真空管ラジオの修理 シャープ AR−310の修理



シャープ AR−310 は昭和27〜28年に製造された機種です。
AR−310 定価 16,500円
6W−C5 6D6 6Z−DH3A 42 80BK 6E5の6球。

ラジオはプレーヤー(別売)がつけられます。
これを接続することで、電蓄になります。
この為 このラジオはPU(プレヤー)に切替た時に、ラジオの音が混入しないように局部発振を止める仕組みがしてありました。
ここで使われていたのは2回路の接点を持ったスイッチつきVRです。
ただ特殊なVRなので、現時点入手できません、
今回の修復はこの回路を省略して修理しました。

固定抵抗の確認

抵抗は再利用できる可能性が高いです、
ただコンデンサーと組で(並列)に接続されているものはリード線が短すぎるので新品と交換したものがあります。
6Z−DH3Aのプレート負荷の250KΩは370KΩに変化していました、これでも使えますが、交換した方が無難かもしれません。

表示 実測値 判定
30KΩ 交換
15KΩ 3W 16KΩ そのまま使用
300Ω コンデンサーと組で交換
2MΩ 2.4MΩ そのまま使用
5MΩ 5.6MΩ そのまま使用
250KΩ 370KΩ そのまま使用
500KΩ 600KΩ そのまま使用
50KΩ 68KΩ そのまま使用
500Ω 500Ω そのまま使用
2MΩ 2.4MΩ そのまま使用
1MΩ 断線 交換
3KΩ 3W 3.2KΩ そのまま使用

コンデンサー(ペーパーコンデンサーとチタコン)

表示 判定
220PF   50V耐圧で可
0.05μF 交換 250〜400V耐圧(6W−C5や6D6のスクリーングリッドバイパス用)
0.05μF 交換 50V耐圧で可
0.05μF 交換 50V耐圧で可
200PF   50V耐圧で可
250PF   250または400V耐圧
0.002μF 交換 50V耐圧で可
0.1μF 交換 400V耐圧(数μFのケミコンでも可)
0.01μF 交換 250または400V耐圧
0.02μF 交換 630V耐圧
0.005μF 交換 630V耐圧(実際はAC250Vの0.0047μFを使用)
0.005μF 交換 安全規格認定品(AC電源回路用)

ブロック型電解コンデンサーの漏洩試験 1mA以上でNG この為交換した。
ケミコンテスターで試験して、漏洩電流が少なければそのまま使用します。
ただ容量の減少は確認できませんので、動作試験でハムが多ければ、容量の減少と判断してください。
マジックアイソケットへの配線:劣化が激しいので交換。
PL(ランプ):断線したものを交換。
ツマミ:オリジナルのツマミ紛失の為、普通のねじで固定するつまみに交換、この為軸を加工する必要がありました。
オリジナルのツマミが使える時は細工の必要はありません。
VR:これは新品に交換した。
  オリジナルは2回路のON OFF接点のスイッチつきだったが、このタイプは現在入手不可能。
  スイッチなしタイプに変更した、この為PU回路は使用不能。
  オリジナルの発振回路はアース側をPUに切替時切り離す設計になっていた、
  これはPUに切り替えた時、ラジオが混入するのを防止する為です。
ロータリースイッチ:これはオリジナルが使用できた。
            なお接触不良でもロータリースイッチに接点復活剤をかけてはいけません。
            特に高い

電源コード:使えるものもありますが、新品に交換した方が安心できます。
100Vの電源回路に直接接続されるコンデンサーは安全規格認定品に交換しました。



ヒューズ:1Aの物か確認してください、極端な例ですが5Aのヒューズや針金が使われていることがあります。



修理完了したシャーシ内。
ブロック型のケミコンが不良なので、チューブラ型のケミコンに交換しました。




バリコンを固定しているゴムが劣化、軸が水平でなくなっています。
この為プーリーが垂直でなくなり、糸が外れ易くなっています。
このような現象は、製造後半世紀以上経過したラジオでは良くあることです。
目視するだけで傾きが判るほど酷い状態です。

ダイアルの糸とプーリーが同じ平面になるように工作する必要があります。

ゴムが劣化しているので、薄いゴムの板を挿入、傾きを直した。
これでバリコンの軸が水平になった。
バリコンのボールベアリングにはグリスを入れるとスムーズに動きます。
バリコンの羽根に接点復活剤やCRCなどの化学製品をかけないように注意してください。
皮膜が出来て静電容量が変化し、修復不能の障害を起こします。



横から見たところ、バリコンの傾きが無くなり、プーリーが垂直になったことがわかる。



ダイアルの糸かけです。
ダイアルの糸は専用の物を使用したほうが便利です。
スプリングで適当なテンションを加えます。
きつからず、緩からず意外と調整が難しいです。
ツマミを回した時、気持ちよくダイアル指針が動くようにします。
うまくゆくまで何度も挑戦してみてください。
ダイアル糸の太さは0.6とか0.7mmくらいが良いようです。
あまり細いとスリップします、太いと軸に巻きつける時不便です。

この機種の場合は前面パネルを取り外して行いました。
それぞれ、設計思想が違いますので、臨機応変に対応する必要があります。


普通3回巻きつけるのですが、この機種の場合2回です。
軸もアルミパイプを接着して、延長しています。
これはオリジナルの差し込み式のツマミが紛失したため、
普通のツマミに交換する為です。

 ラジオの修理を自分でやる方は真空管ラジオ・アンプ作りに挑戦!、や真空管式スーパーラジオ徹底ガイドも参考にしてください。
不明な点はラジオ工房掲示板に実名で投稿ください、修理ノウハウの提供は無償です。
初歩的なことでも結構です、ただし他人が解るように書いてください(神様や占い師にするような経緯を省略した質問は返事不能です)。

当方に依頼される方はラジオ修理工房をご覧ください、こちらは有償です。
 

2007年7月21日




ラジオ工房修理メモ

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