真空管ラジオの修理 エルマン HS−78

エルマンのラジオと言うので、ST管とばかり思い込んでいたのですが、荷物が到着したらmT管のレスラジオでした。
この会社は戦前からの名門ですが、20年代にラジオの生産から撤退したと思い込んでいました。
そういう意味では非常に珍しいラジオと言えるかもしれません。

 ラジオの修理を自分でやる方は真空管ラジオ・アンプ作りに挑戦!、や真空管式スーパーラジオ徹底ガイドも参考にしてください。
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初歩的なことでも結構です、ただし他人が解るように書いてください(神様や占い師にするような経緯を省略した質問は返事不能です)。

当方に依頼される方はラジオ修理工房をご覧ください、こちらは有償です。
 


凄い 埃です。




キャビネットは洗剤で洗う事にしました。
ダイアル機構も取り外し、洗浄しました。


修理着手前のシャーシ内部です。


試験してみたら電源のブロックコンデンサーが駄目でした。
リード線タイプのブロック型電解コンデンサーは使えるものはまず無いと思ったほうが良いようです。
恐らく 密封できない為でしょう。

このラジオで不思議な事がありました。
キャビネットの底面に貼り付けてある回路図と実物に違いがあるのです(電源の35W4の周辺、PL配線)。
恐らく回路図の間違いと思われます。
名門メーカーの製品としては、いただけない間違いです。
この部分の回路は実物に合わせて修理しました。
回路図では35W4のプレートはPLと250Ωの並列回路から接続されていますが、実際はプレートと35W4の6ピン(ヒータータップ)がジャンパー線で結線されていました。
普通の配線図どおりになっていました。
もう1つ気になったのは35W4のカソードに100μFが入れていることです、実物もそのようになっていましたので、この部分は元通りとしました。

ただこのラジオには理解できない部分が有ります、
ダイアルの指針で、構造上 切り欠きは上を向いていないと外れやすいのですが、下を向いています、それも1個欠けています。
昔修理した時に壊したのかと、最初は軽く考えていたのですが・・。
持ち主の話ではTBSしか聞かなかったようで、気がつかなかったのではとのこと。


ダイアルの糸かけ部分が下を向いています、それも1個欠けています。



修理完了して、IFTの調整も終わり、目盛り合わせをしようとしたところ、
ダイアルの指針とバリコンの回転方向が逆になっている事が判りました。
写真を見ると判りますが、ダイアルの糸が右方向に動くと、バリコンの羽根も右回転します。
これは周波数が低くなる事を意味します。

受信には差し支えありませんが、幾らなんでもNHK1(594)が1500くらいで、
JORF(1422)が600くらいで受信できたのでは、みっともないです。
どうも昔修理した時に間違って糸かけをしたようです。
25年間放置したままだったそうですから、相当昔の話です。

早速修正に取り掛かりました。
これが悪循環の始まりになろうとは!。


交換中 軸が簡単な衝撃で折れてしまいました。
折れた部分を覗くとひび割れらしく見えるので、経年劣化だったのかもしれません。
他のラジオから同じ構造のものを移植、先端部分はオリジナルのものを接続して修復しました。
こう書けば簡単ですが、糸かけまで含めて1日かかってしまいました。


修理完了時のシャーシ内部。


糸かけの写真。
構造上、望ましい形では無いが、こうしないとダイアル目盛りと一致しない。
もう少し良い方法があるのかも知れない。


軸の組み込み作業時、コイルを断線させてしまった。
写真は修理完了時の様子。
Qメーターで測定したら30強しかなかった、意外と低い。
これでも充分発振する。




ダイアル指針の取り付け、「爪が欠けている」 「下を向いている」のハンデがあり、やむなくエポキシで接着した。
望ましい事では無いが、ほかの固定方法では外れる恐れがあります。
次回 修理の時、上手く外れなければ 糸かけからやり直す必要があるかも。



修理完了時のエルマン HS−78。
長年のシミは落ちませんでしたが、比較的 奇麗になりました。

最後に
製造後半世紀経過しています、経年変化で部品が全体的に劣化しています。
使用しないときはコードをコンセントから抜くなど、火災予防に充分注意ください。

2006年10月13日


修理のノウハウや資料については下記の書籍をご覧ください。




ラジオ工房修理メモ

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