真空管ラジオの修理 ナショナルNS−200 5球スーパー受信機の修理

偶然の機会に5球スーパーの修理を引き受けました。


真空管は6WC5 6D6 6ZDH3A 42 12Fです。
民間放送開始間もない頃の5球スーパーラジオ。
製造後50年弱経過していると思われます。

骨董屋さんから購入して1月間は受信できたが、突然音が出なくなったとのこと。
中を開けてびっくり、電源トランスの上のヒューズホルダーに3本ヒューズが並んでいます。
全て切れていましたが、こんなことは結構あります。
昭和20年代は電源事情が悪かったので、電圧切替をヒューズの差し替えでやっていたため、
ホルダーは3個でも1つしかヒューズは入れてはいけないのです。
(放送局123号受信機はレスの為、両側にヒューズが入ります。)


シャーシの中は、ほぼ半世紀前のままです。
パイロットランプへのリード線はぼろぼろになっていて、
途中で別の線がつけてあります。
半田つけはしてありませんが、器用な骨董屋さんの仕事です。


早速ケミコンテスターで試験をしました。
(ケミコンテスターはラジオ工房のラジオ修理メモをご覧下さい)
ケミコンは何とか使えそうでした。
これは1月間ラジオを聞いていたので、
再化成されて少し良くなった可能性もあります。

さて出力管42のG1の電圧を測るとなんと+15Vあります。
(テスターは30Vレンジ、入力抵抗10MΩ)
42のバイアスは-15Vですから単純計算すると42が0バイアスで動作していることになります。
実際はカソード抵抗を流れる電流が増加すると、
バイアスが深くなりますので適当なところで落ち着きます。
でも42に過大電流が流れるのは間違いありません。
これが原因でヒューズが切れたのでしょう。
規格どおりのヒューズが入っていて幸せでした。
いいかげんなヒューズが入れてあれば、42 12Fなどの高価な真空管、更に電源トランスなど現在入手が難しい部品がヒューズの変わりに駄目になるところでした。
でも心なしか12Fが少し弱っているようでした。

一般に通電して音が出れば、ラジオは鳴るといって売るのが多いようです。
骨董屋さんのラジオは飾りにするには良いのですが、鳴ると言って買っても、中身を確認した方が無難です。
この場合のように出力管のG1の結合コンデンサーとケミコンの絶縁だけは確認してください。

ナショナルのラジオは不思議なことにパイロットランプのリード線が殆どの場合ぼろぼろになっている。
このままだと危険なので交換した。




緑と黄色のより線。
この線が無事なラジオは見たことが無い。

ペーパーコンデンサーは6D6のカソードの0.1μFを除いて全て交換した。
抵抗は何とか使えそうなので、そのままとした。


ダイアルの糸は代用品を使ってあった。
骨董屋さんが器用に交換したとの事。
ここまで出来る骨董屋さんは凄いと思います、
さらに電気的に確認してもらえると良いのですが。

真空管は12Fが弱っていたが6D6を除いて使えることが判った。
6D6はエミ減が激しく、GMが新品の数分の1しかないので、新品と交換した。
(左下の箱、アメリカ軍の軍規格6D6)


最後に中間周波数の調整、目盛りあわせ、トラッキング調整をして完成。

アウトプットトランスは幸いにも断線を免れたが、何時まで持つかは不明。

骨董屋さんが鳴ると言って売ったラジオをそのまま使った場合、
どうなるか興味があったので修理を引き受けたが、
良い経験になりました。

試験して正常なコンデンサーの危険防止の為に出来るだけ新品に交換しておきました。
でもトランス、スイッチなどは半世紀前の部品です。
不在時はコンセントから、コードを抜くなど火災予防に注意しましょう。

 ラジオの修理を自分でやる方は このホームページの他真空管ラジオ・アンプ作りに挑戦!、や真空管式スーパーラジオ徹底ガイドも参考にしてください。
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当方に依頼される方はラジオ修理工房をご覧ください、こちらは有償です。
 


2001年10月9日

2005年8月16日移転

2006年6月24日移転





ラジオ工房修理メモ


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