの両側面の2つのネジを取れば、
簡単に外れると思ったのですが、間違いでした。
バンド切替表示の指針とガイドがパネルに取り付けられています。
糸かけを外さないと交換できません。
迂闊に糸かけを外すと校正のやり直しになります。
中止することにしました。


さて電源ケーブルです。
持ち主が間違ってDC端子にAC100Vを入れたのはソケットが間違いやすいからです。
オリジナルのケーブルでなかったのが最大の理由でしょう。
でももう少し親切設計であればと思います。
動作品
オリジナルらしいケーブル ただし芯線が裸になった部分があり、危険。
ビニールテープで補修しました。

不動品
手作りのケーブル。
これは残念ながら使えません。
プラグの芯線の寸法が違うので、接触が極端に悪いです。

さらに少しでも良い方をと思ったのですが、ACの差込口が違うことを発見。
写真上
動作品の差込口

写真下
不動品の差込口

どうも製造時期によって電源ケーブルが違うらしい。
或いはどちらかが改造されているのかもしれない(形跡は無いのだが)。
仕方が無いので、手持ちのケーブルで使えそうなものを提供することにしました。
またDCソケットに間違って挿すと具合が悪いので、ビニールテープで蓋をした。

修理断念したR−300

依頼主から
1.バンド切り替えスイッチ修理(接触が悪いようです、特にFバンドが使い物にならぬ)
2.メインダイヤルの調整(結構周波数ズレがあると思われる)
修理にやってきました(16年12月)。
通電すると確かに接触不良が酷いです、でも操作によっては受信できます。

JOAKなどを受信するとSメーターが振り切れます。
分解しようとするとネジが一部(2本)不足しています、悪い予感です。


この受信機には3種類のネジが使われています。
特に写真右のものが多く、左のものは1本です。
どうも以前分解した時の取り違えたらしく、ねじ山が磨り減っています。
1度や2度の分解では無さそうです。


分解した後、まずやるのはSメーター回路の調整です、このままだと危険で、Sメーターを断線させる可能性があります。
どうも自然にこの様になったとしたら、多少不自然です、他も触られた可能性があります。

内部を調査したのですが、単純な接触不良だけでは無いようです。
この機種の調整箇所は沢山有ります、素人が触った物を 元に戻すのは手間がかかります。
それとFバンドの受信不良の修理も大変なので、依頼主と相談し、修理せずそのまま使っていただくことにしました。
Sメーターの0点調整だけはして有りますので、このまま使っても大丈夫でしょう。
接触不良は残りますが、これでも使えないことはありません。

R−300の調整

目盛りの狂ったR−300の調整です。
再調整すると、目盛りも比較的良く合致するようになります。





内部構造です。
トリオだけに、コイルは立派です。

この機種はノイズが多い感じがしました。
3SK35が3個使用されています。
RF段かコンバーター段のものが怪しいのですが、
今回は交換はしませんでした。
コンバーター回路はソケットが使われているので、別のFETに交換してみたのですが、
効果は目立つほどではありません。
RF段のものが怪しいようです。
交換のためには基板を取り外す必要があり、工数の関係でここまでで終わりとしました。

R−300の調整その3 (2016年7月12日)

受信してみると JOAKが受信して メーターがS9+20dBくらいは振れますが 音がかすれて正常ではありません。
それにダイアル指針の位置が560KHZ付近を指すのです。
不思議と 思ったのですが どうも前の持ち主がバンドスプレッドダイアル0の位置(バリコンのもっとも容量の大きい側)で、
メインダイアルを校正したようだと気が付きました。





上記 ○印の拡大図です。
最初見た時 切断されているとは夢にも思いませんでした。
調整していて 調整できないので 変だと感じて注意深く見たら コンデンサーが切断されていました。



リード線が切断されているので リード線で接続。



おそらく 調整時 バンドスプレッドダイアルの設定を間違えたため(最少容量にしなければいけないのに最大容量をスタートとした) 
メインダイアルの目盛が合わず、同調容量が大きすぎると判断して、トリマにパラに入れられているコンデンサーを切断したと思われます。
バンドスプレッドダイアルは十数PF位なので この固定コンデンサーの容量とほぼ同じです。
このような作業をする人は相当 詳しい人で無いとできないのですが、やはり中途半端な知識での作業は致命傷になります。


電気的知識の無い人が修理したのか?(2018年12月9日)

感度が悪い ランプがちらついたり消えるというR−300の修理です。
分解してみると驚愕、12V ACのランプ用配線に82Ωの抵抗と砲弾型LEDが直接組み込まれています。
これでは100mA以上の電流が流れます、常識では考えられない方法です。
せめて直流かどうか、それとオームの法則くらいは理解して欲しいです。



メーター照明はLEDと電流制限用抵抗のみ(DC電源ならOK)
AC点灯されているのでから 驚きです。




メインダイアルはランプを4個にした。
またACからDCへの変換回路を加えた。

2個直列にし、直列抵抗は330Ωなので 電流は約20mA。
今までのように無駄な電流を流すと LEDがすぐ壊れる。
さらにLEDは逆方向の耐圧が低いので 交流で点灯するのは無謀です。



ランプもすべて交直両用の回路に変更した。
今回はそれぞれの ランプ(基板 2個とメーター1個)に回路をそれぞれに組み込んだが、
共通にして1個にしておいたほうが良かったかも。










照明関係が修復完了したので 調整です。
ただこの機種のマニュアルには調整方法は一切記載されていません。
説明書と 回路図を手がかりに調整します。

なおケースを被せないで調整した時と ケースを閉じた時で目盛りが少し狂います。
マーカーをONにしてみると 相当狂いが目立ちます(1mmくらい 高い方に)。
実用的にもこれでは問題がありすぎます。
多分配線の浮遊容量とケースを被せることで 相互作用が働いているようです。
ケースを被せ 隙間から 再調整します。
これで狂いは無くなりました、比較的全体的に合致しますが、周波数によっては多少誤差が残ります。
これは印刷目盛りですから、我慢せざるを得ません。
(ちなみに三田無線 デリカの製品は 実機に合わせて目盛りは手書きするそうです)

SW帯についてはSSGで感度試験をしました。
ICF−5900やRF−2200とほぼ同じ感度でしたので 調整後良くなったと思います。


反省事項
ランプ基板は埼玉の業者が準備したものを使いました、ランド(銅箔)がすぐ取れるので 
組み立て後 エポキシで 固定しました。

何故か DC入力端子と 乾電池BOXが直結されています(業者の改悪)。
こうすると乾電池で使う時 ダイオード経由となり電圧の減圧を招きますが 、そのままとしました。

2002年12月18日
2002年12月19日
2002年12月20日
2004年12月12日

2006年6月26日

2009年3月17日:943
2016年7月13日:10,016
2018年12月6日:12,498
2018年12月10日:12,602

BCLラジオの修理をご希望の方はラジオ修理工房をご覧ください、メールには住所 氏名をお忘れなく。






ラジオ工房BCL1へ

radiokobo-all