トリオ 9R−59


9R−59の修理 その6(2020年3月23日)

いただいた 9R−59の修理をはじめました。
ダイアルのガラスが消えています、この機種の持病らしい。
ラジオは沢山修理しましたが ダイアル表示が消えやすいものは珍しいです。
多分 製造経験がない方が インクの材質を決めたのかも。



この機種はQマルチという 怪しげな機能が組み込まれています。
この当時のアマチュアー用の通信機での安定度では このような方法で選択度のピークを高めてもあまり有効では無いと思われる。
安定度を無視しても このような方法で選択度を高めてありがたいのはCW受信で、
そのCW受信にはBFOが使えないという 理解しがたい設計になっている。
当時は双3極管が高額だったので使えなかったとは思えるが なんとも困った機能です。
それと悪いことに この部分はサブシャーシになっていて 保守が困難なのです。
おまけに この部分壊れやすいのです。

なお ネジが4本中3本有りません(画像参照)、 多分発振しないので分解しようとしたのでしょう。



Qマルチのシャーシが ネジ3本有りません、おそらく これも修理が必要でしょう。
真空管は 6BA6 6BE6 6AV6は正常でした。
整流管は 正規に電圧が出るので大丈夫のようです。
なお 整流管に高性能なものを使ってはいけません。
互換性が有ると信じて5AR4などは使わないように、B電圧が高くなり悪影響があります。



BFO の発振調整用のミゼットバリコンは壊れかけています。
バンド切替スイッチは接触不良が酷いです。



調査してみると ブロックケミコンのリークが酷いです、それと出力管への結合コンデンサー(オイルコン)のリークも尋常ではありません。
この部分 交換して通電してみました。
この機種ではブロックケミコンの不良が多い感じがします。
どうもアマチュアーが組み立てたものらしく 半田付けは全体的に うまくありません。

サブシャーシ(BFO)部分の修理

組み込んだままでは測定さえできませんので、取り外し さらに 仮配線をして 受信機の裏側で動作試験をします。
これが意外と大変です。

  

サブシャーシの裏側





配線は間違いありませんでした。
ただ マイカコンデンサーを取り外すと 2個とも約1000PFでした。
上記に画像を示しますが、色表示は同じようなので 間違って組み込んだ可能性もあります。
さらに 劣化もしているので1000PFと3300PF(手持ちの関係で)に交換、
さらに結合コンデンサー500PFも劣化が酷いので交換しました。
これで 正常に発振するようになりました。
この時代のマイカコンデンサーは意外と信頼性が低いようです。

修理済みの画像です。



仮配線して 動作試験

嫌らしいのは 配線しないと動作試験もできません。
下記画像のように配線して 動作試験を行います。




BFOが動作するようになったので、バンド切替SWの接点磨きです。
接点部分に接点復活剤をはけで塗って 回転動作させます。
ただし ベーク部分特にB電圧の加わる部分には塗ってはいけません。
通電して 黒焦げになり 使えなくなります。

製作マニュアルに従って 調整をしました。
ABCD各バンド 低いほうと高い方それぞれで反応を確かめて調整してください。
(必ずピークを確認すること)
もしピークが確認できない場合 そのバンドの接点不良か 部品の常数不良です。

ABCバンドは 高感度ですが、Dバンドは実用的とは言えません。
なお この種の真空管受信機は選択度が非常に良い割には安定度が不足です。
通電後 ダイアルを操作しないと消えてしまうことが有ります(それだけ動く)。





9R−59の修理 その5(2017年8月16日)

到着時のシャーシ内の様子



まず 製作後数十年手入れされていないことがわかりました。
ブロックケミコンが端子から電解液を噴出しています。
漏洩電流の多いチューブラ型コンデンサーもそのままです。
ちなみにケミコンテスターで電圧を加えて出力管のG1電圧を測定してみると物凄い電圧です。
これで通電したとしたら 大変なことです。

ブロックケミコンの様子。



早速 ケミコンを交換しました。

オリジナルは40 40μFが使われていましたが、400V 15μFX2と 200V 100μFを使うことにしました。
なお整流管が傍熱管なので200Vが使えるので、5Y3の時は耐圧350Vのものを使ってください。



これで 電圧を測定してみると整流管のカソードの位置で245Vです。
設計者の回路図ではこの部分が205Vになっています。
ちなみに平滑回路を出たところでは115Vです(添付回路図参照ください)。
本来115VであるべきB電圧が実際では175Vもあるのです。

