ラジオ技術誌に首記の記事が連載されています。
連載の開始は2000年4月号ですが、2年にわたって断続的に連載されています。
ここまで良くぞと感心するのですが、実は最初この記事を読んだ時 戸惑いました。
回路図の書き方が、従来と違う”新方式”なのです。
それも同じ連載の中で、従来どおりの回路図と”新方式”の回路図が混在しているのでややこしい。
内容の充実に比べ、回路図の書き方がどうも気になります。
回路図としては動作説明も含め凄く親切だが、親切余って”蛇足”がついた感じがします、皆さんのご意見は?。
下記の図はラジオ技術2000年9月号記載のものです。
赤枠で囲った部分は ここで話題にしている部分です。
何処が違うか
@トランスの巻線に抵抗が直列に書かれている。
最初何のことかずいぶん悩んだのですが、どうも内部抵抗を書き込んであることに気づきました。
Aコイル類にも一部抵抗が書かれています。
この例は少ないです、例えば上記9月号などの回路図など。
普通は内部抵抗を記号では書きません、何故こんな書き方になったか理由が知りたいです。
どこかにこんな例があるのでしょうか?。いままで経験した回路図でこの様な内部抵抗を回路図に記載した例は知りません。
(10Ω)など、括弧して記入例はありますが、ギザギザの抵抗記号をコイルに書き込んだ例は見たことがありません。
例えば巻線に内部抵抗があることは常識ですが、これを記入すれば内部の容量分も?。
特に高周波コイルはC(容量)が重要です。
メーカーの回路図で、直流抵抗の記入された実例はAS−350修理体験記にあります。 勿論上記のような記号は有りません。 これは修理する時、抵抗値がわかれば便利だからです。 |
ラジオ工房 管理人の言い分
トランスやコイルの記号
ラジオ配線図の記号は一種の象形文字みたいなもので、時代によって変わってきますが、
記号は記号であって、独自解釈は止めて欲しいです。
ラジオ技術誌の如く老舗のラジオ雑誌の影響力は凄いです、心配しています。
トランスの直流抵抗は分かれば修理の時に有効なことはありますが、全能ではありません。
例えば2次側巻線の直流抵抗だけでは利用時の電圧降下は決まりません。
1次側や巻き方 コアなどの条件が絡んできます。
また出力トランスでは線間容量が音質に影響すると言われています。
そうであればコンデンサーも表現するのでしょうか?。
トランスの動作を表現する場合 抵抗分 容量分が必要な場合、トランスの動作説明図として採用して欲しいです。
このような場合 抵抗やコンデンサーは点線で表示している図の例があります。
DCRという表示が内部の直流抵抗を意味するようだが、
出来たら抵抗の記号を書くのではなくてDCRXXΩだけの表示にして欲しい。
高周波コイルの場合
ラジオ技術誌の連載でも例外的ですが、やはりコイルに抵抗が挿入されている図があります。
高周波コイルの場合 抵抗は低い方が良いことは理解できますが、記載してもほとんど役立ちません。
むしろコイルの場合、記載するならQや分布容量(巻線間の容量など)の方が重要です。
なおHi Fi用にわざと抵抗を挿入してQを落とすことはあります。
この場合、本当にコイルに抵抗を接続します。
この回路図のように説明も無く抵抗の図を書かれるとQダンプ用の抵抗なのか、内部の直流抵抗なのか区別がつきません。
2002年6月18日
2002年7月7日追記
2006年10月5日 実例を追記。
本件に関し著者より間接的ですが、ご意見をいただきました。
主旨は
規格では彼の云っている「不思議」は全く問題になりません!
