自作 5球スーパーの修復 調整 6WC5 6D6 6ZDH3A 42 80

数年前に,部品を 外し,ラジオ教育研究所「ラジオ工学教科書」の回路図を元に自作 に挑戦したものですが,うまく出来ませんでした。
気付いている点は以下の通りです。
1.電源を入れると,雑音しか聞こえません。
2.テスターで調べてみたところ,電圧が高く,電源トランスが良 くないと思い,別の電源トランスを購入したしたが,
電源トランス の交換は行っていません.トランスが問題でしたら,交換していた だきたいと思い,同封しています。
3.部品は使えそうなものは元のラジオの部品を使いました.他の 部品は秋葉原やアメリカの通販で買いました。
一部の外した元の部品を同梱しています。
4.スピーカーは元々付いていたものが,あまりにも汚かったの で,交換しようと思い,出力トランスを付けました。
新規に購入し たもの,元々のものどちらも同梱しました。
5.真空管は元々付いていたものを同梱しています.6Z-DH3A は他に1本,
他の真空管は複数本,持っております.使えるものかどうかを診ていただけますと,ありがたいです。
6.ダイアルの糸かけは自分出来そうもなく,別料金とのことですが,これもお願いします。

まず驚いたのは 部品配置です。
検波用IFTが6WC5の前に配置されています。
何故このような配置に「なったか不明です。
ラジオは基本的に信号の流れに沿った形で組みたてるのが普通です。
部品が流れに逆らって ジグザグに組みこまれるのは望ましくありません。






信号の流れがジグザグになっているのが問題。
真空管式スーパーラジオ徹底ガイドの98ページに記載したごとく、
部品の配置は信号の流れに沿ってください、ジグザグ配置はいけません。

 


配置例を真空管式スーパーラジオ徹底ガイドの119ページに記載。
直線型かL字型に配置する事が一般的です。




回路図について
ラジオ教育研究所のテキストを見ると、良く似た回路図を発見した。
この回路図に基づいて製作したのではと想像されます。


この回路図は間違っているとは言いませんが、これをお手本に製作すると酷い目にあいます。
書籍や雑誌の記事でも間違いがありますので、注意が必要です。
本来この回路図で平滑抵抗のR13はダイナミックスピーカーのフィールドコイルだったはずです。
この部分には50〜60mAの電流が流れます。
普通の抵抗で置き換えると大きなワット数のものが必要で、常識的にはこのような方法は使いません。

基本的にパーマネント・スピーカー(現在新品で入手できるのはこれです)を使う場合、B巻線は220〜280Vが普通です。
350Vの物を使う事は まずありません。
フィールドコイル型スピーカーを普通のパーマネント・スピーカーに変更する場合の注意事項は「真空管式スーパーラジオ徹底ガイド」86ページに記載してあります。


下記回路図はNHKのラジオ技術教科書による標準的な5球スーパーです。
上記と大きく違うのは、電源トランスのB電圧で、250Vになっています。
この程度が無理が無くてよいのです。


まず 低周波部分を残して、ラジオを分解します。
IFTも順序良く並べないと発振して、手がつけられなくなります。
バリコンは3連バリコンが使われています。
この部分はそのままとしました。


IFTのネジは旧JISネジです、無闇に現在のISOネジを使ってはいけません。

マイカコンデンサーの不良。


この形のマイカコンデンサーは時々不良になっています。
使わない方が無難ですが、どうしてもと言う場合はテストして使ってください。
4個とも全滅とは・・。

湿気が侵入するのが原因と思われます。

何となく怪しい感じがしたので、Qメーターで測定してみました。
Qが極端に落ちています。
テスト用のコイルはQが200ありますので、普通ならQ200を指す筈が、
30くらいしかありません、完全に不良品です。
容量もばらばらで、1個は測定不能でした。

グリッドキャップが外れています。
エポキシ接着剤で先端を固定したところです。
なお リード線を延長する作業は当然必要です。

真空管の修理法は「真空管式スーパーラジオ徹底ガイド」103ページに記載してあります。

組み立て完了し試験中のスーパー。
感度が猛烈に悪いです、100円ラジオ以下ですから困ります。
まずIFTの調整を仮にやってみましたが、とんでもない事を発見。
IFTの調整ネジの先端が折れて無くなっています。

IFTのネジが途中で折れています。
これでは調整できません。


今回使われているIFTはスターのA4 B4です、外観が汚いが同じものが有るはずと探してみたら、
改良型のようで、互換性がありません。



やむなく 現物を修理して使う事にしました。
Qメーターで455KHzを発振させ、コイルをシールドケースに入れた状態で、ピークを探します。
120PFでピークになるようにコアの位置を微調整します。
本来なら真空管の出力容量も考慮する必要があるのですが、今回は省略しました。

