真空管ラジオの修理 自作5球スーパー その2

同じ依頼主から自作の5球スーパーがもう1台修理にやってきました。
ツマミ1個のねじ山が半分折れて無くなっています、でもこちらは簡単に取り外しが出来ました。
ST GT混合の5球スーパーです。
6SA7−GT 6SK7−GT 6ZーDH3A 6F6−GT 80HK 6E5。
マジックアイが暗いが、他の真空管は大丈夫でした。
バリコンはアルプス IFTはスターのものが使われています。
トランスもB電圧は270Vで、6F6−GTクラスとしては妥当な選択です。
前回のものに比べ、部品が格段と良くなっています。
恐らく最初のラジオは昭和25〜26年頃の製作で、このラジオは昭和30年代前半の製作ではと思いました。
数年の違いですが、日本のラジオつくりの技術が安定した時期のものだからでしょう。


バリコンの位置が歪んでいます。
取り付けネジが紛失してしまったようです。
水道のゴムパッキンを使ったりして、固定しました。
ダイアルの糸も緩んでいましたので、バネの位置を変え、
正常なように調整しました。


修理前のシャーシ内部。
こちらもヒューズが90Vの位置に入れられていました。
電力事情の悪い地域だったのでしょうか?。
ホルダーに表示がありませんので、一度間違うとそのまま使う事になり、
全体に無理がかかりますので、十分注意する必要があります。
ただそれにしては真空管が劣化していないので、このラジオは余り使われていなかったか、
この形では未完成だった可能性があります。

大きなチューブラ型のケミコンが2個直列で空中配線されていますが、
ヒーター配線がシャーシ内でアースされていない事を除けば、
致命的な配線ミスは見つかりませんでした。
スピーカーへの配線がシャーシからは4本出ているのに、
スピーカーとの接続は2本だけです。
どうも途中で改造されたか、計画変更された形跡が有ります。

不思議な事にVRは大丈夫でした、これは非常に珍しいです。
ACコードは新品と交換しました。
この際ゴムブッシュも交換しておきました。



不思議な工作を発見。
最初意味が分からなかったのですが・・・。

よく考えるとベース部分の金属をアースする仕掛けでした。
最初半田を外したのですが、実際は はめ込み式で、なかなか工夫してあります。


逆にソケットの@ピンに配線がしてありません。
MT(メタル)管はこの部分が外側の金属部分に接続されていて、シールドになります。
GT管の場合 殆ど不要なのですが、6SK7ーGTや6SJ7ーGTなどのベースが金属製のものは
この@ピンをアースする必要があります。

余談1
6V6や6F6などのMT(メタル)管の場合この部分をアースしておいた方が無難です。
浮いていると思わぬ電撃を受ける事があります。
余談2
なぜミニチュアー管をmT管と書くか、これはメタル管をMTと表記する習慣もあるからです。



修理完了して調整中のラジオ。
IFTも455KHzに調整すると感度も格段と良くなりました。
各ネジの調整時、明確な反応があり、IFTも大丈夫のようでした。
目盛りあわせもよく合いました。


トラッキング調整をしました。
空芯コイルなのでコア入りのように簡単にはあわせられません。
幸いボビンの直径が大きいので、中にバーアンテナの破片を接着剤で貼り付けて見ました。
是で多少 インダクタンスが増加します。

周波数の高い方はバリコン付属のトリマで最高感度にあわせた。


修理後のシャーシ内部。


シャーシ内部の配線は最終時のものです。
実は2度ほど変更しました。
400V 15μFのコンデンサーを入力側に、出力側は既存のものを使いました。
これではハムが酷かったので、400V 15μFと100Ωをもう1段追加しました。
キャビネットに入れたのですが、やはり気になるので、100Ωを560Ωに変更しました。
これでハム音は小さくなりました。
多少 ブーンとは言いますが、真空管ラジオはこんなものです。
トランジスターラジオのようにハム音が無くなると、風情もなくなります。


到着した時 スピーカーがネジ1本でぶらぶらしていました。
清掃時はずれた1本が見つかりましたので、どうも最初から2本で固定されていたようです。
アマチュアー組み立て品には良くあることで、ネジ不足には注意が必要です。


キャビネットも前面のパネルが浮いた状態でした。
固定する金具が3個のうち、1個が紛失していました。
特殊な金具なので、仕方なく似たようなものを製作して取り付けました。

ダイアル窓にはプラスチックの透明な板が貼り付けてあったようですが、
この部分のネジがさび付いて外せず、そのままとしました。
マジックアイは暗いですが、多少光っていますので、これで良しとしました。

前回に比べ、トランスの電圧も妥当で、部品も格段と良くなっていますので、充分実用に使えるでしょう。
ただ製造後半世紀近く経過しています、使わない時はコンセントからコードを抜くなど火災予防には充分注意してご利用ください。

2005年8月16日移転

2006年6月24日移転

修理のノウハウは「真空管ラジオ・アンプ作りに挑戦!」をご覧ください。




ラジオ工房修理メモ

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