原因は整流管です。

5Y3か5CG4を使えと記載されているのに5AR4が使われているのです。

ヒーター電流も1.9Aで確かに最大整流電流は大きいので、5Y3の代わりに使えそうですが、
実はこれが落とし穴なのです。
整流効率が格段に高く、5Y3の代わりに5AR4をさすとB電圧が20%近く高くなるのです。
テスターで測定してみなければ判りません、受信機全体に無理が加わります。



ちなみに 新品の5Y3をさして、動作させると216Vでした。








B電圧が150V弱になったので、ここで妥協することにしました。
設計値が115Vなので少々高いのですが、175Vに比べれば大幅に下がったので良しとしました。

6BA6などのPやG2にほぼそのまま加わるので、出来るだけ低くしたいのですが、下げると感度が低くなりそうだし、
ここまで175Vで長年使っているので、妥協です。
本来はせめて120Vくらいにはしたいところです。

理想的にはプレート電圧は175Vのままで、G2電圧を100Vくらいに下げた方が良いと思うのですが、
大改造になるので諦めました。

なぜこのようなプレート電圧とG2電圧を同じように供給する仕掛けにしたのか、不思議です。
抵抗の節約にはなると設計者の高田さんの著書には記載されていますが、
電気的にはプレート電圧が高いほうが(G2が低い)性能的には良いはずです。
何故あえてこのような変則的な設計にしたのか疑問です。
勿論IFTの共振インピーダンスが低く設計されているので、これでも悪影響は少ないという考えはあるかも。

このほか結合コンデンサーや AC回路の雑音防止コンデンサーなどリークが激しいものがあるので、
これらは交換しました。

ここまで済むと次は調整です。
IFを455KHzに合わせるのですが、IFT3本の内 最初のIFTの下段(プレート回路)側のコアをいじっても最高感度になりません。
コアを抜く方向に回せば 感度は良くなるのですが、ピークが確認できません。



IFTのシールドを外したところです。
同調コンデンサーとして300PFが使われています。
問題は下側のコイルです。







まず270PFのコンデンサーに交換して試験してみました(画像参照)。
ところが駄目でした、まだ容量が多いようです。
次に240PFに交換して 調整しました、これでOKでした。
シールドケースを被せて試験ですから、いやはや手間がかかります。
こうして調整すると感度は結果的に素晴らしくなります。

なお 原因ですが良くわかりません、ただコイルの間隔が狭くなりインダクタンスが結果的に増加したためではと思われます。
このコイルは時々重力で落下することがあるのです。





全体的に調整を済ませると非常に高感度になりました。

9R−59の修理 その2(2012年1月18日)

久しぶりに9R−59の修理をしました。
昔 酷い目に遭っているので心配したのですが、最初に組み立てた方の半田つけが問題なかったので良かったです。
慎重に調整して完成です。
ただ 真空管は6BA6が1本劣化していて交換しました。
さらに6AV6が2本とも所謂 手抜き真空管でした。
2極管のプレートにシールドが無いタイプのものが使われていましたが、悪影響は無かったのでそのままとしました。
ただハムが気になるという話もあるので、電源に1段フイルターを付加しました。
どちらにしても今回はたまたま恵まれただけで、どこに落とし穴があるかもしれません。
キットの組み立て品は 要注意です



ハムバンドはバンドスプレッドされます、9R−4に比べ バリコンのカーブが工夫されているので、直読でます。
なかなか素晴らしいです。
バリコンは松下電器のバリコンが使われています。

なお メインバリコンの周波数はバンドスプレッド目盛の右端に指針を置いた状態で校正します。
7MHzのアマチュア―局を受信しました、SSBも復調できます。
ダイアルの糸かけの位置もずれていましたので修正しました。
メインダイアルではほぼ正確に周波数が読めます。

サブダイアルで周波数を直読する時はメインバリコンの指針を少し 右に方向にずらす必要があります。
冷静に考えれば当たり前のことですが、現実の問題として現在では多少違和感を覚えるかもしれません。
7MHzを直読する時、まずサブダイアルを7MHzに合わせ、次に メイン目盛の下側のB1の位置(7MHzより少し右側)で、
7MHzのマーカーが受信できるようにすれば、7MHz〜7.17MHzの間が直読できます。
(メインダイアルを合わせる前に サブダイアルを必ず0位置に合わせること)

