ソニー ICF-6800の修理体験記    

 この修理体験記は下手な文章で故障状況をまとめたものです。
このページは修理方法の教科書ではありません、読んだだけで修理できると誤解しないでください。
修理した台数の積み重ねがノウハウとなります、このページを見て修理出来ないと言われても心外です。
当方はメーカーのサービス機関でもありません、ラジオ大好きおじさんにすぎません。
6800の修理は数十台しましたが、上記理由で詳細は省略します。
さらに最後の仕上げは心を込めて調整しています、この部分を省略するプロも多いです、ご用心。
サービスマニュアルを熟読して挑戦してください。



掲示板の書き込みが縁でソニーICF−6800の修理を引き受けました。
不動品だったり、部品取りにしたりにした残骸的なものなど3台です。
うまく修理できればこのうち1台をお返しする約束です。
100%修理できるわけでは無いので、ある意味で気軽に引き受けました。
実際は大変でしたが、時間をかけて徹底的に研究しました。





カウンターが曲がりなりにも動作するのは2台でした、これを修理する事にしました。
まず1台を分解しました。
電源SWやAFCのSWが完全に抜き取れてています。
ネジや1部の部品も外されていて有りません、どうも部品取りにされたようです。


バンド切替SWの取り付けも不完全でした。
どうもPLL回路の修理に挑戦したようです。
全体的になんとなく変とは思ったのですが、
最後になってえらく苦労しました。


パターンがカットされています、これは修理と言うより製作時の作業のようです。
苦労して造られたのではないでしょか。
この機種の特徴として個別対応的処置がされていることです。
量産品でこのような作業があるのでしょうか?。


そう言えばこの機種はコネクターが半田付けされていると言う信じられない工作がされています。
6800では普通に見かけるので、設計がまずかったのか、理由は不明ですが、
常識では考え難い処理がされています。
恐らく他のメーカーでは許されないでしょう?。

どうもこの基板は状態が良くないし、依頼主の希望もあってもう一台の方を修理することにしました。

分解すると今度はダイアルの糸が切れています。
通常では切れませんので、こちらも分解したようです。
共通して困った事は、PLL用バリコンにCRCらしきものがかけられている事でした。

こちらはPLL部分を分解した形跡はありません。
全てユニットにまで分解し、PLL回路の修理をしました。
一応PLLはロックするようになったのですが、一部のバンドでは安定しているのですが、
受信できない周波数(PLLロックがしない)があります、これでは修理した事にはなりませんので、困ってしまいます。
1週間くらい試行錯誤で修理しましたが、結局諦めました。
中身がいじられていますので、極論すると、水に濡れて膨張したジクソーパズルを組み立てているようなもので、
現状から元の形を想像しながら作業する感じになります。

結局元に戻って、最初の基板の修理に再挑戦です。


結局この修理に2週間ほどかかりました。
延べ時間にして数十時間です。
何とか1台だけ動作するようになりました。

PLLの修理が完了 やれやれという事でユニットを組み立てました。
短波を受信してみると音が出ません。
あれれ と言う事で調べてみると基板に部品の無い部分があります。



TRが抜きとられている事に気がつきました。
最初から気をつけておけばよかったのですが、
「PLLだけ不良」の先入観でここまできてしまった、残念無念。




またユニットの分解です、これが手間がかかるのですが、何とか修理しないとここまでの苦労が水の泡です。
メイン基板とVFO(MW受信部)ユニットを分解、基板の裏側のシールド板を外すと。
なんとパターンがありません。


基板のパターンが削り取られている。
それにしてもどうしてパターンまで剥ぎ取られたのでしょう?。
この部分は普通のTRではなくて、FETが2個使われています。



回路図を参考に、空中配線でパターンを再現。
なんとか正常に受信できるようになりました。


このままでは振動で壊れる可能性があり、エポキシ樹脂で覆いました。
この後シールド板を取り付けて、終了です。


後は電源スイッチやAFCスイッチが抜き取られていますので、
代用品を準備します。
外観から、スカイセンサーのレバースイッチを移植しました。


移植後のスイッチの写真。




ケースの収めて修理完了です。
ただFMは未修理のままです、
根気が続きませんので今回はパスしました。
一応受信はしますが、感度は良くないようです。

修理終わって
疲れましたが、非常に勉強になりました。
ここまで「壊れている+壊してある」6800の修理は初めてです、
でもこう言う機会がないと調べませんので、大変ありがたい経験でした。
但しもう一度やれと言われると勘弁して欲しいですね。
おかげで今後6800の修理依頼があっても多少効率的(安く)にやれそうです。

残念ながら残りに2台は部品取りになってしまった。

ICF−6800の修理その2

この部分ホームページ容量の関係で当初の記載から写真などを省略してあります。

また6800の修理をはじめました、うまく行けばよいのですが、今度も手強そうです。
開けてみるとネジが1本不足ですが、他は大丈夫です。
ただ不思議な事にプリセレクターのコネクターが半田付けされています。
この様なものは初めての経験です。