禁止されておりませんので・・・。
それに日本は表現の自由(限度内において)がありますので・・・。
と言うことです。
小生の主旨と皆さんの意見
詳細は「ラジオ工房掲示板」か「掲示板の記録」をご覧ください。
なお当初「不思議な回路図」と見出しをつけていましたが、
著者より何が不思議と言われましたので「間違い易い回路図」に変更しました。
補足
昔昔ICが出始めた頃
上面から見たピン配置図と底面から見たピン配置図が混在した時期がありました。
経験不足の設計者が取り違えて大騒ぎになったことがあります。
真空管ラジオの回路も70年以上の歴史があります。
この間膨大な回路図が残されています。
真空管の標記にしても時代によって変化しています。
またCADによって書きやすい表示もあると思いますが、これらは別にして、
トランスのコイルに内部抵抗分を抵抗記号として書き込むのは紛らわしいと思いますが、如何。
それも回路図によって書いてあるものと無いものがあるのは、なお紛らわしいと思います。
できれば、回路図を見た時に利用者が誤解の無いように仕上げてもらえるとありがたいです。
真空管のピン配列図も現在では底面から見た方向で書かれています。
これを表現の自由と言う言葉で反対側から見た図を書かれたら、皆さん困るでしょう。
(多くの人が間違う回路図を書いて、これを表現の自由と言われるといささか)
ラジオ技術の連載記事「懐かしの真空管ラジオの製作」にコイル(高周波の)記号に直流抵抗を書き込んであります。
(2002年9月号他)
それもコイル記号にわざわざ山形の抵抗記号が書かれています。
ここまで拘るのですから何か意味が無ければ?。
しかし直流抵抗は完全に無意味ではありませんが、????です。
それは高周波コイルでは直流抵抗より、高周波抵抗の方に意味があります。
コイルの巻き方によって、高周波抵抗が異なる為です。
コイルは直流抵抗より、実効(高周波)抵抗、分布容量の方が、実際には重要です。
また実効抵抗は周波数によっても異なります。
周波数が高くなると線の表面に電流が集中、実効抵抗が高くなる表皮作用(下図参照)が起こります。
IFやMW帯でリッツ線を使うのはこの為です。
電源トランスは50か60Hzですから、巻線の直流抵抗が分かれば便利な事もあります。
しかし高周波で使うコイルの直流抵抗は?です。
少なくともラジオの回路図上にわざわざ山形の抵抗記号を重ねて書くのは無意味です。
下の表は誠文堂新光社発行 根岸氏著 「ラジオ基礎知識」107頁(昭和28年刊)からの転載。
同じ直流抵抗でも高周波抵抗が異なることを示す。
ここに書かれている高周波抵抗は800Kcで測定したと書かれています。
600 1500などで測定すればまた異なります。
参考
コイルの良さ Q
コイルの良さは Q=2πf L/Rであらわされます。
ここで言うRは抵抗ですが、単なる直流抵抗ではありません。
その周波数での実効抵抗です。
ここで言う実効抵抗は下記の合計です。
@導体の抵抗(これがいわゆる直流抵抗)
A表皮作用による抵抗の増加
この図は大浦 一行さんの「初等ラジオ教科書」より転載したものです。
詳細には同書をご覧ください。
Bシールドケースなど近接した金属体の影響による抵抗の増加。
C巻き枠 被覆に用いられた誘電体による抵抗の増加。
これは戦後コイルを自作した人にはごく初歩的なことです。
市販のコイルを利用した人は知る必要が少なく、新ラジオ技術教科書にも基礎編には詳細な記述はありません。
応用編まで丹念に読めば理解できます。
下記の公式が基礎編に記載されていますので、ここでRを直流抵抗と誤解すると間違いです。
多少罪作りな記述かもしれません、ご注意ください。
この公式は増補改定新ラジオ技術教科書基礎編46頁より。
NHKのラジオ技術教科書 基礎編には実効抵抗の詳細な説明を省略しています、詳細は応用編をお読みください。
早く著者も間違いに気づけば良いのですが。
↓
↓ (2月ほど経過して)
↓
久しぶりに連載記事(14年12月号)を本屋で立ち読みしました。
さすがにコイルから山形記号が消えています、良かったです(14年11月14日)。
おまけ
高1の「アンテナコイル」と「検波コイル」は同じ周波数に同調するので、同じインダクタンスと想像しがちですが、実際は違います。
検波コイルの方が少し単体ではインダクタンスが多いのです。
実際使われる回路で、トラッキングがとれるよう、負荷状態を含め考えてあるのです。
高周波で使うコイルは意外と複雑です。
(コイルのQも無負荷時のQと負荷Qがあります)
2002年9月10日
2002年9月12日
2002年9月15日
2002年11月14日
2002年11月25日
2006年10月5日 文章だけでは説明が解り難いとの助言がありましたので、雑誌の回路図を転載、これに対するコメントを追記しました。
この図の転載は表現方法の説明のための引用です。
なお回路図そのものに誤植があり、このまま製作しても動作しません、本題と異なるので詳細な指摘は割愛します、この回路図を見て自作する方はご注意ください。
2006年10月14日
皆さんの意見は ラジオ工房掲示板
みんなでつくる正誤表
2006年8月5日よりカウント
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