真空管ラジオの修理 ナショナル5D−18修理体験記

戦後の珍しいラジオが修理にやって来ました。
6D6(6C6が使われていた) 6C6 76 6ZP1 12Fの変則ラジオです。
戦前にも松下は同じような5D−1(回路図)を販売していて、この後継機と思われる。
外観は非常に綺麗です、当時のものとしてはこの状態は極上と言えるでしょう。
しかし内部は凄い埃でした、でも素人が無闇に修理していなかったのが大いに助かりました。


埃を払って写真を撮りました。
四角いブリキ缶は電解コンデンサーです。

この時代のコンデンサーは先ず使えませんので、
試験も省略しました、ただこれを取り去ると見かけが悪くなるので、
コンデンサーの外箱は残す事にします。
真空管の試験
この種のラジオ修理の手始めは清掃と真空管の試験です。
TV-10で試験したところ
RF 6D6 実際は6C6がついていた、メーター振れず。
検波 6C6  OK。
低周波増幅 76 酷いエミ減 真空管は真黒 もう駄目だと思ったが。
電力増幅   6ZP1  OK
整流      12F   OK

RF用の6C6は修理できそうなので、やってみた。

不良真空管の修理

RF増幅に使われていた6C6は真空管試験器でもメーターが振れません。
少し揺すってみると針が動きます、ベースの半田付け不良と見当をつけて、
修理をする事にしました。
各 脚の半田を吸い取り、内部のリード線を磨いて、再半田付けしました。
ベースとガラスはエポキシ接着剤で固定します。
熱膨張率の関係で、割れる恐れがあるといわれていますが、
電圧増幅管では温度がそんなに上がらないせいか、今まで割れたことはありません。
これで1本生き返りました。

(但しこの真空管は予備球として使っていただくことにしました)

ST管はこのように半田付けが外れている可能性が高いです。
特にベースの接着が外れているものは要注意です。
ベースはセメントで接着されていますが、これは湿気に弱く、ぐらぐらしているものが多いです。
逆ベースを外したい時は湯煎すると良いと言われています。

プレートキャップがぐらつく時も同じようにエポキシで接着して修理します。

シャーシ内部の様子。


音量調整用のVRは交換された形跡があります。
これは壊れ易い部品だからです。

ペーパーコンデンサーは抵抗と一体に組み合わされて配線されています。
当時のメーカー製ラジオの特徴でしょう。
ところがこの方法は部品交換時泣かされます。

配線図がキャビネットに貼り付けてないので、
最初は部品から回路図を想定しながら慎重に交換していましたが、
翌日 裏蓋に虫食いの回路図を発見、これで作業が進みました。

一応 不良部品の交換が終了して、真空管を挿し、通電してみました。
音が出ることは確認できましたが、音量が全然調整できません。
結局音量調整用のVRを交換することにしました。
この部分はPU切替を兼ねているので、切替SWつきの10KΩ C型が本当は必要です。
同じ物は入手が難しいので、10KΩ B型(ON OFFスイッチつき)のものに交換しました。
これは以前 秋月電子で購入したものです。
この部分には電流が流れますので、大型でかつC型が欲しかったのですが、いたし方ありません。

VRを交換して中電試験中の写真。
最初は修理した6C6をRF増幅部分に挿しましたが、
これは結論として駄目でした。
このラジオの回路はリモートカットオフを前提に設計されていますので、
シャープカットオフの6C6は残念ながら使えませんでした。
やはりリモートカットオフで無いと、円滑な音量調整は無理と納得させられました。



修理後のシャーシ内部。
四角い金属ケースのケミコンは配線は切断したが、
シャーシ上に残した。
こうしておけばオリジナルに近い雰囲気が残る。
したがって新しいケミコンは全てチューブラ型とし、分散して取り付け。
ケミコンとペーパーコンデンサーは全て交換した。
戦前のラジオ受信機の配線方法が残っていて、
コンデンサーと抵抗が組み部品になって配線されているので、
交換が大変だった。

音量調整用のVRはそのまま使いたかったが、全然駄目だった。
仕方なく10KΩ B型のものに交換した。
多少電力不足ではとの心配はある。

ダイアルの操作がいささか重かったので注油しましたが、完全ではありません。
一部のプーリーがつくりが悪く多少引っかかりがあるようです。


ケースに収めたところ。
終戦直後のラジオでこれだけ綺麗なのは珍しいです。
保管場場所が良かったのでしょう。



6D6は最終的にRCAの新品と交換した。
多少高さが違う。
日本製の6D6 6C6は昭和20年代中頃から背丈が少し低くなった。


昭和24年10月製造。
10524.
余談
このラジオは再生式ですから、受信するのに慣れが必要です。
同調と音量調整だけではすみません、再生をどの程度効かせるかが感度良く受信するコツです。
スーパーのように自動音量調整回路もついてませんので、放送局ごとに音量調整をこまめにする必要が有ります。
感度は高1より多少良くて、5球スーパーよりだいぶ悪いと考えた方が良いでしょう。
戦後5球スーパーが普及する前に、電波の弱い地域向けに売られていた比較的珍しい受信機と言えるでしょう。
この種のラジオは戦前にも2.5Vシリーズで松下が製作していました、その6.3V版がこの5D−18です。
恐れく この様な変則的な受信機は以後作られていないと思います。
アンテナなども真面目に張る必要があります。
音も再生検波特有の音で、決して良いとは言えません。

ご注意
このラジオは戦後の物資の乏しい時代に作られています。
電源コードのみは新しくしましたが、他は当時の部品です、使う時のみコンセントに挿すなど火災予防に充分注意ください。
真空管ラジオは全て同じような注意をしたほうが無難です。
受信機能は回復していますが、安全性の保証は出来ません、充分注意ください。

 ラジオの修理を自分でやる方は このホームページの他真空管ラジオ・アンプ作りに挑戦!、や真空管式スーパーラジオ徹底ガイドも参考にしてください。
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初歩的なことでも結構です、ただし他人が解るように書いてください(神様や占い師にするような経緯を省略した質問は返事不能です)。

当方に依頼される方はラジオ修理工房をご覧ください、こちらは有償です。
 


2004年1月10日

2005年8月16日移転

2006年6月24日移転

修理のノウハウは「真空管ラジオ・アンプ作りに挑戦!」をご覧ください。




ラジオ工房修理メモ

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