真空管ラジオの修理 三菱 S型GT管5球スーパー修理体験記

三菱S型GT管5球スーパーの修理を依頼されました。
このラジオは昭和28年頃販売されていたもので、回路図は昭和28年8月号の無線と実験に掲載されています。
当時としてはGT管は高級品で、最新型の高級ラジオとして販売されていたものと想像されます。


当時のラジオとしては珍しい縦型に近いラジオです。
ダイアルの糸かけも含めて修理を依頼されました。



まず面倒な糸かけからはじめました。


糸の残骸は残っていましたが、バネは無くなっていたので、
これは手持ちのものを加工して組み込む事にしました。
軸を見るとギザギザが刻まれています。
これは糸が滑らなくて良いように思えるのですが、
逆に 糸が切れやすい欠点があるようです。
この製造時期はこの事を知らずに作られたのかもしれません。
何とか苦労の末糸かけは終了です。
さすがメーカー製だけあって、無理はありません。
(自作品のダイアルの糸かけには、難しいものが偶にあります)



ダイアルの側面です。
PLが上下にスライドするようになっています。
横にレバーのような物が付いていますが、これは着色したプラスチック板です。
スライド写真のようになっていて、ダイアルの指針の上下につれて、
表示部分の色が赤  緑 青などに変化する仕掛けです。
なかなか考えられています。
(キャビネットに入れて動作させると表示面が綺麗です、下の写真をご覧ください)




電解コンデンサーの漏洩電流は1mA程度なので合格としました。
殆ど駄目だろうと思っていたのですが、意外でした。
でも6X5が多少エミ減気味なので、新しい物を入れた時は
電圧が高くなるので多少漏洩電流も増加するかもしれません。

ペーパーコンデンサーは全部交換します。
写真は取り外したところです。


今回交換 破棄した部品。

全部で9個ほど交換しました。
耐圧の高い部分と6SK7GTのバイアスなど50V以下でよい部分にわけ、
コンデンサーは使い分けます。



真空管はTV−10真空管試験器で確認。
6SA7GT 6SK7GT 6SQ7GT 6V6GT(刺っていたもの) はほぼOK。
6X5は多少エミ減気味。

コンデンサーを9個交換して、PLも1個交換。
通電してみました、一瞬 動作、その後猛烈なピー音です。
慌ててVRを0にしましたが、全然変化しません。
電源を切って、調べてみました。
配線におかしいところはありません、結局VRの不良でした。
完全に中点が浮いていたようです。
これは安全のため新品に交換しました。
ただPU切替を兼ねたものでした、これは入手できません。
結局SW無しのVRでほぼ同寸法のものがありましたので、これを使いました。
配線を終わって、通電 無事動作しました。

調整
IFTは455Kcに調整されていましたが、コアを回しても殆ど変化なし。
どうもIFTのQが落ちているようです。
交換するのも勿体無いので、そのまま使うことにしました。
簡単に目盛りあわせ、トラッキング調整をして、終了。

スピーカーコードは多少弱っているようですが、このままとしました。


キャビネットに収納したところ。
ダイアルの指針の色が周波数の切れ目で変化する。
この時代では珍しがられたのでは?。


裏側の内部写真

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2003年7月30日

2005年8月16日移転

2006年6月24日移転

修理のノウハウは「真空管ラジオ・アンプ作りに挑戦!」をご覧ください。




ラジオ工房修理メモ

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