真空管ラジオの修理 ナショナル QA−300  ST管2バンドスーパー 

ナショナルの珍しいラジオが修理にやってきました。
外観は当時のものとしては綺麗です、程度は非常に良いと思います。
何故珍しいかと言うとST管の2バンドラジオだからです。
mT管の2バンドは少しも珍しくありませんが、ST管のものは%のオーダーしかありません。






修理着手時のシャーシ内部です。
ペーパーコンデンサーはぼろぼろです。
音量調整用VRは一度交換されています。
(途中で接続されている)
真空管をTV−10で試験してみました、5本とも大丈夫でした。
ACコードが古いものと新しいものが途中で接続されていますが、最終的には新しいものだけに付け替えました。

ここで真空管を抜いて電源トランスの試験をすることにしました。

ヒューズホルダーを見ると3Aのヒューズが入れられています。
外形が同じだと、何でも取り付ける人がいるので、困ります。
必ず1Aにしましょう。
ヒューズを1Aに入れ替えて、通電したがNGでした。
あちこち調べたがトランス以外不具合がありません。
結局トランスの上についている、ヒューズホルダーの不良(半田付け不良)ということが判りました、非常に珍しいです。


ヒューズホルダーを分解したところ。
下側の電極のひび割れが今回の不良原因。



ケミコンは不良でした、左側の新品と交換した。
経験的にこの時代のナショナルのラジオのケミコンはNGのものが多いようです。

単純な漏洩と言うより、ショート状態でしたが、
怪我の功名か、ヒューズホルダーの不良でラジオが助かりました。

もしヒューズホルダーが正常なら、3Aのヒューズとあわせ、トランスが焼けるか、真空管が劣化したでしょう。

新品のブロックコンデンサーに交換しました。
大量に買ってあったのですが、だんだん少なくなりました。
315V 22 22 22μF。

ペーパーコンデンサーは全て新品に交換しました。
これで完了と思ったのですが、やはりVRが不良です。
PU切替がありますので、付属のSWが切替式のVRを選ぶ必要があります。

電源用のSW付であれば、千石電商で安く売っているのですが、残念。
VRを交換、IFTの調整をしました。
1箇所だけピーク弱く検出しにくい部分がありましたが、残り3箇所はピークに調整できました。
MWは正常に動作するようになりましたが、SWがいま一つです。
調べてみるとところどころで発振停止しています。
グリットディップメーターでコイルを調べてみても大丈夫です。
結局 VCのアースベロの部分の接触が弱くなっているのではと判断しました。
接触部分を修理して、何とかバンド全体で発振するようになり、無事解決です。
ただ短波帯は6〜18MHzが受信範囲の、NSB放送開始以前の古いタイプのものです。
余り実用的ではありませんが、何とか受信は出来るようになりました。

喜んで受信しているとなんとなくカリカリという雑音が1〜2秒間隔でかすかに聞こえます。
現象からするとコイルの切れかかりです。
調べてみると先ほどIFTの調整でピークが弱いと心配していたコイル(6W−C5のプレート負荷)の不良でした。

写真の右側のコイルが不良でした。

この切り分けは意外と難しいです。



IFTは半断線でした。

巻き線を分解してみると緑青が間に浮き出していました。
これが半断線の原因のようです。

若しかしてこのラジオは海岸地方で使われたのかもしれません。

IFTは同じものがありませんので、単同調に変更して使うことにしました。


多少心配なのは出力トランスや他のコイル類が今後同じ現象(断線)を起こさないかと言うことです。
これを全部交換するわけにはゆきませんので、これで完了としました。


修理完了したシャーシ内部。
電源コードも古いコードとビニール線の途中接続だったが、
古いコードの部分は切り捨てて直接接続した。

なおVRも新品と交換した。
このラジオは交換部品が予想より大幅に多かった。


左側のダンボールはトランスの保護用です。

ヒューズホルダーの付いているラジオを修理する時は必ずこのようにします。

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2004年7月20日

2005年8月16日移転

2006年6月24日移転

修理のノウハウは「真空管ラジオ・アンプ作りに挑戦!」をご覧ください。




ラジオ工房修理メモ

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