真空管ラジオの修理 ナショナル5球スーパーの残骸利用のラジオ

不思議なラジオが修理にやってきました。
キャビネットメーカーの箱に、中はナショナルのラジオが収納されています。
組み込み方は素晴しく器用です。
どうも戦後直ぐ(昭和26年頃)の5球スーパーの箱が壊れたので、昭和30年代になって、新しいキャビネットに入れ替えようとしたものらしい。
その為か外観は奇麗です、中身の様子から、修理途中で諦めて、このラジオは実際には使われていない可能性が高いです。
このラジオは修理代がかかるので、止めた方が無難と思いましたが、依頼主から強いご希望があり、修理(作り直しか?)することにしました。

修理と言うより、部品の良否の判断、オリジナル部品か否か、別物トランスを利用する上での回路上の工夫、部品の修理復元の方が大変でした。
最後の修理そのものは他のものに較べ大差ありません。





そのままでは組み込めないので、シャーシの下側に下駄をはかせた構造になっています。
非常に器用な工作です。


IFTから6D6のグリッドへ行くリード線が異常に長い。
常識的にこのような配線はしないのですが?。
IFTの下側の配線は外した形跡はありません、しかしこのリード線は
IFTを分解しないと半田付けできないはずなのですが??。
バリコンのアース線も外れています。
ダイアルの糸掛けもやりなおしたようすです。
現象から推定すると、50年位前 組み込み作業をしたが諦めた物らしい。



シャーシ内部  →云うこと無し。

配線材料がぼろぼろになっている。
IFTも非常に珍しいリード線タイプで、このリード線も同じ状態。
さらに初段のIFTの2次側が断線しているようだ。

ケミコンはリード線タイプ これも当然のごとく不良。

トランスもオリジナルではない、適当に選定し交換しようとしたらしい。
配線が全て外してあるので、修理途中で投げ出したもののようだ。
悩ましいのはB電圧が無負荷で300V以上あること。
どうも電磁型スピーカー用のトランスを流用したらしい。
その他このトランスにはエナメル線の切れ端みたいなものが残っているが理由は不明。
若しかしたら2.5V巻線の中点タップか?。
なお長い2本よりにエナメル線は2.5V端子。

VRの試験はしていないが、まず駄目と思われる、延長軸を半田付けしてあり、
取り外しに苦労しそう。


スピーカーと出力トランスの不良(故障と修理による破壊)


出力トランスの断線と思ったが、それ以外にボイスコイルへのリード線が外れている。
前回修理した時、トランスの取り付けをネジ1本でやったことが原因らしい。 

スピーカーのボイスコイルのリード線が外れている。
これは修理しても耐久性が心配なので、本体ごと交換する事にした。
アンテナコイルの修理

アンテナコイルが断線している。
ハネカム巻きの部分なので、巻きなおしは不可能に近い。


アンテナコイルはハイインピーダンスタイプでハネカム巻きになっている。
コイルはネジではなくて鳩目方式、ドリルを使って取り外した。
1層分くらい巻きほぐすと数箇所断線痕が見つかった。
腐食したというより、乱暴な取り扱いで断線した様子。
多少問題もあるが、問題が起これば別途対応するとして、
半田付けして修理はお終いとした。
取り付けはネジで固定した。

なお厳密な意味でこの修理方法は問題があります。
ハイインピーダンスのアンテナコイルは一次側のナチュラル(共振周波数)を放送帯域の下側に追い出す原理になっています。
巻き数が少ないと、接続するアンテナの長さで、ナチュラルが放送帯域に入り込む可能性があります。
この場合、アンテナの長さを調整するか、A E端子間に少容量のコンデンサーを接続するかして対応ください。

検波段のIFTの修理

検波用IFTのリード線。
ナショナルのラジオに特有のリード線ぼろぼろ。



分解したところ。
このIFTはシャーシに片側の脚が半田付けしてあった。
沢山5球スーパーを修理したが半田付けは初めて。



同調回路は一次側のみ。
コンデンサーもぼろぼろで、Qも落ちているので交換した。
容量は200PFだった。
コイルのQも凄く低いがこちらはどうしようもない。
一次側のコイルの上に2次側のコイルが重ね巻きされている。
リードのビニール線を半田付けして、終了。
この修理は測定器(QメーターやDIPメーター)の準備と経験が必要です。

