真空管ラジオの修理 201A 大正時代?の4球式受信機

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当方に依頼される方はラジオ修理工房をご覧ください、こちらは有償です。
 

昭和初期と思われる4球受信機の修理依頼がありました。
依頼主からは大正時代のラジオとのことですが、大正の可能性もありますが、昭和初期と考えた方が無難でしょう。
どちらにしても大正末期から昭和4〜5年にかけての 極めて初期のラジオと思われます。
昭和4〜5年からエリミネーター受信機が出始めますので、普通は改造されて使い続けたのでしょうが、このラジオはそのまま保管されたようで、
そう言う意味からも貴重と思います。


外観
後ろの蝶番が外れかかっつていますが、全体的に程度良いです。






4本の真空管が使われています。
まず真空管の試験をしてみました。
残念ながら4本中3本が断線、1本は真空度低下です。
2〜3本は何とか使えると期待したのですが、誠に残念。
トランスも2台との断線しています。
これはある程度予想済みです。

少し前まではまな板配線用の低周波トランスも内田ラジオで売っていたのですが、
電話したら売切れだそうで、昭和10年代に使われていた形式なら在庫が有るとのこと。







角型の裸線で配線されていて、放送開始初期のラジオの特徴を示しています。
配線を調べると、
201A RF増幅。
201A 検波
201A 低周波増幅
201A 電力増幅

配線も間違いは無いようです。


念のためDIPメーターで調べると
RF段の同調周波数は590〜1700Kc
検波段の同調周波数 520〜950Kc

これでは持ち主希望の1,440Kcの受信できません。
コイルの巻き替えが必要なようです。

悩み
保存状態がきわめて良いので、現在入手できるトランスを使って動作させるには忍びないところです。
球も4本の入手はいやらしいです、1〜2本なら何とかなるのですが。
修理した方が良いのか、このまま保存した方が良いのか悩むところです。
自分の価値観では修理した方が価値が下がると思うのですが。

依頼主と相談中結局修理する事になりました。

ラジオはものすごい大きさで、恥ずかしながら置き場所が無いので、外箱は一旦返却することし、本体のみを預かりました。
2月間くらいを目処に修理したいと思います。

まずトランスの断線対策です。
後で交換したのか、当初からそうなのかは不明ですが、2種類のトランスが使われています。
どちらもプレート側が断線しています。
表示が無いので、何ともいえませんが、1:3のトランスと思われます。
当時は増幅率を稼ぐために偶には1:6と言うのもあったのですが、断線のため、確認は出来ませんでした。





中を開けてみるとピッチは詰めてありませんでした。
最悪 自分で巻く事も考えましたが、耐久性も考えプロにお願いする事にしました。
三重の西崎電機に巻き替えを依頼しました。


数日で返送されてきました。
代金は@3,500円でした。
消費税 往復の送料 送金手数料などを入れて@約4,500円でした。
惜しむらくはプラスネジで組み立ててあるので、
これはせめてマイナスネジに交換したいと考えています。


残念ながらこれではいくらなんでも使えません。
要求が贅沢すぎるのかもしれません。


「鳩目」と工具。
合わせて210円。


やっと完成した1:3低周波トランス。
悩んだ末「鳩目」を購入してくる事にした。
幸い100円ショップで工具も購入できた。
鳩目で綺麗にカシメられた。
なお左側のトランスはマイナスネジで止めた。

真空管もアメリカから無事到着しました。
いよいよ修復ですが、その前に電源を準備する必要があります。
これが以外に手間がかかりました。
試行錯誤で何とか電源も準備できました。

仮設電源を使って動作確認。
RF増幅と検波の2球式で確認。


低周波増幅も含めて試験しようとしたら、NG。
よく調べたら、ソケットの不良と判明。


出力段の201A用のソケット不良です。
取り外して、修理しました。


右は修理(修正)完了後のソケットと201Aを実装したところ。

検波用のグリットリーク。
抵抗は無限大。
コンデンサーは75PFでした。



抵抗とコンデンサーを半田付けして、付加する形で修理しました。


グリットリークを取り付けた底面(まな板の下側です)。


これで全部の真空管をさして、動作させて見ました。
率直に言ってよい音では有りませんでした。
同調も「非常に」と言って良いほど難しいです。
何しろ調整箇所が多すぎます。
@検波の同調
A再生調整
B高周波増幅同調
C中和
D高周波増幅ヒラメント電圧調整
E検波管ヒラメント電圧調整
F低周波増幅ヒラメント電圧調整


