真空管ラジオの修理 シャープ 5P−70 5球スーパーの修理

オークション落札品のラジオが修理にやってきました。

出品者
「鳴ります。幅40cm、高さ20cm、奥行き15cmです。
古い物のUSEDですので、神経質な方、叉は完全品をお求めの方の御入札は御遠慮下さい。
返品、クレームはお受けできませんのでご了承下さい。!!
お分かりにならない事があれば入札前に質問してください。」
持ち主からのメールは
先般、Yahooオークションでシャープの真空管ラジオを落札しました。
一応、動作しておりまして、それなりに聞けていたのですが、
ボリュームつまみを左に絞ってみたところ、なぜか全く鳴らなくなってしまいました。

無事到着したので分解してみました。
埃だらけですが、手を入れた形跡はありません、まずは良かったと思います。

まずツマミを外し、ダイアルの糸と指針のネジ止めを外します。
初期のmT管ラジオらしく、糸と指針を止めるのにネジ止めになっています。
これは親切設計です。
スピーカーの半田つけを外し、底のネジを外せばシャーシが取り外せます。
バリコンが傾いていますが特に悪影響は無いようです。

ACコードの取り出し口のゴムが無くなっている。
これは危険なので、後で修復。



一応清掃が済んだところ。

シャーシ内部の様子。


まずケミコンテスターで電源のケミコンの試験をします。
メーターの振れがスムースに落ちてゆきます、これはケミコンが元気な証拠です。
漏洩電流が1mA以下になったのでOKとします。
この時6AR5のG1の電圧を測ってみました。
+30Vでした。
結合コンデンサーの0.01μFが4MΩの抵抗に化けています。
真空管が働いている時には6AV6のプレートに電流が流れるので、換算すると+15Vがグリットに加わる計算です。
これでは出力管が堪りません、このまま使えば自殺行為です。
これはブレーキの壊れた自動車を運転するようなもので、まもなく大事故が起こります。
不良のコンデンサーを交換することにしました。
またAC回路に直接使われているコンデンサーのリークは少ないようでしたが、念のため交換しました。
出力管のバイアスが浅くなった時にどのような悪影響があるかはラジオ修理メモ2をご覧ください。
これだけ注意してもトランスなど大部分の部品は半世紀近い物ですから、
使用しない時はコンセントから抜くなどは火災予防に注意ください。
ここでやっと通電します。
パイロットランプが切れていますが、動作するようになりました。
(トランスレスの場合は通電前にランプの確認をしてください、断線していると35W4に無理がかかります)
仕上げに回転部分に注油しました。
この後 IFTの調整と目盛りあわせ、トラッキング調整をして終了。


交換したコンデンサーの中には爆発寸前(?写真最下段)の物もある。

なお本品の出品者が「鳴ります」と書いてありましたが、
これが業者さんの常識です。
「鳴る」と「完動品」とは天と地の開きがあります、ご用心。
鳴ると言って喜んでいるのはブレーキが故障した車に、動くと思って乗っているのに近いです、
非常に危険です。



部品交換した後のシャーシ内部。
どうもこの機種はmT管ラジオとしては初期のものらしく
つくりは丁寧だし、部品もふんだんに使われているので、
逆にコンデンサーの交換が大変だった。
(一部の部品を取り外さぬと交換できないなど)


このラジオはプレーヤーが接続できるようになっている。
(真空管ラジオはほとんどこうなっているが)
切替は特殊な2連スイッチのついたVRが使われている。
当然交換する部品は無い。
幸いがりは無いので、このまま使うことにした。
ただ接点の接触不良が起こりやすく、突然ラジオが聞こえなくなる恐れがある。
安全の為にはこのスイッチ部分をバイパスした方が無難なのだが、
持ち主に相談したら、オリジナルにとの希望なのでそのままとした。
(接触不良で聞こえなくなったら、数回スイッチを動作させてみてください。
この場合コンセントからコードを抜いた状態でお願いします。
短時間に電源SWのON OFFを繰り返すと真空管が切れます。)

持ち主は出来るだけオリジナルにと言う希望なので、
本当はACコードも交換したいところですが、
取り出し口にゴムブッシングを付け、
コードにアセテートテープを巻いて保護するようにした。
使用時は十分注意ください。



修理完了したシャープラジオ。
ツマミも汚れが酷いので清掃しました。

なかなか綺麗です。
このラジオは小川無線の卸商報32年3月に掲載されています。
定価10,800円。
昭和31年にも掲載されていますので、30〜31年頃の製造と思われます。
まだVA的省略がされていず、丁寧なつくりです。
内部の配線にST管ラジオの面影が有ります。




 ラジオの修理を自分でやる方は真空管ラジオ・アンプ作りに挑戦!、や真空管式スーパーラジオ徹底ガイドも参考にしてください。
不明な点はラジオ工房掲示板に実名で投稿ください、修理ノウハウの提供は無償です。
初歩的なことでも結構です、ただし他人が解るように書いてください(神様や占い師にするような経緯を省略した質問は返事不能です)。

当方に依頼される方はラジオ修理工房をご覧ください、こちらは有償です。
 

2002年10月24日
2002年10月26日追加修正

2005年8月16日移転

2006年6月24日移転

修理のノウハウや資料については下記の書籍をご覧ください。




ラジオ工房修理メモ

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