メインダイアル

それぞれB1 B2の位置で7MHzのマーカーを確認する。

サブダイアル
サブダイアルで周波数を読む時は必ず、まず0位置に合わせた後、メインダイアルを微調整すること。


なおAMもフイルター(IFT)の関係上 音質は良くありません。
SSBの復調は FUNCTIONスイッチをQ-MULTにし、SELECTIVILTYをCW SSBにする。
BFO FREQENCYツマミで微調整する。

ANLは6AV6の2極管部でピークをカットするだけですから、大きな期待はしないように。

シャーシ内部の様子。



最初の状態は下記のごとくでした、電源に1段フイルター回路を追加しました。


9R−59の修理 その1

9R−59が修理にやってきました。
非常に綺麗です、オークションで完動品として購入したそうです。
でもなんとなく様子がおかしいと言う事です。


まず出力管のグリット電圧を測定してみました。
250Vレンジで80Vくらい有ります。
この様な例は非常に珍しいです。
尤も真空管を動作させず、ケミコンテスターでの試験ですから、
結合コンデンサーに加えた電圧が3倍くらいになっています。
実使用状態と同じ電圧に換算すると30Vくらいでしょう。
(実際はグリット電流が流れますので、こんなに酷く+にはならない)
持ち主が音がおかしいと気がついて良かったです。
このまま使うと真空管が駄目になるか、トランスが焼けたでしょう。



スプレッドバリコンには綿埃がついています。
このままだとQがおちるので清掃しました。





Sメーターがなんとなく変だと思ったら、セロテープがはがれていました。
風化してしまったようです。



9R−59回路図



結合コンデンサー類を交換後、清掃し灯を入れてみました。
受信は出来ますが、音がまだおかしいです。
IFゲインを絞らないと受信できません。
AVC回路ののコンデンサーを交換しても駄目です、真空管を調べてゆくとRF増幅管に6BZ6が使われています。
手持ちの6BA6に交換し、正常になりました。

ここでIFの調整とダイアルの目盛り合わせ、それにトラッキング調整をしました。
ラジオ工房の掲示板では、なかなか皆さん苦労しているようですが、幸いにもこの機械は素直に調整できました。
トラッキング調整で、ピークが確認できるのは非常に気持ちよいです。

ただピストントリマは酷いところでは10回転近く回さないと、合いませんでした。
よく物の本に調整ネジは沢山回すなと書いてありますが、これは新品時の話で、中古品には当てはまりません。
前の持ち主が何をしたか不明ですので、冷静に考えれば理解いただけると思います。

RF付のスーパーの場合、トラッキングは慎重にとらないと、感度の悪い受信機が出来上がります。
特にC DバンドのようにIFの455KHzと受信周波数が離れているバンドはイメージに充分注意してください。
これを間違うとバンドの一部で局部発振が止まり、受信できない周波数が出ます。



アンテナトリマについて
この機種はアンテナトリマがついています。
これはアンテナを接続した場合、使用するアンテナによって同調がずれるためです。
トラッキングを正確にあわせる為にトリマがついているのです。

スーパーの受信周波数は局発で決まりますが、RF無しのストレート受信機だと検波回路の同調周波数によります。
アンテナを交換して、受信してみるとこの現象は良くわかります。




使われているバリコン。
アルプスのバリコンと信じ込んでいたのですが、
開けて吃驚ナショナルのバリコンでした。

ダイアル目盛りもリニアーでなかなか使いやすいです。
9R−4のイメージとは全然違います、9R−59を見直しました。


動作試験中の9R−59。

整流管が見えますが、これは使われていません。
ダイオード整流になっています。


修理前のシャーシ内。

まず見たときに心配したのは平滑抵抗が空中配線だったこと。



修理後のシャーシ内部。
平滑用の抵抗がぶらぶらでしたので、錫メッキ線を耐熱チューブで被い、巻きつけてラグ端子に半田付けしました。
BFOの発振が強すぎて、AVCが飽和してしまいます。
どうも配線や組み立てかたを再検討する必要があります。
とりあえず、B電源回路にバイパスコンデンサーを入れてみました。
多少効いたようです。
それでもSSBの受信は調整が難しいです。

