真空管ラジオの修理 ナショナル PS‐53 GT管スーパーの修復

ナショナルのGT管レススーパーの1号機と思われるものです。
(レスと云っても単巻きの小型トランスがついています)
昭和27〜28年頃の製品と思われます。
真空管の構成は
12SA7GT 12SK7GT 12SQ7GT 35L6GT 35Z5GT
プレート電圧を上げるために小型のトランスがついている。
このトランスでPLも点灯する仕組み。
PLが断線していたので交換した6.3V球では不思議なことに暗い。
電圧を測定すると2.5Vしかない。
2.5V球に交換して終了。
でも何故今更2.5V?。



向って左側が電源トランス、右側がアウトプットトランス。


修理時 壊さぬように厚紙で保護する。
この様にしておかぬとアンテナのコアを割る恐れがある。

例によって 整流管が断線。
代わりに35W4を使った代用真空管。
GT管を壊してベースを使う。
古いトランスレスラジオを購入する時、ACコードが正常に付いていると、
逆説的ですが、真空管(整流管が多い)が断線している可能性があります。
これは誰でも一度電気を通してみたくなるためです。
昭和10〜20年代のものは特に危険度が高い。
(ST管 GT管のトランスレスは要注意)

出来るだけ既存の部品を生かすべく、確認してオリジナルの部品は残した。
ただ配線材がぼろぼろで、かえって時間がかかってしまった。
快適に動作すると喜んだまでは良かったが時間がたつと音が小さくなってきた。
数分以内に音が殆ど出なくなるようになった。
偶々IFの調整中だったので、IFTの故障かと分解したが問題なし。
再度真空管試験機で試験するも問題ない、ガステストもOK。
1夜置いて、再度挑戦。
どう考えても真空管らしいので、予備の真空管を捜す。
やっとの思いで12SK7が見つかったので、差し替えてみると快適に動作。
やれやれ。

不良だった12SK7GT。
真空管試験機ではOKだった12SK7GTだが、
実際のラジオでは数分間しか使えなかった。
非常に珍しい故障。


GMが正規にあって、ガステストもOKの真空管が何故駄目なのかは原因不明。
想像するに少し暖まってくるとグリット電流が流れるせいでは無いかと思われる。
グリット エミッションといわれる現象。
AVC電圧を測定してみると、動作時-3.6Vだったものが、段々上昇し0V近くになると動作停止となる。
12SA7GTと共通なので、あるいは12SA7も共犯なのかもしれない。
悪いことに回路はサボってカソードバイアスもかけてない。
改まって真空管を見ると12SK7ーGT/Mとある。
この真空管は松下が独自技術で作っていた時代の物らしい。
規格も正規のものと多少異なるようだ。
そのため /Mとなっている。
あるいは製造上の工夫が何か足りないものがあったのか。
12SQ7GTも松下独自規格の12ZDH3AをGTにしたような単2極の物がついている。

そう言って見ると松下はその後フイリップスと技術提携して松下電子工業を設立、真空管の製造を大々的にはじめた。
実感として松下独自で作っていた時代の真空管はお世辞にもT流品とは言いがたいところがあったように思う。

12SK7GTの代わりに12SK7が差してある。
35Z5GTは 35W4で作った代用品。



余談@
このラジオの修理に取り掛かる前に真空管試験機(TV−10)で試験しました。
35Z5が断線していましたが、他の真空管は全てOKでした。
ただ実際ラジオで動作させると、最初は大丈夫なのですが、段々音が小さくなります。
現象から真空管の不良と推定しました。
ただレス用のGT管は在庫は有るのですが、まず使わないので、行方不明状態です。
断線の35Z5はどうしようも無いので、35W4を使った代用品を作りました。
他の真空管はそのまま使う事にしました、代わりがすぐ見つからないからです。
これが苦労の始まりでした。
原因は上記したようにグリット電流によるものと思われますが、
42などの出力管ならともかく、IF増幅管でのグリット電流障害は珍しい。
(現時点で生き残っているのが珍しいと言う意味です、昔は良く有った現象らしい。)
余談A
12SK7GTと12SK7はどこが違うか、これは12SK7がメタル管を意味します。
基本的には差し替えて使えるようになっている。
尤も面倒なので、GT(ガラス チューブ)を省略することが多い。
一般にまずメタル管が出来て、これをガラスにしたG管(ダルマ)が出来ました。
次にGT管が出来ました。
電極間容量は多少違うにしろ、メタルとGT管では電気的に互換性があるように作られています。
但し12SATGTと12SA7はピン接続が違うので、注意。
Bフローティング アース
比較的古いトランスレスはフローティング アースを使っています。
これは安全性が高いのですが、修理する時はとんでもないところにアース母線が張られているで注意が必要。
間違いの無いように修理してください。
mT管のトランスレスで比較的新しいものは、省略してシャーシが直接電灯線に接続されています。
こちらは修理は易しいのですが、安全性では劣ります。




         ナショナル PS‐53 卓上受信機 回路図

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2001年12月15日

2005年8月16日移転

2006年6月24日移転





ラジオ工房修理メモ

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