3球式でも使えるように、アンテナ端子をもう1個追加しました。
赤色のターミナルです。
これはこの部分にあった丸穴をそのまま利用しました。


RF無し(3球式)のアンテナ端子(赤いもの)を付加しました。
空いた穴を利用しましたので、復元は簡単です。


シャーシの裏側です。
アンテナターミナルから200PFのマイカコンデンサーを経由して
初段の201Aのプレートに接続してあります。

4球式に戻す時はこの配線を外すだけでOKです。


赤いプラグはアンテナリード。
黒色はアース線。
真空管は4本ささっているが、実際動作しているのは3本。
RFを外したので、受信動作は多少簡単になりました。
それでも
@同調
A再生コイルの位置調整
B検波管のヒラメント電圧調整による再生調整。
(出力管のヒラメントはそんなに調整しないでよい)

音はお世辞にも良くない。
どうも原因は低周波トランスにありそう。
巻数が足りないのではと想像される。
プロにお願いしたトランスだが?。
現在ではこれで諦めざるを得ないのでしょうか?。



B電池は単3を使うと良いのですが、取敢えず受信してみる為に
006P用の金具を準備しました。
100円ショップで2個100円の006Pを10個買ってくれば大丈夫です。
電流はTRラジオ並ですから、十分使えます。

   


最後に大事件が発生(発見)

これで完成と思ったのですが、もう少し音を何とかしたいと思い、トランスを分解してみました。
今までの経験で、トランスの巻数不足の音に近いと思ったからです。
今まではプロにお願いしたのだからと信じていたのですが、
率直に言って驚きました、中は隙間だらけなのです。
まき枠を使っているので、多少効率は良いかもしれませんが、それにしても。
念のため巻き回数を調べてみる事にしました。


隙間が多い。
隙間が多いことは 巻回数が少ない可能性が高い。

右側は昔使われていたコイル。



現在ブリッジが故障中なのでインダクタンスは測定できませんでした。
コアの隙間に0.15mmのウレタン線を20回巻き、
1次のPB間に100Vを加えて、この巻線の電圧を測定します。
これで何回巻いてあるか確認できます。


1次線から100Vをいれ、隙間に20回巻いた巻線の電圧を測定してみました。
なんと1V出ています。
逆算すると2000回しか巻いていない事になります。
普通は3000〜3500回は巻かないとインダクタンスが不足すると言われています。
プロにお願いしたので、そこまで注文はつけなかったのですが。
これでは音が悪いのは仕方が有りません。
さてどうするか。
この巻き替えをお願いした三重の西崎電機に問い合わせ中です。

本件
さらに細い線で巻きなおしていただける事になりました。
問い合わせて3時間足らずで、ご返事いただきました、すばやい対応感謝。
最近のコアは良質なので2000回でも大丈夫だそうですが、
何しろラジオ創世記のコアですから、沢山巻かないと如何ともし難いのでしょう。

巻き換えたトランスが届きました、すばやい対応感謝。


念のため、内部を開けてみました。
0.08mmφで3,000:9,000で巻いて頂きました。
抵抗値は740Ω:2400Ωでした、前回は240Ωと740Ωでしたから、
巻数と線が細くなった結果でしょう。
でもこれはあまり意味がありません、参考値です。





試験中のラジオ。
素晴らしい音とは言いませんが、大幅に改善されました。
やはり巻数は音質に相当影響します。

巻き替えを依頼してよかったです。
なお左端の201Aは不良品です。
本品は3球ラジオです(0−V−2)。

電源は
バイアス−4.5V
A電源  6V    
B電源  45V   5+1.5mA
      90V   5mA


同調は左側のバリコンを動かして行います。
再生は再生コイルの結合度調整(再生1)と
201Aのヒラメント電圧調整(再生2)で行います。
ただ再生2は201のヒラメント電圧を調整するので、
多少熱慣性があり、調整はゆっくり動かしてください。
ヒラメント電圧を5V以上に調整しないように注意しましょう。
電源SWはA電池の切断のみです。
取り扱いには十分注意ください。

修理を終わって

このラジオの修理は骨董的価値を維持しながら動作品に修理することを大前提に行いました。
価値観の解釈には各自色々あると思いますし、音さえ出すのであれば、やり方は他にもあると思います。
なお電池の接続にビニール線を使っている事に異論があると思いますが、これは原理的に簡単ですので、
持ち主の考えによって交換してください。
本体さえ元通りならどのようにでも変更できます。

   



2003年4月22日
2003年4月25日
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2003年5月13日
2003年5月15日
2003年5月17日
2003年5月24日
2003年5月26日
2003年5月27日
2003年5月30日
2003年6月1日

2005年8月16日移転

2006年6月24日移転

修理のノウハウや資料については下記の書籍をご覧ください。


(写真原板:radio16 640×480)



ラジオ工房修理メモ

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