自作GT管スーパーの修復

(品名)
GT管5球スーパー(5Y3,6F6,Q7,K7,A7) 中波のみ
(状態)
整備済との商品を購入しましたがNHK1,2以外は聞こえない状況です。
高い周波数に合ってないのかも知れませんが、
高感度のループアンテナを接続しても地元の民放2社の内、
1440KHZは何とか聞こえますが、1287kHzは殆ど受信出来ない状況です。
何故か不思議な現象です。
当方で実施したのはバリコンをエアーブラシで吹いたぐらいです。
真空管ラジオは数台持っておりますが明らかに最悪と感じております。
当方には球やコンデンサの交換ぐらいの知識しか御座いません。
ご検討宜しくお願い致します。 



輸送中に外れたのかネジが無くなっている(SPパネルの固定ネジ)。
心配になり確認してみると、他のネジも緩くて、全て締めなおした。
ネジはきっちり締めないと具合が悪いです。
こんな締め方のラジオは初めて見ました、注意した方が良いでしょう。
製作者は原理的研究はよくされていると思いますが、実技経験が無さそうですね。

使われている部品は昭和26年以前のダイアルと20年代後半のIFT コイル など雑多な部品の混合です。
真空管は新品か新品に近いものが使われています。
スピーカーは最近のもののようです。
非常によく考えて作られていますが、惜しむらくはバリコンのトリマの位置です。
ここまでは思考の外だったのでしょう、「九仞の功を一簣に虧く」感じです。
非常に惜しい作品です、もう少し努力を期待します。


 修復前   電源トランスは昭和20年代後半から30年代末頃に製造されたもののようです。
ケミコンや他のコンデンサーは最近の製品です。
これだけの部品を集めると3万円くらいはかかったのではと想像します。
配線の半田つけもなかなか素晴らしいです。
コンデンサーの使用方法に多少疑問があるので、交換することにしましたが、
そのままでも十分使える範囲でしょう。
B電圧は整流直後に295Vになり、平滑後のB電圧は255Vになります。
6SKGTのG2電圧は100V。
規格上は大丈夫ですが、狭い空間に押し込められているし、
余裕をみて 平滑抵抗を3KΩに変更しました。
 修復後   @AC100V回路に使われているコンデンサーを安全規格品に交換。
A出力トランスにパラに入れられているコンデンサーを
 250VAC規格のものに交換。
B平滑抵抗を1.5Kから3K Ωに変更。
これで整流直後で300V B電圧は240Vになりました。
もともとトランスのB電圧が280Vと高いので、仕方がありません。
出来れば250V以下のトランスを選んだ方が無難です。 


調整

このラジオはもともと動作品ですから、調整するだけでも受信できたのですが、安全のために上記改良を済ませました。
全体的にネジが緩いのには驚きましたが、製作者はあまりラジオの組み立て経験が無い方なのでしょう。
まずIFTの調整ですが、初段のIFTのネジが硬くて調整できませんでした。
多少この部分は怪しいのですが、ネジも壊れたので諦めて、他の3か所の調整を済ませました。
IFTは455KHzのナショナル製ですが、ダイアルの製造時期とは異なるので、おそらく別の機種からの抜き取り品でしょう。


550〜1500KHz表示 民放名も書いてあるが旧規格のダイアル。
局発の周波数をICF−2001Dでモニターしながら周波数を合わせます。
ダイアル目盛は旧規格ですから、当然合いません。
530から1650KHzが受信できるようにします。
1287KHzが受信できなかった原因は局発が1660KHzくらいまでしか発振していなかったからです。
2001Dでモニターしながら985〜2105KHzを発振するように調整します。
985はパディングで、2105はトリマで合わせます。
これで受信できる周波数範囲の調整は終わりです。



NHK 1(594)を受信しながらAVC電圧が最大になるように調整します。
今回のラジオのようにバラバラに部品を集めた場合、念入りに調整しないと感度の悪い受信機になってしまいます。
想像通り トラッキングが取れません。
TRラジオ用のバーアンテナの破片をコイルの中に入れて、インダクタンスを増加させ、最大点を見つけました。
この作業は微妙な位置の調整が必要です、時間がかかります。
最適位置が決まったら、最後はエポキシ接着剤でコアを再ど固定します。
(画像は調整中のもの)


周波数の高い方でトラッキングが取れないので、
調べてみると30PFのコンデンサーがアンテナコイルのA端子に伸びているではありませんか。
この部分はIFTの陰でよく見えないので無視していたのですが、困ったことです。
A端子と同調コイルのホット側を30PFで接続してあるのです。
これが原因で トラッキングが取れませんでした。
スターのアンテナコイルはもともとこの部分はコイル間の容量結合がしてあります。
あるいはそれを真似したのかもしれませんが、使われた容量が大きすぎます。



今回取り外した部品。



部品配置が悪く、バリコン
のトリマの調整ができない。
6SA7GTが邪魔してトリマが回せないのです、これには困りました。
部品配置の時によく考えておくべきことです。
何度も真空管を抜き差しして、やっとのことで調整を終わらせました。
別にトリマを組み込もうかと思うほど大変な作業でした。


オリジナルのキャビネットはアメリカ製かもしれません。
左側面に英文表示の紙が残っていました。


裏側のパネルです、器用に製作されています。


ツマミを組み込んだところ。
ダイアルとVRの軸が短いのでツマミがうまく止められません。
いやはやとんだことになりました。
無理やり ツマミを押し込んで留めました。
これが原因で 操作が多少ぎこちないです。


SSGからアンテナに信号をいれ感度測定をしました。
20μdBの信号が受信できるので十分と判断しました。


本来のツマミで無いものを使ったので、軸が短かすぎます。
軸がギザギザタイプですから、それに合ったツマミなら簡単に固定できたのかもしれません。
このあたりが寄せ集め部品を利用したラジオの宿命かもしれません。

総合的に(この作品の製作者のかたへ)

よく組み立てられています、回路も配置もよく考えてあります。
惜しむらくはバリコンのトリマの位置とネジの締め方です。
さらに5球スーパーで調整をせずに完成させるのは致命傷です、注意した方が良いでしょう。
調整方法などは下記書籍に詳しく掲載してあります、参考にしてください。
もう少しの努力です、頑張ってください。


 ラジオの修理を自分でやる方は このホームページの他真空管ラジオ・アンプ作りに挑戦!、や真空管式スーパーラジオ徹底ガイドも参考にしてください。
不明な点はラジオ工房掲示板に実名で投稿ください、修理ノウハウの提供は無償です。
初歩的なことでも結構です、ただし他人が解るように書いてください(神様や占い師にするような経緯を省略した質問は返事不能です)。

当方に依頼される方はラジオ修理工房をご覧ください、こちらは有償です。
 

2011年10月12日
2011年10月14日





ラジオ工房修理メモ

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