ナショナル R−288(R-299) 修理のヒント 

この機種の修理は簡単ではありません。
MWは普通の6石ラジオに近いのですが、SWの完全な修理 調整は非常に難しいです。
SWのANT OSCコイルはそれぞれ1個です。
周波数範囲の設定や、トラッキング調整にはトリマコンデンサーが多用されています。
どの部分が、どれに相当するかは判別するには時間がかかります。
(個々のトリマの機能の問い合わせはご遠慮ください)
この判別が自分で出来る、技術に自信がある方のみ、SWの調整に挑戦してください。


MW受信はAFを除き、6石TRラジオと殆ど同じ構成です。
周波数変換 CONV  (T1) TR増幅 (T2) TR増幅 (T3) 検波 (VR) ICでAF増幅の仕掛け。 
短波の場合はMIXとOSCが独立している。


コイル類の位置関係。
T3のトランスには2つの検波回路があり、1個はAF用、もう一つはLED駆動用。
LED駆動回路はTR2石。
この2石はイヤホーンジャックの近くにあります(写真右上)。

MW受信時 無音15mA(無信号時は12mA)程度。

RF部分が生きていれば、音量調整用VRのホットエンドに信号が出る。
これはクリスタルイヤホーンで、充分な音量が得られる程度。
ただしVRの中点の信号レベルは一般に低いので、要注意。
AF段が生きてるか故障かは、この部分にAF信号を入れれば判明します。
バリコン上のトリマの機能は刻印されている。
MW ANT  MW OSC、 SW ANT  SW OSCの4個。
但し単にSWと書かれていますがSW4の調整用です、SW1用ではありません注意ください。


AF ICの入力と出力。
ICの品名は部品の陰で読めないがXXX82Lと書かれている。
なお三菱マークらしきものあり。

VRとVCを交換したR-288の修理体験記 (2014年1月6日)

非常に珍しい故障です。
音量調整でがりが酷く 最終的に交換することにしました。
ただこの時代のVRは取付寸法や取り付け方が多種 多様で 互換性はまずありません。



手持ちのVRで寸法が同じものがありましたので、
取り付け方を工夫して組み込みました。

交換したVRは新品です。


これでOKとばかり MWを受信してみると JOAKの受信位置が変です。

周波数の上の方はどうかと動かしてみると 強く回さないと 動きません。
そのうち 無音状態になる 帯域があることがわかりました。
全く 無音状態になるので バリコンの羽根がショートしているようです。
ダイアルを動かすと段々ひどくなります。
これではとても使えませんので 交換することにしました。


表面から見たバリコンです。
基板の裏側はダイアル目盛になっているので 交換は非常に大変です。

手持ちのRー299からバリコンを抜き取り 移植したところ。
前面のダイアル機構を組み込んであります。

なおRー288の後継機がRー299になります。
バリコンは互換性があり、画像中でVCと書いた位置に組み込まれていました。
ダイアル機構の裏側が バリコンの実装位置です。
外したところの画像は 下 2枚目の写真を御覧ください。


ダイアル駆動機構を取り外し、基板面が見えるようにしたところです。
バリコンの取り外しは意外と大変です。 下に赤いLEDが見えるがこれがダイアル機構の目盛板の一部。


取り外したバリコン
容量を測定するとmax270PFの等容量バリコンだった。


今回 不良だったバリコンとVR。
VRは取付部分を残して取り外した。



JOAKを受信中のRー288


 参考までに
昔のラジオを修理する場合 同じ形名のラジオを持っていないと修理できないことがあります。
それは交換部品の入手です。
新品が入手できれば良いのですが、現時点まず無理なので 移植して修理することになります。
中古品では心配ということもありますが、もともと製造後数十年を経たラジオを修理しようとするのですから、
同じレベルです、中古品がいけないなら 修理対象のラジオそのものも 皆駄目ということになります。
生きている部品を活用して よみがえらせるのです。