送受信切替回路 ANL回路など前の持ち主独自の改造がしてあります。
依頼主もAM受信が主目的とのことで、費用をかけて、分解、再組み立てするほどの必要性はなさそうです。
AM(放送波)が正常に受信できるところで、切り上げることにしました。


調整してみると、なかなか高感度です。
9R−59Dの時感じた周波数の高い部分の感度低下も、そんなに感じません、なかなか素晴らしいです。
ダイアルの目盛りも想像以上に良く合いました。

ただ音質はお世辞にも良いとは言えません、これは選択度重視の通信型受信機ですから当然です。

この受信機の組み立て方は上手とはとても言えません、半田付けも汚いです。。
でも外観は非常に綺麗ですし、トラッキングも取れましたので、基本部分の性能は大丈夫でした、良かったと思います。




その後の状況 

うまく受信できないと9R−59が九州から帰ってきました。
早速受信してみると、経験したことの無い現象です。

真空管の接触不良と思ったのですが、抜き差ししても変化ありません。
とにかくAFのゲインがあげられないのです、猛烈な雑音です、これでは修理する前より状態は悪いです。
それとなんとなく発振気味です。

真空管を抜いてゆくと
@IF段の2個はともに雑音なしになる。→ これは悪くないと言う意味。
ARFの6BA6を抜くと雑音は小さくなるが、消えない。
B混合段の6BE6を抜くと静かになる。
COSC段の6BE6を抜いても大きな変化は無い。

どうも発振部分がおかしいと見当をつけて調べてゆくと 発振管のカソード回路の200Ωの抵抗がてんぷら状態であることが判りました。


写真を撮るため少し離したが、実際は外れていなかった。





抵抗の先端を見ると緑青が吹き出ていたので、どうも最初からてんぷら状態だったらしい。
これは半田付けした時 半田合金にならず、空洞にリード線が刺さった状態だったと思われます。
勿論、完全にてんぷらだったわけでは無く、ごく一部は半田合金になっていたと考えたほうが合理的です。
少なくとも四半世紀は大丈夫だったのですから。

修理完了後 九州まで返送する内に、半田付け時 完全に接続されていなかったので
空洞部分が振動で拡大し、絶縁状態になったようだ。



てんぷら半田
中身(リード線)と衣(半田)が完全に接着せず、ほんの僅か隙間が出来る半田付け。
稀にメーカー製のBCLラジオなどでもあるが、殆どは素人組み立て品に多い。
新品時は大丈夫だが、時間経過とともに接触不良になる。
今回の例は一部分は接着していたが、接着部分が少なく、輸送の振動で不良になったと思われる。


この部分は狭くて半田こてが入らないので、
ロータリースイッチ側にリード線を接続、抵抗はソケット側に入れて接続。

これで動作試験OKとなった。


ここで何故天麩羅半田になったかを考えてみました。

動作するようになったので、冷静に考えてみると、この部分はメーカー出荷時リード線が半田付けされているはずです。
と言うのはコイルパックを取り外さないと半田付けが凄くやりにくいのです。
下手な半田付けといい、抵抗が接続されているのは変です。
どうも最初に組み立てた方が安定化のためか、抵抗を挿入する改造をしたようです。

回路図を調べてみるとこの部分に抵抗はありません。
抵抗も別のメーカーの物がつけられています。

原回路に戻すことにしました。


また抵抗を外し、リード線に変更しました。
黄色の矢印の部分が半田付け部分です。

随分無理をして半田付けをしましたので、
これで完全につけばよいのですが、多少心配ではあります。
素人(自分もそうです)が組み立てた無線機は、半田不良が多いです。
半田付けの下手なラジオの修理は充分注意する必要が有ることを、改めて痛感しました。



2度あることは3度有る。

今度は抵抗の断線で、また戻ってきました。

危険と思って、追加したサポーターですが、結果的には役立たなかったようです。


破断した様子。




仕方なく4Wの抵抗4本と交換しました。

後は半田付けの不良が心配です。

これで無事動作すればよいのですが。

9R−59のようにアマチュアー組み立ての受信機は
最初のオーナーの技術力により、修理はなかなか手強いです。
自分で修理できる方以外てを出さない方が無難です。



その3


2004年8月8日

2004年8月22日 半田不良の修理。
2004年9月22日 追加 修正
2012年1月18日:11,975 その2を追加。
2017年8月18日:28,414 その5を追加。
2020年3月24日:その6を追加 32,949

下記書籍を参考にしてください。

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