持ち主から
症状としては,アンテナにつながっているコイルのような線に触れていると明瞭に受信しますが、ハム音がかなり聞こえます。
触っていない時は,非常に小さな音でしか鳴りません。
スピーカーの2つの端子から,それぞれ電線が出ていて,何にもつながらないまま束ねてあります。
また基盤から出ている電線にボリュームのようなものが半田付けされてぶらさがっていました、触るとスピーカーからガリ音が出ていましたが、
そのうち取れしまいました。
このような状態のラジオです、時計付きのデザインが気に入っているので,今まではインテリアとして使用していましたが、
せっかくなのでラジオも聴けるようになれば素敵です(時計は動いています)。
早速分解してみました。
真空管は50C5,35W4,12SQ7,12BA6,12SA7です。
MT(メタル) mT(ミニチュア−)管混合の球構成。
確かにスピーカーから普通のACコードが延びています。
IFTにビニールテープで固定されています、相当乱暴な工作です。
もう一つコードが出ていますが、これはPU入力です。
配線の様子からみるとこれはオリジナルのようですが、
外部端子はRCA型がついています、これも空中にぶらぶら状態ですから、
あるいは別の端子がついていた可能性があります。
これらは双方とも取り外しました。
ACコードは途中で固定されていない、どうも素人がコードを交換したらしい。
恐ろしい仕掛けは下の内部配線の部分をご覧ください。
珍しいのはシャーシ下の鉄板で、これがビニールテープで止められている。
修理前のシャーシ内部。
例のごとくケミコンの試験と同時に35C5のグリット電圧を測定。
ケミコンのリークは1mA以下なのでOKとしました。
結合コンデンサーのリークもありません。
(この部分複合部品が使われている)
真空管を試験器で確認、全てOK。
空中配線のACコード
ACコードは空中で接続されています。
今まで沢山ラジオを見てきましたが、この様な危険な工作は珍しいです。
ACコードは大きな穴を経由してシャーシ外に出ています。
シャーシを潜る際に普通は固定されています。
ぶらぶら状態ですから引っ張るとショートしかねません、
恐ろしい限りです。
ACコードのぶらぶらはあまりに酷いので、穴を加工、プラスチックの留具で固定した。
空中接続も当然修理しました。
修理経過
ACコードを接続しなおし、通電してみました、不思議な事に一応音が出ます。
ただ音質が悪いのとハムが多いです。
ペーパーコンデンサーの絶縁を測定しました、低下していたので1個を除き全てを交換しました。
残ったものは並列に抵抗が入れられていますので、交換してもと思い、そのままとしました。
ハム退治
35W4のカソードのAC(リップル)電圧を測ってみると10V近くあります。
測定は0.1μFのコンデンサーで直流分をカットして、テスターのAC10Vレンジで測定します。
このラジオはスピーカーが小さいので、ハムは出にくいのですが、それでも10Vは多すぎます。
手持ちの250V47μFのコンデンサーを新規にこの部分にいれ、
従来使われていた分はここから取り外して、平滑出力側にパラにして接続しました。
これでそれぞれ3V 0Vにリップル電圧が減少しています、これでほぼOKです。
なおこのラジオの出力トランスはハムキャンセル巻線方式です。
日本製のラジオにはあまり使われていません。
IFTの調整
IFTを455KHzに調整しました。
これで随分感度が良くなりました。
やはり経年変化で狂いが多かったようです。
なおトラッキング調整はループアンテナなので、周波数の高い部分だけにしました。
整備済のラジオ正面。
持ち主が言われるように、なかなか好ましいデザインです。
なお ダイアル指針の円盤のプラスチックの軸受け部分が風化していて取り外した後、ぐらぐら動くので、
ホットボンドで固定してあリます。
取り外す場合は熱を加えると簡単に取り外せます、今後修理する時はご注意ください。
背面。
アンテナはループコイルが使われている。
ラジオの置く方向によっては指向性が強く感度の強弱が激しい可能性があリます。
上のアンテナ端子は短い線(1m程度)だとOKだが長い線を接続するのは回路上拙いです、注意ください。
ラジオの修理を自分でやる方は このホームページの他真空管ラジオ・アンプ作りに挑戦!、や真空管式スーパーラジオ徹底ガイドも参考にしてください。 不明な点はラジオ工房掲示板に実名で投稿ください、修理ノウハウの提供は無償です。 初歩的なことでも結構です、ただし他人が解るように書いてください(神様や占い師にするような経緯を省略した質問は返事不能です)。 当方に依頼される方はラジオ修理工房をご覧ください、こちらは有償です。 |
2004年1月24日
2006年6月24日移転
修理のノウハウは「真空管ラジオ・アンプ作りに挑戦!」をご覧ください。
ラジオ工房修理メモ
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