元箱入りの東芝かなりやQの修理依頼がありました。
東芝のmT管ラジオはごくありふれていますが、元箱入りとなると貴重です。
元箱入りのかなりやQ。
現象は受信は出来るが音が悪いとのこと。
通電する前にケミコンの漏洩電流を測ってみました。
1mA以下で、テストOKです。
同時に結合コンデンサーの絶縁試験。
単純に出力管のG1の電圧を測るだけです。
(G1に電圧が少し出ます、これはまずい)
テストの結果はNG。
早速 0.01μFのコンデンサーを交換しました。
これで通電しました。
音はまだ相当歪んでいます。
普通はこれでOKなはずなのですが、別の原因もあるようです。
クリスタルイヤホーンをジャックにつないで見ました、音は正常です。
そうすると、残りは。
@アウトプットトランスのレヤーショート。
Aバイパス用のコンデンサーのショートしかかり。
Bスピーカー本体の不良。
順次確認してゆくとスピーカー本体の不良でした、これは珍しい故障です。
さあ 大変です、スピーカーは楕円形なので代わりを捜すのは難しいです。
楕円のスピーカーは口径の割りに良い音がするようですが、コーン紙が同心円で無いので、
保存方法によっては変形しやすいのでしょうか。
調べてみるとボイスコイルが中心の磁石と少し接触しているようです。
これでは歪んだ音がするのは当たり前です。
修理方法を考えてみました。
@コーン紙を無理やり変形させる
A別のラジオからスピーカーを移植する。
B小さな丸型スピーカーをアダプターにつけて取り付け。
@の方法(薦められませんが、応急措置として)
スカイセンサーの外部スピーカーとして動作するよう配線。
コーン紙を変形させ、音が正常に出る位置を確認して取り付け。
これで何とか正常に近い?音が出るようになりました。
お世辞にも良い音では有りませんが、何とか聞けます。
(修理のノウハウは悪用され、オークションに出ると困るので省略)
元箱入りのラジオとしては相応しくない修理方法なので、
依頼主と相談することに。
ここで中断。
追加。
通電試験をするとどうも不安定です。
バンド切替スイッチをさわると受信できます。
スイッチの接点を見ると黒く錆びています。
交換は難しいので、接点を清掃することにしました。
綿棒で丹念に汚れ(錆び)を拭いてゆきました。
綿棒が黒棒になるくらいになりました。
これで何とか安定に受信できるようになりました。
結局スピーカーを同じ機種から取り外して移植することにしました。
上 今回の修理品。
下 部品取りになったかなりやQ。
修復完了のかなりやQ。
修理前のシャーシ内部。
試験したところ結合コンデンサーの漏洩も無く正常。
ただVRの音量が小さくなりません。
VRそのものはがりも無く一見正常なのですが、VR0の位置でも残留抵抗が20KΩ程有ります。
5球スーパーは増幅度が大きいので、この程度の残留抵抗でも音が絞りきれません。
千石電商から買ってきた500KΩ A型のVRと交換しました。
写真中央は不良VR。
なお先端を切り取って再利用しました。
修理完了後のシャーシ内部。
今回の修理で非常に珍しい故障に遭遇しました。
通電したところ、IFの発振と同じような現象が起きます。
強い放送局に同調した時は正常ですが、同調が少しずれると発振気味になります。
12BA6を触ると様子が変化します、ハムが増加する感じがしました。
12BA6は管内シールドがありますので、普通はこのようなことはおきません。
真空管を交換してみると正常に動作します。
不具合がある球をTV−10で測定しても正常です。
同じ東芝製の12BA6です、上が正常な球。
下側の物が異常動作する。
管内シールドは2番ピンに接続されているが、
スポット溶接付近付近の様子がなんとなく怪しい。
ガラスを割らないと、確認できないので、プレートとサプレッサーグリッドとの静電容量を測定してみた。
スポット溶接の部分が外れていれば容量が異なるので、区別できると予想したが容量はほぼ同じだった(共に10PF弱)。
原因追求はとりあえず 終わり。
真空管交換以外の主な修理箇所。
☆C10の結合コンデンサーをフイルムコンデンサーに交換
☆12AV6のプレート回路の負荷抵抗330KΩが半断線していたので交換。
☆C2 C3 C13(AC回路)を交換。
☆
F:98V
G:82V(無信号時) 86V(TBS受信時)
H:
E:50V
I:5V
C:0.65V(無信号時) 0.25V(TBS受信時)
ラジオの修理を自分でやる方は このホームページの他真空管ラジオ・アンプ作りに挑戦!、や真空管式スーパーラジオ徹底ガイドも参考にしてください。 不明な点はラジオ工房掲示板に実名で投稿ください、修理ノウハウの提供は無償です。 初歩的なことでも結構です、ただし他人が解るように書いてください(神様や占い師にするような経緯を省略した質問は返事不能です)。 当方に依頼される方はラジオ修理工房をご覧ください、こちらは有償です。 |
2002年9月30日
2002年10月2日
2005年8月16日移転
2006年6月24日移転
2007年6月16日:984
ラジオ工房修理メモ
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