真空管ラジオの修理 ヘルメス 並四受信機 モデル 24

大阪変圧器 ヘルメスの24型 並四受信機が修理にやってきました。
真空管は24B 26B 12A 12Bでオリジナルのままと思われます。
保存状態は非常に良好です。
沢山 戦前のラジオは見てきましたが、これほど保存状態の良い物は滅多に有りません。
並四とは言え、作りも丁寧で、手抜きがありません、素晴らしいです。


取り出したシャーシ。
多少埃はついていますが、錆びは少ないです。
ダイアルの回転が硬いし、上手く動かないので、注油し、動くように調整しました。
ダイアル駆動ドラムに一部欠けが有るようですが、実用的に問題は有りません。


シャーシ内部の写真です。
修理の痕跡は殆どありません、オリジナルのままのようです。
これも非常に珍しい事です。

若しかしたら故障したので、ダンボールに入れて保管してあったのかもしれません。

試験した結果。
電源のコンデンサー(左端 ブリキ缶いり) 不良。
電源のチョークコイル(中央のトランス)   断線
低周波トランス(右端のトランス)       1次側断線
0.01μFのペーパーコンデンサー     絶縁不良
検波管プレートの250PFマイカ       絶縁不良
真空管  26Bのみ点灯せず 不良、24B 12A 12BはOK.。

オリジナルの回路をメモして、忠実に復元する事を考えました。
ただペーパーコンデンサーは準備できませんので、この分はケミコンで代用します。
容量が多いのでチュークコイルも1Kオームの抵抗に置き換えました。


回路図が有りませんので、現物から回路図を作成する必要があります。
まず上の写真の状態(オリジナル)でおおよその見当をつけます。
細部の配線はペーパーコンデンサー(ブリキ缶いり)を取り除かないと見えませんので、
慎重に部品を取り外し、回路図を作成します。

この受信機は所謂ミゼット(再生)バリコンを使っていません。
巻線型のVRで検波管のスクリーングリットの電圧を可変して、再生の調整をする方式です。
この時代のラジオとしては珍しいと思います。
幸いな事にVRは大丈夫でした。

取り外した後のシャーシ内部。
左下のドラムに巻いた物はバイアス用の抵抗。
巻線抵抗が使われている、これも珍しい。
26Bのバイアスにはコンデンサーが有りません。
12Aのみに使われています、これも忠実に再現しました。
アンテナ端子はAL AM ASの3つの端子が取り出されている。
ASは短いアンテナの場合に使用する。
ALは長いアンテナの場合の端子。


修復後のシャーシ内部。
抵抗はオリジナルの物をそのまま使いました。
多少値が高くなっていますが、実用的にガ問題ありません。
ペーパーコンデンサーは合計6μFでした、
これはケミコンにしましたので容量は多いです。
断線した26Bの修理

26Bは真空管試験器でテストしましたが、点灯しません。
ベースが多少ぐらついていますので、半田付け不良の可能性があります。
脚の半田を吸い取り、リード線を磨いて、再度半田付けをしました。
これで無事修理完了でした。
中古の26Bはよくエミ減(球の劣化)しているのですが、このマツダの26Bは元気でした。


試験中のモデル 24.
検波管のシールドケースはオリジナルです。
日本製のラジオでこの形のものを見たのは初めてです。
まさか輸入品を使ったわけでは無いと思うのですが。
もう一つ気になるのはダイアル等の軸が6mmより太い感じがします。
日本製の6mmのツマミが入りません、若しかしてインチサイズ?。

それとこのラジオの受信範囲は490KHz〜1480KHzです。
コイルは交換された形跡は有りません。
同調コイルの一部に半田付けの跡がありますが、補修の結果と思います。
戦前のラジオの受信範囲は550〜1500KHzくらいですから、
特に変では無いのですが、現時点では不便ですので、
依頼主と改造(コイルの巻数の減)を相談したのですが、オリジナルのままとしました。

PLランプは1個断線していましたので交換しました、2個照明に使われているので明るいです。

なおグリットリークのコンデンサーも新品に交換しました。


AC電源コードは非常に状態が良かったので、このまま使う事も考えたのですが、
より安全性をということで、同じ黒色の袋うちコードに交換しました。

写真はオリジナルのコード ひび割れも無く綺麗です。


裏蓋も残っています、後ろに銘板がつけられています。


修復し、動作中の24型.

