真空管ラジオの修理 ナナオラ 6S−12

高級ラジオが修理にやってきました。
配線が切られているとは聞いていたのですが、・・・・。

裏側のネジも外したままで、梱包されていました。
輸送中に壊れたり、真空管が抜けなくて良かったです。

自分も半世紀(50年)で沢山の真空管ラジオは修理しましたが、
ここまで無残に壊されたラジオの復元は初めてです。




梱包を開けたところ。
ダイアルも分解され 指針が無くなっている。

不思議なことに ネジと言うネジが殆ど外されています。
リード線も鋏のような鋭利な刃物で切断されています。







真空管 6W-C5 6D6 6Z-DH3A 42 80はほぼ使えそう。
マジックアイは未試験 しかしだめな可能性大。

トランスは電圧が出ている、まず使えるか。
電源SWは壊れている。
ケミコンを含めコンデンサーは全て使えないと思われる。

右端 発振コイルが横に寝ていますが、これもネジが外されていました。


致命的なことが見つかりました。
スピーカーのコーンが歪んでいます、
さらにボイスコイルの付近が半分ほど破れています。
うまく動作する可能性は非常に少ないです。
困った事になりました。

大きさは8インチくらいあるでしょう。
5球スーパー用の大部分のスピーカーは6インチ半です。
8インチ(20センチ)で電磁型のスピーカー、
代わりを探すのは至難でしょう。


スピーカーは電磁式でフィールドコイルのリード線が切断されている。
アウトプットトランスも紛失している。
当然ネジも無い。





マジックアイのソケットも見事に切り取られています。
ネジと言うネジは何故か取り外されています。
バリコンのトリマのネジさえありません。
当然 マイカも捨てられているので、復元が難しいです。

ネジ程度と馬鹿にしてはいけません。
この時代のねじは旧JISネジで、今では幻のネジなのです。
入手は困難です。


まず電気的に復元する事にしました。
調べたところケミコン、ペーパーコンデンサーは全滅です。

特にB電源平滑用のケミコンは耐圧が500V必要なので、大変です。
結局入力側には250V 47μFを2個直列に、出力側には200V 47μFを2個直列にして使うことにしました。


250V 47μF 2個を直列にするとともに、
それぞれに240KΩの抵抗をパラに入れました。
こうして置かないと、個体のアンバランスで、片側のケミコンに無理がかかる可能性があります。

(250V 2個を単純に直列にしても容量の不揃いやリークで、500V耐圧にならない事があります)



修理完了時のシャーシ内部。

回路図もご覧ください。



組み立てたところです。

真空管は代用品を入れて試験します。
代用品の作り方をご覧ください)
80は動作させたところ、最初は点灯したのですが、すぐ駄目になりました。
半田を外したところ、ベースの半田付けが不良になっていたようで、
再度半田を付け直して回復です。



ところが、とんでもないことが判りました。
バリコンの羽根が、ランプの金具に触り、回転できません。


ケミコンは使えませんが、残してあります。
これを外すと、穴が開いて、シャーシ上がさびしいです。


バリコンのゴムブッシュが沈んでしまった事も原因のようです。



ゴムブッシュとホームセンターで購入してきた5mm厚のゴム板を使って、
バリコンを固定しました。
ゴム板を入れないと、やわらかすぎて、不具合でした。

ゴム板は左右の金具の下側にそれぞれ10mm×30mmくらい。


再度組み立てて、さらにダイアルの糸かけをしました。
えらく複雑になってしまいました。
原型が判らないので、2時間ほど試行錯誤して、やっと完成です。
マジックアイも取り付け完了。

なおバリコンのトリマは手持ちのものを半田付けしました。
最大容量が小さいので心配したのですが、調整が取れましたので、
良かったです。

後ろに支えがあった可能性があるのですが、金具が無く、この部分不明です。


指針もありませんので、針金を使って自作しました。
マジックアイは幸いにも少し光ります。


今度はスピーカーです。
同じものを捜そうとしたのですが、無理でした。
何しろ、同じタイプのものは現在1000台のラジオがあったとして、数台あれば良いほうでしょう。
非常に珍しいタイプなので、困ってしまいます。



結局 何とか修理してみようと決心しました。


コーン紙の破れた部分は乱暴ですが、エポキシ接着剤で補修しました。
またコーン紙の変形も何とか手で修正しました。
動作させてみると、何とか音は出ます。

耐久性に問題は有りますが、数日試験した結果では使えそうです。


無残な形のスピーカ。
最近のトランスは大きさが違いますので、黒丸の部分に穴を開ける必要があります。
ボール盤を探し出してきて、何とか希望の位置に穴あけしました。
安物のボール盤ですが、こういう時には大いに役立ちます。


フィールドコイルの端子がありませんので、ラグ端子を横につけて配線しました。

ラグ端子は先ほど開けた穴に取り付けました。


電源スイッチ 音量調整用VRの不良でしたので、これも苦労して交換しました。
同じものが入手で切れば良いのですが、有りませんので、途中で継いであります。
金きり鋸をホームセンターに買いに行くやら、意外と大変でした。

写真左端 右から2番目の2つがこの部分です。
真鍮の軸なので、切断がいやらしいです。


キャビネットに収納したところ。

パネルを後ろから支える金具が存在した可能性があります。
でも復元は出来ませんでした。




シャーシを固定するネジも1個しか残っていません。
不揃いですが、手持ちのものを捜して、使いました。



キャブネット正面。

最後の仕上げをしようとツマミをつけようとしたのですが、
1個だけネジが紛失していました。
これはありませんので、無理に新JISの4mmネジを使いました。
これは望ましいことではありません。


数日動作試験をしました。
何とか合格と言うことです。


左側の金属板はキャパシティアンテナと言われるもの。
アンテナ端子に接続、この板は大地との間で、容量を持ち、
アースの働きをします。
電波は
電灯線(アンテナの働き)→トランス巻線→シャーシ(容量結合)→アンテナコイル1次側のアース
→アンテナ端子→金属板(アースの働き)で動作する。

 ラジオの修理を自分でやる方は このホームページの他真空管ラジオ・アンプ作りに挑戦!、や真空管式スーパーラジオ徹底ガイドも参考にしてください。
不明な点はラジオ工房掲示板に実名で投稿ください、修理ノウハウの提供は無償です。
初歩的なことでも結構です、ただし他人が解るように書いてください(神様や占い師にするような経緯を省略した質問は返事不能です)。

当方に依頼される方はラジオ修理工房をご覧ください、こちらは有償です。
 

2004年9月14日
2004年9月17日

2006年6月25日
2011年11月28日:リンク修正

修理のノウハウは「真空管ラジオ・アンプ作りに挑戦!」をご覧ください。




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