真空管ラジオの修理 中国製真空管ラジオキット(bezs-6-1)修理に挑戦

2年前に購入して組み立てたラジオだそうです。
調整をして欲しいとの依頼です。


一応受信するが、コイルやトリマは無茶苦茶に動かしたとの事。

早速通電してみると発振してしまいます、バリコンを廻してゆくと半分以上抜けた位置でNHK東京2(693KHZ)がかろうじて受信できます。
バリコンを更に廻してゆくとJORF(1422)まで何とか受信できる様です。
JOAK(594KHz)は受信不能です。

配線にミスはありませんでした。
半田付け不良が2箇所ありましたが、これは部品が古いので半田が付きにくくなった為のようです。
本人は「ハンダ付けも初めての経験者で、部品と実体配線図をニラメッコして製作しました。」
との事ですが、ここまで組み立てられればベテランの域です、惜しむらくは調整のやりすぎです。
(ラジオ工房でもオリジナルのままの回路で完全に調整する自信は有りません)

このラジオの修理経験から
測定器が無い場合、「調整はしない方が良いのかな」と思うようになりました。
このラジオでそのまま調整すると発振をする可能性が非常に高いです。
組み立てたまま 使えば感度は悪くとも一応音は出るでしょう。
極論を言えば回路変更をしない限り、正常に調整できないと考えた方が無難かもしれません。



受信状態が異常なので、まず発振周波数を調べてみることにした。
バリコンに直接カウンターのプローブを付けると発振周波数が大幅に狂うので、
22KΩの抵抗を端子に半田付け、この先にオシロスコープのプローブをつけ、
これをカウンター入力とした。
念のため影響を受けやすいバリコンが抜けた位置でプローブをつけた時と外した時の周波数の誤差を確認した。
ソニーのBCLラジオICF−5900の受信範囲の一番周波数の高い部分で、局発信号を直接受信しながらモニターした、
プローブつきの時1650KHz、プローブを外した時1658KHzに移動、0.5%以下の変動だった。


上記条件で測定
  
957KHz バリコンの羽根が入りきった時
1161〜1238KHzの間は発振(ぶるぶる音)
1310 放送受信(693)
1571 放送受信(954)
1753 放送受信(文化放送1134)
1861 放送受信(1244)
2042 放送受信(JORF 1422)
2123KHz バリコンの羽根が抜けきった時  。


これは前回(平成17年12月)自分で組み立てたものです。
型名はGRS−6となっています。
前面のツマミが1個追加されています、改良型でしょう。
回路は殆ど同じようです。
前面にヘッドホーンのジャックとこの切替SWが追加された点が違うようです。



   組み立て体験記 GRS−6


   真空管ラジオ修理体験記目次


   福岡の加藤さんの製作 改造記もご覧ください。




トラッキング調整が出来ないので不思議に思い、DIPメーターを持ち出して測定してみました。
594KHzのJOAKを受信した時、DIPは500KHzくらいです、VCを動かすとDIPメーターも同期して動きます。
これはコイルとVCの同調回路は活きていることを示しています。
それでもトラッキングが取れません、良く見るとネジは回っているのですが、コアが中に落ち込んだままです。

何回もコアを廻したのでねじ山がすり切れてしまったようです。


このコアは基板の裏側にネジ止めされています、基板全体をシャーシから外す必要があります。
写真は分解したところです。
下側の止めネジの穴から楊枝をいれて、コアを押し出しました、やれやれです。

再度基板を組み込んで、配線もやり直しました。
今度は上手く調整できるのですが、動作が不安定です。
シャーシを振動させると雑音が出ます。
調べてみたら 低周波回路の0.022のコンデンサーが半田付けされていません。
上手く接触していたので気がつかなかったのでしょうか、あるいは芋半田状態だった可能性が有ります。
これ以外にIFTの端子にも1箇所半田が完全についていない場所がありました


写真の焦点が合わず、見辛いのですが、半田が全く付いていません、接触していただけでした。

見たことも無い形のコンデンサーです、中国製のコンデンサーは外観も違います。
このタイプのコンデンサーは半田付けが難しいです。


注意
使われている部品は未使用の新品ですが、製造後数十年を経過している物があります、半田の「のりが悪い」部品が当然あります。
汚れた端子などはよく磨いてください、最初は半田が上手く付いているように見えても 後日必ず原因不明のトラブルが起こります。
半田鏝もW数の大きなもを使わないと上手くつかない場所(ブリッジ ジャックなど)があります。

配線をあちこち触ってたら、今度は音が無茶苦茶大きくなったままです。


VRへの配線を触ると、音が極端に大きくなるので、取り外して分解してみました。
赤い矢印のカシメの部分が接触不良を起こしていました。
アースの半田付けが外れた状態になり、音量最大になったためです。
原因はVRの製作不良のようです、初めての経験です。
修理しても再発する可能性があるので、新品と交換しました。


でも交換してよかったです、
VRの本体を何気なく見たらB500KΩと書いてあるではありませんか、いやはや。
常識的にはこの様なものは使わないのですが。
このラジオ音の変化具合がおかしいとは思っていたのですが、BカーブのVRを使っているとは思いませんでした。
低周波の増幅度が高いので、この様になるのだと思い込んでいたのがいけなかったです。
このVRは間違ってキットに紛れ込んだのか、最初からそうだったのかは不明です。
最近販売されているものはA型が使われています。



