真空管ラジオの修理 ナナオラの電蓄の修理


ナナオラの電蓄の修理を依頼されました。
場所が狭いので、中身だけ送っていただいたのですが、
どうもこれは改造品のようです。
シャーシに余分な穴がありすぎます。
古い部品を集めて、電蓄に改造した物のようです。


銘板には24年3月製 33VA 出力1Wとなっています。
常識的には 元々6Z−P1 12Fクラスのスーパーと想像されます。
しかし機械には42 80が組み込まれています。
トランスは交換したらしく、別の名前の物が組み込まれています。
6D6は空気入りになっています。

現在の構成は6W−C5 6D6 6Z−DH3A 42 80の標準的な配列になっています。



気のせいかxH−5088と読める。


シャーシの内部。


スピーカーはワルツの物が使われているようです。
フイールドコイルの抵抗を測定してみると1500Ωくらいありそうです。






どうも元々はこのような形だったようだ。
昭和24年頃の雑誌を捜したら、無線と実験の23年12月号にNH−5088の紹介記事が見つかった。
6D6 6D6 6C6 42 12Fの変則型スーパーのシャーシとIFTを流用して電蓄に組み替えた物と想像されます。

良く見ると、ツマミの穴が開いたままになっている、
球とIFTの位置が同じなど、シャーシを流用したことがよく理解できる構造。

どうもナナオラの電蓄はシャーシを流用したためで、とんでもない自作品だった。
オリジナルの部品はシャーシ、とバリコン IFT程度で他は適宜他から部品を持ってきたらしい。
IFTは珍しい構造です。
スピーカーも別物です。
修理しながら、段々不安になってきました。



同調容量は100PF、コイルはコア入りです。





整流管を出たところの電圧が420Vくらいで、出力管のプレートには320V G2にも330Vくらいかかっている。
これでは動作はするが、真空管が持たない。
一応 動作はするようになったが、これではどうしようもないので、電圧の降下作戦を始めた。
試行錯誤を3日ほどしたが、解決せず、やむを得ず、
抵抗をフィールドコイルと整流管の間に入れることで解決することにした。




ダイアルを組み込んだところ。



ダイアルは、別の物らしく、構造は良くない。
糸が切れていたが、バネが一個無くなっていて、
適当なバネを捜して、使用した。
動作は決して スムーズには動かない。




元々12Fが使われていたので整流管が80だと寸法が大きくて、
バリコンの羽根が微妙に引っかかる。
望ましくは無いが、このままとする。


最終的なシャーシ内部の状況。
電圧が高すぎて、どうも不安なので、560Ωの抵抗2本(合計8W)を整流管とフィールドコイルの間に入れることにした。
抵抗が熱を持つが焼けることは無さそうなので、よしとする。
6D6と6W−C5のスクリーングリッドには47V 3Wのツエナーダイオードを直列に入れた。
このようにすると、80のみ立ち上がった時点で、B電圧回路が400V以下になる。
今回の修復の回路図。
基本的には標準のスーパーだが、B電源回路に苦労しました。
電圧が高すぎて、どうしようもないので、変則的に80から、フィールドコイルの間に560Ω 4Wの抵抗を2個入れました。
これで常識的な電圧になります。
元々、この電蓄を組み立てた当時はスピーカーが違っていた可能性が有ます。 

井上さんに回路図を清書いただきましたので、紹介します。


完成時の感想
日本が最も貧しかった時代の部品を寄せ集めた電蓄の修理で、動作はするが、感度が悪い。
率直に止めた方が良かったかもしれない。
普通の状態だと発振するので、IFTに抵抗(110KΩ)を抱かせて、防止している。
受信範囲は535〜1450KHzくらい、IFTは463KHzに調整。

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2008年11月14日

2008年11月24日:219
2008年11月26日:436

電源関係については下記書籍をご覧ください。




ラジオ工房修理メモ

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