真空管ラジオの修理 東芝(マツダ)製 7XA-20 ラジオ修理体験記

アンプ製作の経験者が初めてラジオの修理に挑戦したそうです。
RF付きのスーパーはベテランでも苦労しますので、率直に言って選択間違いと思います。
しかし 球アンプの経験者だけあって配線にミスはありません、部品の不良で苦労したようです。
古いラジオは見かけは良品でも実は故障ということがあるので、悩ましいところです。
本体(シャーシ)と真空管のみ送っていただきました。

依頼主の話
■購入時の状態
電源が入り高い周波数(1440KHz)は入ったのですがそれ以下は全く受信出来ませんでした。
バリコンのトリマコンデンサのマイカが1枚脱落気味でした。
パイロットランプ4ヶ全て断線。
マジックアイは薄く光っていますが動作はしないです。
各部のB電圧を測ったところは異常は無いようです。(6AR5で250V程度、6BD6で200V程度)
1段目と3段目の6BD6を交換したところ全く受信しなくなりました。
とにかく真空管ラジオの構造が解らなく色々ネット等で調べながら弄ってしまいました。

■使用真空管
6BD6 6BE6 6BD6 6AV6 6AR5 5MK9 6E5
只今新品の6BD6を2ヶ 6BE6を1ヶ調達中

■手入れした箇所
シャーシ上部の清掃(アルコール吹付けしコンプレッサーにてエアパージ)
シャーシ内部の清掃(アルコール吹付けしコンプレッサーにてエアパージ)
ペーパーコンデンサ9個 .01×5 .05×4は全てフィルムタイプへ交換(1個パンク)
チューブラ電解コンデンサ1個交換
ボリュームはガリが酷かったため分解して内部洗浄後に接点復活剤を塗布し全くガリが無くなりました。
メインスイッチ付きトーン回路ロータリースイッチも分解洗浄、接点復活剤を塗布
硬化したリード線の一部を交換
IFTトリマーが欠けたためシャーシより外し洗浄してヤスリにて溝を再生
恥ずかしながらバッディングコイル、IFT、トリマコンデンサーは弄ってしまいました。

キャビネットからの脱着しやすくするためスピーカーコード及びパイロットランプコードにコネクターを追加
キャビネットを再塗装中

■現在の状態
購入時と変わらず高い周波数(1440KHz)のみ受信出来ます。

通電し確認したところ バリコンを動かすとガリガリ雑音が出ます。
調べたところ3連バリコンの一番後ろ側 (6BD6と6BE6の間のRF同調回路)のバリコンの羽根が変形していました。
バリコンを交換するわけにはゆかないので、丹念に羽根を修しました、これが一番時間がかかった修理でした。
それとこの回路のトリマのマイカが破片状になっていました。
調整時使えないことは無いとわかりましたが、輸送のショックでショートする可能性もあり、手持ちのTR取り付け用マイカを工作して取り替えました。
これで一応正常に受信できるようになりました。
つぎに
IFTの調整をしましたが、依頼主がやってあったので、殆ど狂ってはいませんでした。
ただピークの高さが低いので、IFTのコンデンサーが劣化している可能性が有ります。



本体部分のみ送付いただきましたので、ダイアアル目盛りを紙に書いて、シャーシに貼り付け、目盛り合わせをします。
調整時 受信周波数範囲が 心持違うので、怪しんでパディングコンデンサーの試験をしました。
Qメーターの針が殆ど振れません、Qが極端に落ちているようです。
回路図がありませんので、総合的に判断して、最適と推定される容量を選びました。
一個では丁度良い数値になりませんので、2個組み合わせて作成しました。

これでダイアルの目盛りと一致するようになりました。
目盛りが合ったところで、トラッキング調整をします。
RF付(3連バリコン使用)のスーパーは真面目に調整する必要があります。
これが不真面目だと、RF同調回路が減衰器になり 感度が悪くなります。


シャーシ内部。
パディングコンデンサー(コイルの左側のマイカ 2個)のみ交換しました。
残りは 全て依頼主の配線です。
さすがアンプの経験者 見事なが配線です。



羽根の曲がりを修正したバリコン。
全部の羽根があちこち接触していたので、修正は大変でした。


トリマの絶縁マイカも破損していました。


写真のようなTR用マイカの手持ちがありましたので、カットして、トリマに組み込みました。

TO−3タイプのTR用(写真上)が大きさで適当でした。


交換したパディングコンデンサー 
容量値が読めませんでした。

写真下側の破片はマイカの残骸。

バリコンの短絡試験と修正法
コイルへの配線を外して、テスターを抵抗計にして、ローターとステーターに接続、バリコンを回転させれば簡単にショートしている事が判ります。
バリコンの羽根のショートは1箇所ではありませんので、全部の羽根、全回転角にわたって丹念に修正して回復させます。
接触箇所は羽根を光源のほうに向け、透かしてみるとわかり易いです。
あまり酷い変形の場合 修復できません、交換したほうがはるかに楽です。



この写真は依頼主の撮影です。

 ラジオの修理を自分でやる方は このホームページの他真空管ラジオ・アンプ作りに挑戦!、や真空管式スーパーラジオ徹底ガイドも参考にしてください。
不明な点はラジオ工房掲示板に実名で投稿ください、修理ノウハウの提供は無償です。
初歩的なことでも結構です、ただし他人が解るように書いてください(神様や占い師にするような経緯を省略した質問は返事不能です)。

当方に依頼される方はラジオ修理工房をご覧ください、こちらは有償です。
 


2007年3月4日
2007年3月7日





ラジオ工房修理メモ

修理のノウハウは「真空管ラジオ・アンプ作りに挑戦!」をご覧ください。

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