位置がずれるとμが変わるので意外と微妙です、数回これを繰り返して最適位置を決めます。
最適位置でネジをエポキシで動かないように固定します。
ネジ山があれば簡単なのですが、やむを得ません。
IFTに使われているマイカコンデンサーもセラミックコンデンサーに交換しました。


マイカをセラミックコンデンサーに変更した。


取り外したマイカコンデンサー。
Qの低下は殆ど無かったが容量の変化が激しかった50〜130PF。
1個は50PF程度に変化していた、これではIFの増幅度が落ちるはずだ。
IFTの修理法は「真空管式スーパーラジオ徹底ガイド」108ページに記載してあります。

なお スターやトリオのIFTは Qが高く 高感度になるよう設計したものが多く、悪くすると発振して 手に負えないラジオになることがあります。
これは当時のアマチュアーが求めていたもので ある意味使い方が難しい事があります、中古品では素人が弄り回したものがありますので、
令和の現時点 慣れない方がラジオを初めて作る時には お勧めしません。
特にC同調のものは注意が必要です(同調範囲が広いので 455KHzより離れたところに同調点が有るもの あり)。



IFTの調整


組み立てて受信しているところです。
IFTを455KHzに合わせます、今度は比較的簡単に合わせられました。
受信範囲の調整と、トラッキング調整。

調整方法は「真空管式スーパーラジオ徹底ガイド」153ページに記載してあります。

局部発振器の発振周波数を手がかりに調整します。
受信範囲は515〜1,680KHzに合わせます。
低い方はパディングコンデンサーで、高い方はトリマで調整できます。
次にトラッキング調整です。
NHK1(594KHz)でアンテナコイルにコアを入れてみると、大幅に感度が上昇します。
逆に言うとコイルのインダクタンスが不足しているわけです。
コイルの巻線を追加する方法もありますが、このコイルは単純ではありません。
バーアンテナのコアの破片をコイルに組み込む事にしました。
大きさと組み込む位置は610KHz付近でSSGを発振させ、音量が最大になるように調整します。
(594KHzの電波が邪魔にならないような位置を探して調整)
ゴム系の接着剤で仮固定し、最適点が決まったら、更に別の接着材で固定する方法が良いでしょう。

トラッキング調整をしたので、感度は格段とよくなりました。
ただ受信にはアンテナが必要です、数m程度のアンテナは準備してください。
古いスピーカーのフィールドコイルは平滑チョークに利用します。
本体側面のUYソケットに差し込んでください。
これを入れないとACが通電しない仕組みに変更してあります。
これは安全のためです。

なおダイアルは部品不足で組み込めませんでした。


コアの破片は接着剤抜きで、簡単な位置決めはしておいてください。
その後
コアを接着する位置にゴム系の接着剤を塗っておく。
コアの破片を仮に固定して、最高感度の位置を再度探す。
この後、取れないようにホットボンドなどで、固定する。


送信管(807など)用のプレートキャップが使われているので、
これは手持ちの古いグリッドキャップに交換した。

プレートキャップは抜く時にキャップに無理な力が加わるようだ。

各部分の電圧
42のプレート電圧が高いが我慢できる範囲、できればフイルター回路に470Ω(4W)を追加し、電圧を下げた方が安全です。
その場合6D6G2(と6WC5)への抵抗20KΩを15KΩ程度に変更する。
トランスの出力             :350V
B電圧 整流管80のフィラメント  :390V
     フィールドコイルの出側  :285V
42のプレート             :275V
42のカソード             :17V
6Z−DH3Aのプレート       :120V(デカップリング:255V)
6D6のG2               :80V
6D6のカソード            :1.2V。


今回の感想
@お手本にする回路図の選定を間違えたのが失敗の元と思われる。
テキストは常に正しいとは思わない事です。
Aマイカコンデンサーは不良になっているものがある。
BIFTは壊れた物がある、時にアマチュアーが組み立てた物(スターとかトリオのIFT)は要注意。
これらは弄り壊されている事があるので、注意が必要です。
C信号はなるべく最短距離で流れるように配置を考える、特にジグザグの配置はいけません。

拙著「真空管式スーパーラジオ徹底ガイド」をよくお読みください。
この本に書いてある事を実行すれば、この種の間違いは少なくなります。

 ラジオの修理を自分でやる方は このホームページの他真空管ラジオ・アンプ作りに挑戦!、や真空管式スーパーラジオ徹底ガイドも参考にしてください。
不明な点はラジオ工房掲示板に実名で投稿ください、修理ノウハウの提供は無償です。
初歩的なことでも結構です、ただし他人が解るように書いてください(神様や占い師にするような経緯を省略した質問は返事不能です)。

当方に依頼される方はラジオ修理工房をご覧ください、こちらは有償です。
 

2009年11月20日
2009年11月24日:527

2009年11月30日:682 NHKのラジオ技術教科書による標準的な5球スーパーの回路図を追加。

2022年12月3日:30,327 一部文字追加 修正

    




ラジオ工房修理メモ

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