大正から昭和にかけて製作されたアメリカ製の201A 5球 TRFラジオです。
検波管の負荷になっているトランス(右から2番目)は交換されたらしく、
ネジが1本だけで固定されています。
良く似た機種から移植されたようです。
上から見ると、形と色が微妙に違います。
写真は上から見たところ。
シャーシ下側の写真。
中央左よりの円筒状のものはコンデンサー。
黒いビニールテープが巻いてある。
このコンデンサーは後日 問題となった。
真空管を抜いた状態で通電し、各部分の電圧を測定した。
ところが出力管(上の写真で右端相当:201A)のA+ A-の電圧が逆になり、数十Vを示す。
送られてきた真空管が1本 断線していた。
輸送中の振動の影響と思ったが、後日依頼主から購入時の取り扱い説明書(メモ書き A41枚)が送られてきて読んでみると、
なんとヒラメント電圧は5.5〜6Vと書いてあるでは・・。
本来供給するA電圧は6Vですが、それをレオスタットで落として 5V以下で使うのが201Aの正常な使い方です。
製造後80年近く経過した201Aに無理な電圧を加えたのが断線の一因かもしれない。
再度 接続方法を確認し、真空管を挿入して通電した。
依頼主が言われるように音量が小さい。
箱に添付された銘板です。
箱に添付された紙ラベル。
7960型をあらわしています。
Atwater Kent Model 20cには大きく分けて2種類あるそうで、回路図も異なります。
電源装置です。
アメリカで製品化されているもののようです。
津田さんから回路図をいただきました。
7960の回路図です。
箱には7960と書いてあるのに、実際の中身は7570でした。
古い Atwater Kentのラジオ2台を1台にまとめたもののようです。
どうもこの様なことは古いアメリカのラジオでは多いらしいです。
Atwater Kent Model
20cは「7570と7960」2つのモデルがあるらしいです。
修理中のラジオ箱には7960と書いてあります。
ところが回路を追跡してゆくと7570の回路図に近いです。
トランス結合をCR結合に改造してあります。
その後調べた結果、このラジオは初期型の7570である事がわかりました。。
写真は低周波部分(検波+AF)の裏側です、黒い4角のものは0.002μFのコンデンサー。
段間トランスが断線しています、変わりに抵抗(R)とコンデンサー(C)で結合されています。
グリッドリークの抵抗は断線していたので、陶管の中に抵抗を入れてオリジナルに見えるように修理した。
グリッドリークの抵抗、これが壊れていました。
7570型の回路図
現物の回路を追いかけてゆくと、初期型の回路が正しいようだ。
箱のラベルを信用したので、とんだ回り道だった。
低周波トランスの修理
低周波増幅段と出力段が抵抗結合に改造されていましたので、
回路をオリジナルに戻すことにしました。
写真は断線したトランスです。
ピッチ詰めされています。
暖めるとピッチが溶けるのはよく理解していますが、猛烈な臭いがしますので、
家族の苦情でラジオ修理を禁止される恐れがあります。
何とか取り出したところ。
ここまで出すのに苦労しました。
普通使われている薄板のコアではなく、針金状のものが使われている。
秋葉原の内田ラジオで売っている1:3のトランスが丁度なかに入る大きさだったので、使用しました。
中で暴れないように 片側をねじ留めしました。
出来るだけオリジナルになるよう、元々付いていた綿巻きのリード線を移植しました。
試験中のモデル20C
この時点ではトランス結合に戻してあります。
修理完了したラジオ。
上から見たところ。
とんでもない修理方法を発見
トランス結合を抵抗結合に変更するのは、この種のラジオでは良くあることらしいですが、驚くような修理を見つけてしまいました。
何度か シャーシを出し入れする内に黒いビニールテープを巻いたコンデンサーのリード線が取れてしまいました。
寸法的に無理だった為ですが・・。
やむなくビニールテープを取り外してみました、ところが驚いた事に160V 22μFのケミコンがでてきました。
B電圧の部分ですから、普通はケミコンを使いますが、この部分は同調回路のバイパスの為、
高周波用のコンデンサーが必要です。
どうも同調がブロードだとは思ったのですが、こんな仕掛けがしてあるとは!。
コンデンサーの脚が取れて、結果的に見つかってよかったです。
出力管のヒラメント電圧をテスターで測定した時 異常な電圧が出たのは、このケミコンの電荷だったようです、いやはや。
後日 別の人が分解した時 大恥をかくところでした、桑原 桑原。
基本的な知識が無い人が整備して 販売しているようです。
輸入ラジオを沢山 販売している方のようですが、思い当たる方は今後注意してください。
余談
20年くらい前 ハムフェアーで同じようなものを買った事を思い出して、家中を捜してみました。
本体だけ、完動品と言う事で購入したものです。
何とか発見できたので、分解してみました。
ラジオは上記と殆ど同じです。
抵抗結合の部品が見つからないので、これは完品だと喜んだのですが、トランスの抵抗値をテスターで測定すると、
信じられない抵抗値です。
トランスを外してみると、驚いた事にトランスケースの中は空洞です。
抵抗とコンデンサーがテープで巻いたものが見えるではありませんか・・。
上と同じようにトランスを入れようとしたら、入り口の穴が小さくて駄目です。
考えるに ダミーのトランスケースのようです。
アメリカでは愛用者が多いのでしょうね、こんなケースが販売されているとは。
今回の修理では初めての経験でもあり、苦労はしましたが 随分勉強になりました。
周波数 局名 所在地 コール 出力
639 kHz NHK2 静岡 JOPB 10kW
729 kHz NHK1 名古屋 JOCK 50kW
864 kHz 東海ラジオ 豊橋 JOSM 0.1kW
882 kHz NHK1 静岡 JOPK 10kW
909 kHz NHK2 名古屋 JOCB 10kW
999 kHz NHK1 浜松 JODG 1kW
1026 kHz NHK1 御殿場 0.1kW
1053 kHz CBCラジオ 名古屋 JOAR 50kW
1332 kHz 東海ラジオ 名古屋 JOSF 50kW
1404 kHz 静岡放送 静岡 JOVR 10kW
1404 kHz 静岡放送 浜松 0.1kW
1521 kHz NHK2 浜松 JODC 1kW
ラジオの修理を自分でやる方は真空管ラジオ・アンプ作りに挑戦!、や真空管式スーパーラジオ徹底ガイドも参考にしてください。 不明な点はラジオ工房掲示板に実名で投稿ください、修理ノウハウの提供は無償です。 初歩的なことでも結構です、ただし他人が解るように書いてください(神様や占い師にするような経緯を省略した質問は返事不能です)。 当方に依頼される方はラジオ修理工房をご覧ください、こちらは有償です。 |
2006年12月18日
2007年1月21日:0256
ラジオ工房修理メモ
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