MWは感度は悪いが、受信はします。
SWはカウンターが乱数表示で、3桁と4桁など極端に変動します。
このような現象は初めてです。
PLLがまったくロックしませんので、
SWの受信テストも不可能です。
(普通 PLLがロックしなくても暴走周波数が一定なので受信テストは可能)

但しこのコネクター無しのものは修理の過程で取り外したもののようだ。
プリントパターンから想像すると 左2つは同じロットの基板らしい。

ここで重大事件発見。
MWは受信できるのですが、SWが受信できません。
プリセレクターを手持ちのものに交換しても同じです。
どうもダブルスーパー部分が壊れているようです。


ダブルスーパーの受信部分、シール板を外したところ。
これは約19MHzのIF部分です。
順次不良箇所を捜して、何とか修理。


再度組み込んで、動作試験。
やれやれです、無事動作。

今回の修理はメーカー修理だけで、
素人修理のように変に弄られていないのが唯一の救いでした。
でもこれだけ彼方此方壊れているのは初めてです。
屋根裏などの高温の場所に長期間放置されたのでしょうか。
全体的に弱っていると言う感じがします。





 

ICF−6800の修理その3(2014年10月6日)


久しぶりに6800の修理をしました。
短波が受信できない現象は よくある6800の持病ですが、表示周波数の信号を入れると受信できます。
いわゆるPLLの故障ですが、この機種はそれに加え 短波がまったく受信できないのです。
この機種のいやらしい所は 分解して 仮配線をしないと動作試験が出来ないことです。

調べるために分解し、仮配線をしたのが下記画像です。

VFOは大きすぎて 組み込むと 取り回しが大変なので 試験用VFOを組み込んであります。
これでやっと動作試験が出来ます。
ただ動作を確認するには シールド板をはずさなければけません。
すごく手間がかかります。

電源を入れると 毎秒 瞬時雑音が出ることを繰り返します。
分解して 調べてみると、PLLのミューティング機能が働いている感じです。

この信号の発生源を調べてゆくと、下の画像丸印の部分付近です。




上記 基板の記号部分を拡大してみると、最終桁がー11になっている。
製造番後は何番から振られたかは不明だが 最初期ロットの可能性が高い。



基板上面 丸印の内部が不具合と思われる箇所



上記シールドを外した内部。



各部の信号をオシロスコープで測定しながら 不良と思われる部品を順次交換してゆきます。
トランジスターなどは組み込んだままでは試験できないので とり外して試験します。
なんとか 不良トランジスターなどの部品を交換して ミューティングの不良現象は解決です。
ここまでに3週間もかかりました。

パターンが密集しているので 半田ブリッジが起きやすく シールド板の組み込みでも泣かされました。




これで大丈夫とVFOを組み込むと受信するのですが なんとなく変です。
実は このVFO発振が弱くなったので局発回路は一度修理したのですが、故障はそれ以外にも有りました。
組み込んでは試験 、組み込んでは試験を繰り返し 合計4回も組み立て分解をしてしまいました。
ダイアルの糸掛けも分解するごとにやり直しで 結果的ですが 随分無駄な作業をしました。
現象は 音が歪むことで、ゲイン調整回路に不具合がありそうです。



ゲインコントロールが出来ない原因は残念ながら判りませんでした。
回路も簡単で 下図のような回路です。
R97を通っじてゲインコントロール用の+電圧が加わる仕掛けです。
ダイオードが正常なら ゲインは落ちるはずなのですが?・・・。

FETとダイオード3個 抵抗 コンデンサーが関係部品です。
個別にダイオードはテスターで測定したのですが、特に悪いとは区別できません。
やむなく 全部品を交換しました、その結果 ゲインコントロールも正常に出来るようになりました。
なんだか不思議な気持ちです。
(D24 25 23 Q24 C97)





分解したところです。

画像右端に見えるダイオードが該当部分。





この状態で PLLの調整などを済ませます。
勿論 何時も壊れるPLLの修理は別途完了済み。

非常に長期間修理がかかりました。
途中 2週間の中断を含め1月半かかりました、実質1月間も修理にかかるとは・・・。

オシロスコープで波形を見ながら 今回は殆どの部分を調べて修理しました。
ここまであちこち壊れているのは 初めてです。




キャビネットに組み込んだところです。
ラジオ日経を受信しています。
さすがにSSGで感度試験をしてもICF−5900より高感度です。


6800Aの修理体験記もごらんください。

2003年6月6日
2003年6月8日
2003年6月9日
2003年6月11日
2003年6月26日
2003年6月29日
2003年6月30日
2003年7月1日
2003年7月2日
2003年7月4日 後日談を追加。
2003年7月9日 
2004年1月3日
2004年6月11日ホームページ容量の制約で一部省略しました。
2004年8月8日

2006年6月26日
2007年4月21日:1662
2007年7月22日:2454

2010年9月23日:3,666 ACコードリンク追加。
2011年11月25日:5,784 内容削除
2014年10月6日:9,803 その3を追加。

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