真空管ラジオ修理 Zenith-G730

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分解したシャーシ内部。
左側のシャーシ固定用金具が紛失している、右側のみあり。
シャーシ背面(写真では下部の白い丸印内)のACソケットが割れている。
真空管の構成は6BJ6(FM増幅) 12AT7(MW FM周波数変換) 12BA6 12BA6(AM FMのIF) 12AU6(FM IF) 19T8(検波 低周波増幅) 35C5(電力増幅))。
2スピーカーですが、容量性のツイターが組み込まれています。
これについては接続していません。

このラジオの回路図が無いので、ずいぶん苦労しました。
良く似た機種(Zenith H724Z1)から類推して修理しました。


シャーシを片側でしか固定していないので、振動で割れたのでしょう。


エポキシ接着剤で補修しておきました。


FMチューナー部分はミュー同調でした、ダイアルのプーリーの動きに合わせて銅板製の金具が上下する仕掛け。
これに固定されている軸が 同調時上下してチューニングする。
当然アメリカバンドで作られている、位置をずらせて80MHzから受信できるように変更した。
全ての受信帯域はカバーできない。


動作試験中のG730.

IFTの調整は上手くできましたが、ループアンテナのQが極端に低かったです。
我が家のQメーターでかすかにメーターが振れる程度(Qは10〜20)でした。
受信は正常に出来ます、あまり深く追求しない事にしました。
出力管35C5がエミ減していたので、交換しました。
ペーパーコンデンサーも試験しましたが、多少の絶縁不良程度なのでそのままとしました。


このラジオもシャーシ下にシールド板が組み込まれていた。
組み立ては意外と面倒です。


動作中のG730.
音量調整用のVRに接触不良があります。
2重軸の特殊品の為 交換できませんでした。
ツマミも一部割れがあります、このラジオは何方か依然修理を試みたもののようです。
2009年10月6日

その2(2019年8月13日)



このラジオは6BJ6 12AT7 12BA6 12BA6 12AU6 19T8 35C5の7球構成です。
珍しいのは12AT7でFM AMとも周波数変換を行うことです。

ヒーターは合計117Vになるように設計されています。
V4(12BA6)とV5(12AU6)のヒーター配線間に39Ωの抵抗が入れられています。
もともとはZenith H724Z1の改良型と思われ この機種は初段にも12BA6が使われていたので、
6BJ6に変更した時 抵抗を挿入し 6.3V分を抵抗で処置したものと想像されます。
100Vで使うと約20%減の電圧で動作させるので、工夫が必要です。
まず出力管を30A5に変更、39Ω(ヒーター6Vに相当)の抵抗もショートさせました。
これで 約10V減となり、100Vで使ってもなんとか動作する範囲に入ります。

またセレンにシリコンを抱かせるとそれまで105VだったB電圧が120Vに上昇します。
この対応で 電圧変換器を使用せずとも100Vで問題なく使用できます。
ただこのままアメリカに持ち込んで使用しないでください
アメリカで使う場合は元に戻す必要があります。。

なおペーパーコンデンサー類も全数ではありませんが 外して確認したところ問題なく使えると
判明しました、さすがアメリカ製です。
さらに
オリジナルのケミコンはさすがに容量減で新しいものが付加されています。
漏洩電流も大丈夫でしたので このまま使うことにしました。






ラジオのシャーシ上面

動作試験中のG730です、中央に見えるブロックケミコンは使えませんが、その他の部品(一部の真空管は除く)は大丈夫でした。
破損もなく 状態は非常に良いと思います。
ただ 劣化した真空管の交換と調整で完全に復元しました。


なおIFTのコイルは2段になっています。
調整用の穴は上側に1個あるのみです。
下記のような調整棒で それぞれを上部から調整することになります。
慣れないと判り辛いですが 慣れると簡単です。






FM受信

FMの受信周波数はアメリカバンドで88MHz〜108MHzですが、これでは日本では使えません。
エンハシスの修正 など本格的な改造はできませんが 受信周波数を10MHzほど下側にずらす改造をしました。
発振コイルとRFコイルの同調コンデンサーにCH特性(黒)の5PFのコンデンサーをパラに接続しました。
厳密には 少しRFの方が大きいほうが良いのかも知れませんが、
厳密に測定できないので良しとしました。
さらに微調整で88MHzのところで78MHzが受信できるように 磁気コアの軸をずらせて合わせます。
一見針金ですが 実はコイル状に加工された針金でできていて 多少のカーブにも対応できます。
これで完了です。

原理的に76MHzから受信できるようにも可能ですが、目盛りが無茶苦茶だと困るので、このようにしました。

なお当初 FM受信は蚊の鳴くような小さな音でしたが、12AT7のGMが落ちているのが判明、
手持ちの12AT7に交換すると正常に音が出るようになりました。
GMが小さくなるとFMの周波数変換効率が極端に悪くなるようです。
MWについては大きな影響はありませんでした。
このラジオが作られた当時はFMラジオ専用の17EW8などの真空管が無い時代なので、
当時 VHF用によく使われていた12AT7が当然のように使われたのでしょう。

FMの同調は固定コンデンサーとインダクタンス可変のコイル(中の磁気コアが動く)の組み合わせで同調します。
磁気コアにつながる軸(1mmφくらいのコイル状の軸)を銅色のアームで上下する仕掛けです。
アームはプーリーに連動しています。




コイルに 固定コンデンサー5PFを抱かせる。
温度係数0(CH特性 頭が黒)のコンデンサーです。
ただシャーシの 奥深いところなので半田付けに苦労しました。


最後に

VRの音を上げると どうも音が歪む感覚を感じます。
19T8のグリッドリーク抵抗の断線を疑ったのですが、これは正常でした。
最後の手段でブロックケミコンの出力側のコンデンサーを切り離してみました。
アースへのリークは大丈夫でしたが 電極間リークを疑ってみました。
代わりに 47μFのコンデンサーを切り離した電極の保持金具もかねて追加してみました。

原理的には多少理解でき辛いのですが、これで音質も正常になりました。
あまり深く考えずに これで良しとしました。



修理完了した G−730

JOAKを受信しているところです。



2019年8月15日:2,548
2019年8月18日:2,729

修理のノウハウは「真空管ラジオ・アンプ作りに挑戦!」をご覧ください。

葛飾



ラジオ工房修理メモ

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