満州電信電話株式会社 標準3号型 受信機



背後から見たところ 球とシールドケースは外してあります。



シャーシ内部

依頼主が修理をしたそうです。
ペーパーコンデンサーが4個交換されていました。
抵抗基板の下側にも配線があり、コンデンサー1個はこの下側に組み込まれています。





調べたところ 感度調整VR(10KΩ)は断線 チョークコイルは2個とも断線。
なおチョークは1個はB電源の平滑回路 もう一つは47Bのプレート負荷です。
昭和12年頃までは このようにマグネチックをB回路に直接接続するのではなく、
一旦 チョーク負荷にして Cでスピーカーに接続する回路が使われていました。
おかげで スピーカーに直流電圧が加わらず 断線を免れていました。

出来るだけオリジナル状態を残して欲しいという希望と 
チョークを準備すると費用的に高額になるので予算と考え合わせ、チョークは使わない方式としました。

当時の技術ではコンデンサーの容量は数μF程度ですが、最近では大容量のコンデンサーが入手できます。
このためB電源回路はチョークを1KΩの抵抗と15+100μFのコンデンサーで置き換えることにしました。
スピーカーは昭和14年以降 現在も使われている直結回路に変更しました。

下記 画像は修復完了後のものです。
抵抗は 値が大分変化していますが 問題ない範囲としてそのまま使うことにしました。

オリジナルの回路はテレビアンのM−48に良く似ているとの岡部さんのラジオ博物館の情報をよりどころとしました。
ただ こちらの機種の方が少し 遅い(1年くらい)ので 真空管も新しくなっています。
詳細に調べたところ 基本的には似ているが 検波管負荷のチョークが抵抗に、音量調整VRが組み込まれています。
さらに不思議なことに感度調整用のVRが58のカソード回路にいれられているのです。
本来なら逆のほうが無難な気持ちもありますが 不思議な回路構成です。
(感度調整でアンテナ回路もVRに接続するのは24Bのようなシャープカットオフの真空管に多いのです)


テレビアン M−48 回路図



なお 使われているケミコンを分解してみたら 密封されていませんでした、
大昔(70年位前の話) ペーパーコンデンサーを分解した時を思い出すような感じでした。
このようなケミコンははじめてみました。
残った部品などを丹念に調査して 下記の回路で修復することにしました。
なお赤○内のコンデンサーはオリジバル回路にはありません。



なお AC電源回路の0.01μFは安全規格のコンデンサーです。
雑音防止の意味もありますが 電灯線アンテナで聴取する場合 感度が良くなります。

なお何故か500KHz〜1440khzの範囲で受信できます、それと感度差が激しいですね。
AVCつきのスーパーラジオを使いっていると不便に感じます。
受信範囲は部品はオリジナルのままなので もともとこの様な仕様なのかは不明。
エアプレーンダイアル中心の地図は満州で 回りに日本列島がある。

真空管は12Fが少し劣化(B電圧が低い)  他は試験してGMなどは大丈夫でした。

ところが 試験するうちに 突然ノイズが発生するのです。
現象は検波管で発生 グリッドをアースしても雑音は消えない、放送も受信できない。
たたいてもノイズは消えない。
G2の様子をオシロで見てもDCで問題ない プレートでは発振した感じの波形が観測できる。
G1の接触不良も最初は疑ったが 上記現象から 問題は無さそう。
新品の57に交換すると正常になる。
最終的に原因は不明のままですが 内部 あるいは引き出し線部分でG3関係の接触不良ではと推定される。
12Fはそのままにしてあるので 機会をみて元気なものを入手してください。
電源コード関連の配線は オリジナルのままです、危険なので 交換をお願いします。



修復後のシャーシ内部





箱の中に電力会社の試験票

このラジオは昭和12年に東京 大森の山中電機で作られたものです。
満州まで輸出されたか あるいは内地で使われていたかは不明ですが、
16年11月25日に三重県の四日市の東邦電力で消費電力の測定をしています。
当時は家庭ごとに電力計がない場合があり ラジオも消費電力を測定して 定額で支払っていたのです。
電灯 1個でいくら という具合。
戦後 我が家は商売をしていましたので当然電力計はついていましたが 一般家庭の大叔母の家では
ラジオ受信機を設置するのに 消費電力を測定していました。
自分は子供時代ですが 立ち会った経験があります(昭和23年ころ)。


2021年4月6日

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