ただ中古品で注意しなければ いけないのは 経験上 通電すると壊れやすい部品の再利用は避けるということです。
一番良い例がソニーや三菱のTRなどは再利用はしないほうが無難です。
これら半導体は足が銀メッキされていて エポキシ内部に染み込み 故障を起こすからです。
組み込んだ時はよく動作しても 後日故障ということが起きます。
他社のTRでも足が銀メッキされているものは使わないほうが良いでしょう。
これらは未使用品か互換品を使うようにします。

ケミコンは新品が入手できますので あえて中古品を使うことはありません。
特注IC類も使いたくないのですが、他に方法が無いので 移植して利用するしかありません。


参考写真 

R−288(写真上)と R−299(写真下)は殆ど同じです。
部品の色が違うのは製造時期の関係と思われます、厳密にはトリマが1個省略されています。



このラジオは拉致問題の放送にも登場しました。

最近入手したナショナルに不具合があり、修理をお願いしたいと存じます。
状態ですが、短波のうちSW2が全く聞こえません。
またSW2以外のバンドでは周波数にズレが生じています。
MWは良好です。

この機種のSWは1〜4まであります。
アンテナコイルと発振コイルは全バンド共通です。
各バンドともに直並列のコンデンサーとトリマをそれぞれ切り替える方式になっています。
したがって 常識的には特定のバンドが受信できない場合はコンデンサーとトリマの不良と言うことになります。


受信しながら、局発の漏れをモニターすると、SW2のみ発振していないことが判明しました。


裏側の蓋を開けたところ。

分解しました。
良く考えられた構造です。
発振回路をオシロスコープでモニターすると、受信しているバンドも全体的に弱い感じで、
SW2に切り替えると全く発振しません。
まず SWで発振するよう対策をしました。
モニターしてみると発振周波数が少し高いようです。
SW2関連のトリマや固定コンデンサーを1個ずつ取り外して確認しました。
残念ながら表示容量との差は確認できませんでした。

最後の手段でディップメーターを動員して、カットアンドトライで容量を可変して、
周波数を低くなるようにあわせました。

最終的に部品を1個追加して、解決しました。



R−288の修理(2021年1月5日)

電池動作ができないR-288の修理です。
原因は電池金具の錆でした、新品の金具を工作して 組み込みました。
液漏れしていて配線を変えるなど 意外と作業は大変でした。

ただこの機種の嫌らしいところは調整です。
MW SWの5バンド それぞれに周波数の上下で調整が必要です。
Sメーターがこの機種には無いので 工夫が必要です。
それと 目盛りが中途半端なところで区切られているので 周波数が性格に読めるSSGが必要です。




調整にはSSGとレベル計つきのスピーカーが必要です。
同調表示はLEDがしますが 微妙なピークの確認はできません、アナログメーターは最適です。

なお この出力計つきスピーカーはRF−5800のケースとスピーカーを利用したもので、
出力トランスで8Ωから5Kにステップアップして、全波整流してメーターを振らせる仕組みです。
なお感度調整用にVRも組み込んであります。




このスピーカーを288に接続して 調整します。



なお 画像にはアンテナなどが接続されていませんが、
調整時にはダミーアンテナなどを接続して 実使用状態に近い方法で行います。


まず455KHzでIFの調整 数値の1 2 3がこれに該当します。
(IFの調整はバーアンテナに SSGの出力リードを接近させれば大丈夫)

その後はMWの低い周波数を4であわせ 5で コアアンテナ(バーアンテナ)のコイルの位置を最適にします。
(ピークを確認することが大事です)。
高いほうの周波数は6で目盛りに合わせ ) 7でピークになえるよう調整します。

短波のRFコイルはバー(磁気コア)アンテナに巻いてあります、全バンド共通です。
(9のコイル)
なお8のコイルはSWの発振コイルで これで3.9MHzに目盛りあわせをします。

以下 順次 数値の順に 偶数は目盛りあわせ 奇数は最高感度になるよう 調整します。
ここで最高感度は出力計がもっとも大きい場合です。

最後は22 23で15.4MHzを調整して終わり。


2005年1月28日
2005年6月5日 R−288とR−299の部品面の写真を追加。

2006年6月26日
2010年7月27日:SW2が全く受信できない故障。
2014年1月6日:2,701 VRとVCを交換したRー288の修理体験記 
2021年1月5日:5,491





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