回路図でも判るように6BE6のG2・G4へは1/2W 30KΩの抵抗で給電するようになっています。
抵抗の色が少し変色しています、触ってみると熱いです。
この部分は電流が流れるので、小さな抵抗では無理なのです。

6BA6のG2と共通に給電するために7.5KΩ 2Wの抵抗を2本直列(4W相当)にして使いました。
これは手持ちの関係で、この様にしたのですが、場合によっては10〜12KΩ(2ないし3W)を使用してください。
10KΩにすると感度は更によくなるでしょう。



IFTの半田付け不良が見つかったので、ついでに分解してみました。
コンデンサーの容量は表示値と同じでしたが、コイルのインダクタンスが多少小さいようでした。
小さい方のコイルの同調容量を少し増加させて見ました。
(黒い頭のセラミックコンデンサーを追加)

これで455に同調するようになったのですが、もう1個の方のIFTはそのままでしたので、
残念ながらラジオとしては455に統一は出来ませんでした。
もう1個取り外して分解する元気はありませんでした、465KHに調整して終わりとしました。


ここまでやって、トラッキングの調整に再度挑戦しました。
これも上手くいったのですが、どうも感度が悪いです。
回路上問題は見つかりません、念のためダイオードを交換してみました。
2AK11が付属していたのですが、NEC製に交換したら少しマジックアイが余分に閉じます。
結果的に交換したままとしました。
特性を簡単に比べてみたのですが、2AK11は特に異常はありませんでした。

行き着くところはアンテナ側コイルを疑いました。
トランジスター用のバーアンテナとポリバリコンで同調回路を作り、
これを接続してみると結構良く受信します。
写真は試験中の模様です。

総合的に判断して、ここまでとしました。

中国製真空管ラジオキット(bezs-6-1)の回路変更

出来るだけオリジナルな部分を残しながら、改良をしてみました。
見方によっては色々ご意見もあると思います、ご指摘はラジオ工房掲示板にお願いします。
@強電界地域で使うことを考え6BE6にもAVCをかける。
A上記のためスクリーングッドの給電は共通にする。
B6BA6にカソードバイアスをかける。
C音質調整回路の12AX7のPP間の360KΩは省略。
D6AR5のプレート回路に0.005μFのバイパスコンデンサーを追加する。
E6AR5のカソードのパスコンを取り外す、これで少し低周波のゲインが減る。



回路図は現行品のものです。
ヘッドホン端子と切替SWの部分が現物にはありませんでした。
赤字が改造部分です。

注意事項
@入出力用のジャックは造りが良くありません、接触不良を起こす事が多いです。
おかしな動きをしたらジャックの付近を軽く叩いてみてください、雑音が出ると怪しいと判断できます。
また同じように他の部分でも軽く衝撃を与えた時に雑音が出る場合は不良箇所(半田付け不良や接触不良)があります。
A熱容量(W数)の大きな半田こても併用しないと、上手く半田が付かないところがあります。
1種類の半田鏝だと相当厳しいかも知れません。
B調整は無暗にコアを動かすと壊れます、慎重にしたほうが無難なようです、日本製と同じ感覚では駄目です。
C部品は必ず良品とは限りません、稀に不良品が紛れ込んでいます。
Dコアのネジは非常に壊れやすいようです、無暗に廻し過ぎないように。
測定器も無く 動かしすぎてしまったら、IFTのネジは一番締め切ったあたりに揃えてください。
この部分をスタートに調整すると良いでしょう。


全く音が出ないキットの修理(2012年8月8日)

全く 音が出ません。
微かなハム音はしますので、低周波部分は大丈夫のようです。
トランジスターラジオでモニターしてみると、発振していないようです。
DIPメーターでOSCを調べてみてもディップ点もありません。
バリコンの配線を外して 見るとバリコンがショートしているではありませんか!。
コイル基板を外すと下側に下図のようなネジが現れます。
このネジをきつく締めたために バリコンの羽根をショートさせていたものです。
配線を含め 組み立て方は見事です。
自分が配線したものより 綺麗です。



この現象は なかなか判りませんので、組み立てた時によく確認しておいた方が無難です。

バリコンの下側にゴムブッシュがあるが、この部分でネジが上まで飛び出しすぎていた。



これで発振はするようになったのですが、発振周波数が高すぎます。



コイルのコアも工作精度が悪く、うまく動きません。
無理をすると、割れる恐れがあります。
パディングコンデンサーを360PFから430PFに変更することにしました。
本来はコイルを巻き足すべきですが、緊急避難です。

」」

これでIFの調整をしたのですが、IFTの初段 上側のコアを動かしても反応がありません。
(3つ上の画像のIFT ×印が付けてあります)
どうもこのコイルかコンデンサーに不具合があるようです。
コアとネジの接着が外れている可能性もあります。
感度は良くありませんので、原因はこのIFTにあると思われます。




JOKRを受信しているところ。
6BE6にAVCを加える 改良型の回路で作られています。
ただAFは12AU7の2段増幅なので 利得がありすぎです。
スピーカーの不具合ともあり、音質は良くありません。




2006年6月16日
2006年6月23日
2012年8月8日:7,703
2023年12月6日


IFT説明書

コイル説明書



目次



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2006年6月24日

修理のノウハウは「真空管ラジオ・アンプ作りに挑戦!」をご覧ください。




ラジオ工房修理メモ

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