ゼネラル mT管5球スーパー(5A301)の修復 真空管ラジオ修理

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当方に依頼される方はラジオ修理工房をご覧ください、こちらは有償です。
 


何時もお世話になっている骨董屋さんから、店の飾りにしたいとの事で、
mT管トランスレス5球スーパーの修理を頼まれました。
ゼネラル製で12BE6 12BD6 12AV6 35C5 35W4の構成です、
短波帯の周波数等から昭和20年代末から30年代にかけての製品と思われます。
またmT管ラジオの初期に12BD6 35C5が良く使われました。
その後12BA6 30A5が全盛になります、その点からも初期のラジオといえます。

中々好感の持てるデザインが気に入りました。
ブーンとしか音がでないとの事。

気軽に引き受けたのですが、簡単修理できませんでした。

1)まずコンデンサーのチェック
回路は典型的なトランスレススーパーですが、初期のラジオ特有のフローティング アースになっています。

古いラジオはいきなり電源を入れてはいけません。

@ラジオ工房「ラジオ修理メモ」の修理用の冶具(ケミコンテスター)を平滑用のケミコンの+-に接続、
ここに最初50V、続いて140Vをかけケミコンのテストをしました。
漏洩電流は1mA以下で、テストOK。
これは爆発防止の試験です、容量がどの程度残っているかは不明です。
ラジオが動作したらブーンと言うハムで判断します。
また慣れてくると、メーターの動きで、容量が残っているか判断できるようになります。
Aこの状態のまま、35C5のグリット電圧(ケミコンの‐側とG1の間)を測りました。
電圧0です、ペーパーコンデンサーの絶縁は大丈夫なようです。
ここで少しでも電圧が出れば、ペーパーコンデンサーの絶縁不良というわけです。
その場合、このコンデンサー以外に最低12AV6のG1のコンデンサー0.01とAVC用の0.1は交換した方が無難です。
2)真空管試験器があればここで確認しておきます。
3)配線にショートが無いか確認して、通電です。
特定の球が明るすぎないか確認しながら、音がでるのを待ちます。
確かにブーンという音はでますが、音声は出ません。
電源電圧は多少低いものの、OKです。
4)低周波回路のテスト
@35C5と12AV6のグリットにシグナルインジェクターで信号を入れると音がでます。
低周波回路はOK。
AVRのガリも無いようです。
5)IF回路
12BE6と12BD6のPにテスターを当てるとクリック音がします。
6)周波数変換回路
アンテナコイルにシグナルインジェクターで信号を入れると音は小さく聞こえます。
総合的に判断してこの部分の故障らしいと推定しました。
@短波は感度の良し悪しは別にして、動作していることを確認した。
A中波は発振していない。→コイルの断線。
BリアクションコイルはOKだが、バリコン側のコイルが断線していた。
ハニカム巻きだが、0.15mmΦのウレタン線をとりあえず60回巻いて、Qメーターで測定すると、60μH程度だったので、
希望の120μHにするため、再度90回に巻きなおした。
この種の巻き方ではインダクタンスは巻き数の二乗にほぼ比例します。
後はコアで微調整。
Cこれでラジオに組み込んだが 未だ駄目。
短波は発振するが、中波では発振しない、確認のためオシロスコープまで持ち出すことに。
状況から、発振回路のコンデンサーの容量不足と推定してQメーターで測定。
10pF程度に減少していることを発見。
周波数の高い短波では10pFでも帰還量の関係で発振していたもの。
これを手持ちの80pFに交換した。
DこれでOKと思いきや、未だ正常にNHKが受信できない。
若しやと調べたらパディングコンデンサーも150pFくらいしか無い。
これを正規の420pFに入れ替えてやっとOKとなった。


簡単に清掃して、シャーシを組み込んだ。



シャーシ内部。
中頃上のコイルが短波のOSC(コイル)
下側が中波のOSC。
シャーシ右側の上が短波のANT(コイル)
(このコイルの上のラグ端子に付いているのが発振用結合コンデンサー50pF)
下側が中波。


中波帯の発振コイル(取り外したところ)。
結局このコイルの巻線が切れていた。
コイルの巻直しは比較的簡単ですが、
測定器が無いと手間がかかる。


中波のOSCを巻きなおして元の位置に取り付け。
パディングコンデンサーも300pFと120pFを組み合わせ、420pFとして取り付け。
セラミックコンデンサーで頭が黒く塗ってあるのは、温度係数0のものです。
シルバード マイカも使えます。
普通のセラミック コンデンサーは使わない方が無難。


チタコンの容量抜けは想定していなかったので驚いた。
50pFが10pF程度に落ちていた。

またパディングも420pFが150pF程度になっていた。
写真はQメーターで容量を測定しているところ。

修理完了後のシャーシ下側。
珍しくペーパーコンデンサーはOKでした。
多少容量の減少があるかも知れないが、
動作には時に問題は出ていない。

なおパディングの420pFはシルバードマイカ300pFと温度係数0のセラミックコンデンサー120pFを組み合わせた。
これは手持ちで温度係数の低く、容量が適当なものを組み合わせたもので、普通のセラミックコンデンサーを使うと、受信周波数が温度で浮動する恐れがある。


平成13年9月7日修正
2002年11月2日リンク修正
2005年8月16日移転

2006年6月24日i移転

修理のノウハウや資料については下記の書籍をご覧ください。




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