真空管ラジオの修理 自作5球スーパー

自作の5球スーパーが修理にやってきました。
まず分解しようとして ツマミが1個外れません。
ねじ山が半分折れて無くなっています。
随分苦労してツマミを外しました。


使われている真空管は
6W-C5 6D6 6Z-DH3A 6Z-P1 12Fの標準的な構成です。


IFTは463Kcです、これは相当古い時代(民間放送開始前)のものです。
バリコンは恐らく戦前の高一ラジオからの流用でしょう。
トランスもなんと小さいです。
ダイアルの糸も切れています。

なんとなく悪い予感です。

真空管を全て抜き出し、通電してみました。
これはトランスが生きているかどうかの試験です。
驚く事にB電源用のAC巻線が無負荷で350V以上あります、これは正に異常です。
6Z−P 12Fの5球スーパーではACは高くて250Vが望ましいです。

慌ててスイッチを切り調べてみると90V端子にヒューズが入れられているようです。



シャーシ内部。
どうもこのラジオはアマチュアーが組み立てたもののようです。
部品配置がなんとなく変です。
決定的な間違いを見つけました。
なんと6ZDH3Aのプレート回路のデカップリングコンデンサーに25V 50μFが取り付けてあります。


上記の拡大写真です。

コンデンサーは全て取り外す事にしました。
電源トランスはメーカー名がありません。
ヒーター電圧はごく普通ですが、B電圧が異常です。
若しかしたらフイールドコイル式のスピーカー用の電源トランスかもしれません。

それからチョークコイルが付いています。
これは幸い断線していませんでした。
ブロック型のケミコンもなく、すべてチューブラ形です。

バリコンは大型で 戦前のもののように思われますが、確証は有りません。
IFTは463Kcですから、恐らく民間放送開始前(昭和26年)のものでしょう。
コイルも発振コイルの形から見て相当古そうです。

キャビネットは専門メーカー製で、シャーシと一緒に購入したと思われます。
回路形式は民間放送開始時の真面目な普及型5球スーパーに準じたものです。
ただ部品の取り付けに決定的間違い(ケミコンの耐圧)があります。

半田付けはごく普通で、よく組み立てられていると思いました。

ただ当時の社会情勢から、何とか部品を寄せ集めた感じで、統一は取れていません。
異常に高い電圧の出るトランスなど、そのまま修理するわけに行きません。


真空管の試験はしましたが、何とか合格と言うレベルでした。
ただ整流管の12Fは荷が重いというか、実際の使用には耐えられない感じです。
正常品の半分程度のB電圧しか出ません。
これでも正常に音は出ます。

ダイアルの糸も外れていましたので、張り替えました。
ただ元々の姿が不明ですので、試行錯誤でやりました、何とかこれで使えるでしょう。

ダイアル バリコン IFT コイルの規格が夫々違うようで、ダイアル目盛りとぴったり合うようには出来ません。
大よその目安程度とお考えください。


修理後のシャーシ内部。

音量調整用のVRも想像通りガリオームになっていましたので、
新品と交換しました。
当然 軸の長さが違いますので、古いVRの軸を接続して使いました。

B電源回路は原回路に近い形で最初復元したのですが、
B電圧があまりにも高すぎるので、
出力管のG2などはチョークコイルから
さらに2KΩ 2Wの抵抗経由で供給する事にしました。

最終的にこれを3KΩ 3Wに交換しました、これでさらに電圧が落ちます。
190Vまで落としたかったのですが、無理でした。
6Z−P1は多少規格外で動作する事になります。





修理完了後の写真。




このラジオはどこまで修復すれば良いのか悩むところです。
戦後の日本が貧しい時代の貧弱な部品を寄せ集めて組み立てられていますから、トランスが一番の問題でしょう。
このラジオを組み立てる為に当時としてはサラリーマンの1月分の給料くらいは必要だったのでは無いでしょうか。
実用的に使うにはトランスを交換するか、次善の策としてドロップ用の大型抵抗を入れたいところです。
真空管も弱っているので、次々に交換が必要になる可能性もあります。
いろいろ考えると悩ましいです。

12Fはエミ減になっています。
正規の半分程度の電圧しか出ません。
真空管はとりあえず元のままで返却する事にしました、これでも音は小さいですが正常に出ます。

整流管の代用品を作りました、これは試験用に使っていただく為です。
抵抗は熱を持ちますし、感電の危険もありますので、使用は充分注意ください。
正常な12Fを使えばこの程度の音が出ます。

写真の抵抗は470Ω 4Wのものです、抵抗の熱がリード線を伝わってシリコン整流器に伝わるのを防止する為、
見かけは悪いですが、ビニール線で延長してあります。

余談
この12Fは電流の少ない並四クラスであれば充分使えます、捨てないようにお願いします。
5球スーパーでは電流が多いので、生きのいい12Fが必要です。

アンテナは必要です、左から2番目の端子に数mのビニール線を接続してください。

最後に
製造後半世紀以上経過した部品が沢山使われています、使わない時はコードをコンセントから抜くなど、火災予防には充分注意ください。



反省事項
今回このラジオは先ほど返送しました。
ふと思いついたのは「チョークインプットに改造した方が良かったのでは」と思っています。

2005年8月2日

2005年8月16日移転

2006年6月24日移転

修理のノウハウや資料については下記の書籍をご覧ください。




ラジオ工房修理メモ


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