真空管ラジオの修理 コメット99 九十九電機製真空管ラジオキット FM MW 2バンド


バーアンテナの取り付け冶具とコアがありません。
配線もあちこち外れています。

分解してみると、シャーシ内部は無茶苦茶です。
出力管と12AV6付近はヒーターの配線すら有りません。
素人が組み立て途中で、放置した物の用です。
ただ抵抗が黒こげの物があり、怪しいとは思ったのですが・・。
ブロックケミコンも駄目になっていました、普通はこんなことは無いのですが。




まず出力管のソケットが破損しています。
配線を外す時に無理に引っ張ったためでしょうか?。




ソケットを交換することにしました。
ただネジが2.6mmの物しか穴に入りません。

手前のネジが普通の3mm 奥が2.6mmのもの。


アースベロが無い部分のシャーシに半田付けしてあります。
一見大丈夫に見えたのですが、つついてみると半田付け不良、芋半田が続出。
このラジオはシャーシアースが多用してあり、全てがこの不良でした。
素人に組み立てさせるキットとしては全く不親切な設計です。

最初の状況(外観は良好だが) 半田付けを調べてみると 芋半田 再半田付け後


このラジオ全てに共通する不良として、シャーシアースの半田付け不良がある。
熱容量の小さな半田こてでは無理な作業です。
10箇所くらいあり、再半田付けに泣かされた。
OSCコイルの断線。
発振しないので、調べるとコイルの断線でした。
タップの部分での断線でしたから、分解修理して使うことにしました。



誤配線の例
感度が極端に悪いので、調べると、MWの配線がFM用バリコンに接続されていました。
これを修正して、受信してもまだ感度が悪いです、いろいろ調べると、バリコンのショートでした。
更に調べると、付属トリマの部分でのショートであることが判明しました。

MWの配線がFM用バリコンにしてある。




トリマに使われているマイカが破れていました。
この為、バリコンがショートした状態になったようです。
手持ちのマイカを利用して修理しました。


バリコンの容量を測定すると340pFでした。
バーアンテナや
取り付け金具がありませんので、TR用のバーアンテナを工作して組み込むことにしました。
勧めらる方法では有りませんが、FM用IFTの頭に接着することで組み込みました。
取付金具が欲しいところです。

このようにして、動作させると、雑音が多くて、上手く動作しません。
OSCコイルの関係か、発振が強過ぎるのかもしれません。
手持ちの12BE6に交換して、上手く動作する物があったので、交換しました。
本当の原因はOSCと思われるのですが、止むを得ません。






回路図を見ても分かるように、この機種はヒューズがありません。
危険なので、シャーシ内部にヒューズを組み込みました。



35W4をヒューズ代用にした機種は有るのですが、シリコン整流の機器でヒューズ無しとは思いませんでした。
FMのIF部分は配線が酷いので、大部分取り除きました。
その部分にヒューズホルダーを組み込んだわけです。
35W4をつかったものはこの真空管をヒューズ代用にしたものは多いのですが。

ブロック型のケミコンも不良でした。
FM受信用の1KΩの抵抗が焼けていましたので、シリコン整流器も壊れて、あるいはACがケミコンに加わったのかもしれません。
この時代のケミコンが酷い絶縁不良になるのは、確率的に低いですが、例外的故障なのかもしれません。
このラジオの組み立て方から見て、動作したことは無いはずなのに、組み立て不良であちこち壊してあることが判明しました。
シャーシアースも素人向けのキットを考えていない方式ですし、基本設計不良と思われます。

FMの受信範囲がアメリカバンド(88〜108)になっているので、あるいは輸出用の残り機材をキットにしたのかも知れません。
とにかく不思議なラジオでした。


良く見るとダイアル糸が切れかかっています。
このままだと断線する可能性があります。


最終的にダイアルの糸をかけなおしました。

トリマの調整のみでは目盛りが合いません、固定コンデンサーを追加して調整。
アンテナ側の調整は無理でした、設計に問題がありそう。

なお回路図でも分かるように変換段にはAVCが加えられていません。
したがって、放送局ごとの感度差は大きいです。





裏蓋はベニヤ板です、この種の製品は見たことがありません。
最初は誰かが後で作ったのかとも想像したのですが・・。


マンションにお住まいの方が使われるので、念のためリード線アンテナを追加しておきました。





総合的な感想:
率直に言って 大変な作業を引き受けてしまった感じです。
ここまで、あちこち壊してあるとは想像できませんでした。

もともとの設計も良くないようです。
MWだけでも何とか動作するようになりました。
MWだけで予定の3倍以上の工数がかかってしまいました。

 ラジオの修理を自分でやる方は真空管ラジオ・アンプ作りに挑戦!、や真空管式スーパーラジオ徹底ガイドも参考にしてください。
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当方に依頼される方はラジオ修理工房をご覧ください、こちらは有償です。
 

2009年4月30日:134 




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