変換段IFTの修理

初(変換)段のIFT。
こちらは2次側が断線していた。
6D6のグリットキャップに行く線を半田付けした時、切ったらしい。
どうもこのラジオは素人が乱暴な修理をしたようです。
最近の修理ではなく、数十年前の修理時と思われます。
リード線にはテープを貼り、P B Fなどの印をつけて分解します。


リード線の半田付けと、コイルの補修。
シールドケースを外した状態で、上下のコイルの共振周波数の確認。
夫々、400KHz強のところでディップ点があり、合格としました。
なおシールドケースに入れるとコイルのインダクタンスが下がり、
455KHzで同調するようになります。
裸の時のインダクタンスは参考値と考えてください、
ケースとコイルの相互関係で上下します。



修理完了した、コイルとIFT。
ラジオの修理でここまでやったのは初めてです。
それにしても酷い壊し方でした。

IFTのみぞの刻みなおし

IFTのネジの溝が半分欠けていましたので、
のこぎりで溝を刻みました。


調整中のラジオ。
IFTの同調は狂いが激しかったですが、調整により回復しました。
コイルが断線していたり、コンデンサーを交換したのでやむをえない事です。
なお真空管は電気的には大丈夫でしたが、ベースやトップのグリット部分がぐらぐらしていましたので、
接着材で固定して修理しました。

アンテナを接続すると快適に受信するようになりました。

VRも当然駄目ですから、これも交換しました。
ただPUへの切替SWは入手の関係で諦めました。

なおNHK1を受信しながらトラッキング調整をしましたが、低い方は上手く取れていました。
周波数の高い方はトリマで調整。


修理完了時のシャーシ内部です。

オリジナルと違うトランス(300V出力)がつけられていましたので、
平滑回路は普通のπ型ではなく、2段重ねにしました。
この様にしないと、B電圧が高すぎて、真空管(6Z−P1)を傷めます。
560Ω 4Wは発熱するのでシャーシ上部の元のケミコンの位置に取り付けました。

          SPへ
           I
12F−ー560Ωーー3,600Ωーー出力管のP以外のB電源
    I       I         I
   15μF   15μF    33μF
6Z−P1のプレートで250V  G2に180V程度に抑えました。
なお ナショナルのラジオはトランスの上にヒューズがつけれらています。
この為、シャーシにはヒューズがありません、仕方が無いので、外付けとしました。
電源がむき出しです、取り扱いは充分注意ください。
(オリジナルの場合も同じですが)


動作試験をしているところ。

修理完了後のキャビネット内。
キャビネットメーカーで売り出していたものに、
ナショナルのラジオの残骸を組み込んだもの。
高さを調整する為、下駄を履かせている、非常に器用な工作。

ただツマミの穴が小さすぎるので、リーマで広げざるを得なかった。
シャーシの固定方法も工夫が凄いが、作業は手間がかかる。

スピーカーも手持ちのラジオから取り外して交換しました。
出力トランスは新品に交換したかったのですが、時間的に準備できませんでした。

最後に
こんなラジオの修理は初めてと言って良いと思います。
ケースに納めるのに、ツマミの穴をリーマーで広げる工作まで残っていました。
率直に言って何か無駄な修理をしたような、割り切れない気分が残ります。

 ラジオの修理を自分でやる方は このホームページの他真空管ラジオ・アンプ作りに挑戦!、や真空管式スーパーラジオ徹底ガイドも参考にしてください。
不明な点はラジオ工房掲示板に実名で投稿ください、修理ノウハウの提供は無償です。
初歩的なことでも結構です、ただし他人が解るように書いてください(神様や占い師にするような経緯を省略した質問は返事不能です)。

当方に依頼される方はラジオ修理工房をご覧ください、こちらは有償です。
 



2005年10月7日
2005年10月15日

2006年6月24日移転

修理のノウハウや資料については下記の書籍をご覧ください。




ラジオ工房修理メモ

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