裸で動作試験していた時は問題なかったのですが、
箱に組み込み動作試験すると、発振気味になります。
スピーカーのフレームにアース線を接続する(オリジナルも同じ)と発振が止まりました。

普通は出力管のプレート回路に高周波分のバイパス用コンデンサーを入れるのですが、
この24型には入れられていません、オリジナルのまま復元しました。
どうもこのバイパスコンデンサーの代用が、このフレームアースのようです。

低周波トランスを使った受信機の為、ブーンと言うハム音は多少はでます。
これはケミコンを増加しても減少しません、念のため。

ラジオ内部の写真です。

シャーシ内部の部品は一部新しい物を使いましたが、外部から見てオリジナルそのものに見えます。


「マツダ真空管」使用と誇らしく書かれています。
最近のパソコンのintel insideとなんとなく似ているとは感じます。

2台目の修理(2010年11月3日)

これも綺麗なヘルメスの受信機です。
ACコードも使えないことはありませんが、危険なので交換することにしました。


アンテナコイルはスター(富士製作所)に交換されています。


シャーシ内部の様子ですが、再生(豆)コンが組み込まれています。
前回修理したものはVRでしたから、あるいは交換されたものかも知れません。
左側は平滑用のチョークコイルで、右側は1:3のトランスです。
トランスは断線していました。

戦後使われたケミコンが組み込まれているので、修理もされているようです。
オリジナルはペーパーコンデンサー。
アンテナコイルの交換時期と同じ頃に修理したのかも知れません。
真空管は24B 26B 12A 12F(オリジナルは12B)。
マグネチック スピーカーの修理

一度動作していたのですが、突然無音になりました。
納めた時に また断線すると困るので、巻きなおすと事にしました。
なお 別項 マグネチック スピーカーの修理もご覧ください。

コイルを取り外します。
馬蹄型磁石を広げてコイルを取り外します。


0.07mmφのエナメル線が巻いてあります。
この線を解くには 巻くより手間がかかります。


0.1mmφのエナメル線(実際はウレタン線)を3500回程度巻きます。
本来なら0.007程度が良いのですが、とても素人では巻けません。
電線が太いので抵抗は500Ω程度です。
巻線機で巻くので、比較的簡単です。


エナメル線を巻き終わったところ。


ウレタン電線とマグネチックスピーカー。
写真はコイルを組み込んだところです。


修理後のシャーシ内部です。
低周波トランスを使うので、ブーンというハムが酷いです。
PU入力もハムの原因なので、取り外しました。
画像では豆コン(再生調整用)が見えますが、前回修理したものはこの部分VRでした。



動作試験中。
コイルがスターに交換されていて、周波数の低い部分が受信できません。


コイルの中にバーアンテナの破片を接着して インダクタンスを増加させました。










スピーカーはオリジナルでは有りません。
紙製のフレームのスピーカーに交換されていました。
それなのに、発振防止用のリード線が接続されています。
オリジナルのスピーカーは金属製だったので、これでよかったのですが、絶縁物の紙では困ります。
発振予防用のコンデンサーを追加して修理完了です。

ACコードも袋うちタイプのもの(オリジナルと同じ)に交換しました。


銘板です。



交換した部品 この他にスピーカーのコイルや電解コンデンサーを交換しました。
1:3のトランスは変形E型のコアを付き合わせた(ギャップ有り)だけでした。


トランスなど主要部品は製造後70年近く経過しています。
使用時のみコードをコンセントに挿すなど火災予防に 充分ご注意ください。
安全性の保証は出来ません。

 ラジオの修理を自分でやる方は このホームページの他真空管ラジオ・アンプ作りに挑戦!、や真空管式スーパーラジオ徹底ガイドも参考にしてください。
不明な点はラジオ工房掲示板に実名で投稿ください、修理ノウハウの提供は無償です。
初歩的なことでも結構です、ただし他人が解るように書いてください(神様や占い師にするような経緯を省略した質問は返事不能です)。

当方に依頼される方はラジオ修理工房をご覧ください、こちらは有償です。
 

2005年4月4日
2005年4月5日
2005年8月16日移転
2006年6月24日移転
2010年11月3日:1,491

修理のノウハウや資料については下記の書籍をご覧ください。






ラジオ工房修理メモ

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