音量の極端に小さなTR−63です。
ラジオ自体を落下させたらしく、なんとなくギクシャクした感じです。
このTRラジオは日本最初のポケッタブルラジオとして売り出されたものです。
東京通信工業時代の製品です。
昭和32年3月に13,800円で発売されています。
製造番号(3万9XXX)から この物は33年か34年に作られたものと思われます。
このラジオのために開発されたのが、9Vの電池 006Pです。
今でもこの電池は生き残っています。
トランジスターは扁平型で初期のトランジスターの面影を色濃く残しています。
現在の中古市場に出ることは稀で、毎週のように出かけていた骨董市でも1台見かけただけです。
非常に貴重品と思われます。
ケースから取り出して 故障個所を調べているところです。
3個の不良部品(コンデンサーなど)を見つけて交換し 音量は正常になりました。
実はこのラジオ修理はここからが大変でした。
ケースに組み込むまでに ここまでの数倍の時間がかかってしまいました。
修理中
気になっていたいたのですが、VRのツマミが固定されていないのです。
ネジを紛失したと思い込んで、代わりのものを準備して固定しました。
しかし ネジやワッツシャーだけでは固定できません。
やむなくボンドで固定してみたのですが、ケースに入れるとこの部分が邪魔になりVRが正常に回せないのです。
やむなく手持ちのTR−63を分解してみました。
なんと ネジではなくて 接着剤で固定されているではありませんか!。
このTR−63も同じようにボンドで固定しました。
それにしてもこのような固定方法は初めてです。
インチキくさいですが 胸ポケットに入れるよう小さくするために、苦労した結果なのかもしれません。
TRラジオは沢山見てきましたが、ツマミを接着材で固定するのは TR−63だけと思われます。
実は このラジオここからが大変でした。
ケースに何とか収まったので 調整を始めました。
ところが455KHz(±30KHz)の信号を入れても反応しないのです。
どうも納得できずに 594KHzのJOAKを受信し、ICF−2001Dで局発をモニターしてみました。
なんと1120KHz付近で発振しているのです。
逆算するとIFが520KHz以上になっているのです。
ここでSGの発振周波数を500KHz〜に変更してみると やはり525KHz付近でピークが確認できました。
この時代のIFTは同調容量200PFが外つけです。
コンデンサーの容量が変化したとすると、150PFに変わった計算になります。
取りはずして 計測してみると容量は200PFです。
2個取り外して測定してみましたが 同様です、変化していないようです。
ただコンデンサーは半田を外すと(厳密には熱を加えると)、容量が回復することを経験済みなので、
交換したいところですが、このTR−63はオリジナルが貴重なので、
悩んだ末 元のまま組み込むことにしました。
IFTのコアを取り外し 、割れが無いことを確認しました。
ゴミを清掃して 再度丁寧に組み込んで確認すると なんと455KHzで同調するようになりました。
あとは目盛合わせとトラッキング調整ですが、どうも狂いが多く、
目盛を完全に調整すると バーアンテナのインダクタンスが足りなくなります。
普通のものであれば コイルを巻き足せばよいのですが、
オリジナルを尊重する意味から 少し周波数をずらすことで、妥協しました。
修理後の写真で バーアンテナのコイルが中央にあるのは、これ以上インダクタンスを増加出来ないことを意味します。
普通はもう少し端にあるのが常識なのです。
コイルの位置を動かして インダクタンスを調整するためです。
スピーカーが動くと思ったら 落下により固定用の爪が折れているようです。
仕方がないので、ホットボンドで固定しました。
修理できたTR−63
TRー63の修理その2
2012年5月8日
2014年4月18日:1,489
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