ラジオ少年のトランジスターラジオキット(KIT−2)の不具合 始末記

この件に関しては 最初の質問が8月1日に嶋村さんからあり、掲示板で話題になりました。
井上さんや岩淵さんはじめ多くの方からご意見をいただきました、ありがとうございました。
しかし 
どうも 総合的に判断して 様子がおかしいので、「ラジオ少年」に当方からメールで問題を指摘しました。
結果的にOSC(発振コイル)の不具合ということで、代品を送るとのことでした。
後日 OSCが準備できないとのことで 代金は返金してもらったとのことです。
キットも販売終了になっています。
そういう意味では解決済みの問題です。

ただ 教材用として頒布されたものが こんなに酷いものだと 困ります。
組み立てて 動作しないので泣いていた方も多いのではと思います。
また 当方には「ラジオ少年」から問い合わせに対する返事はいただいていません。
このため
どのようなキットだったのか検証するのも必要と考えて、下記記事をまとめました。

 

ラジオ少年の3球ラジオに関する記載もご覧ください。



ラジオ工房掲示板で話題になっていたトランジスターキットです。
嶋村さんから送っていただいたので、調査しています。
2011年9月14日

現在まで確認できたことは
@OSCは確かに様子が変です。
タップの位置が回路図と逆になっています(アースとエミッタ間の巻線が圧倒的に多い、これは間違い)。
(16日判明したことだが、シルク印刷が間違っていることが判明した、銅箔のパターンとシルク印刷の脚の出し方が逆。
シルク印刷を信用すると間違う。)
A 検波用のIFTに同調用のコンデンサーが組み込まれていないようだ。→コアを回しても反応なし、コンデンサーを付加すると反応する。
B段間のIFT(黄色コア) 同調側のコイルにタップが無い、配線もされていないし、導通もない。
タップが無いとインピーダンスが高くなりすぎて、発振しやすくなるのだが?・。

CTR2 と3に流れる電流が多すぎる。 2SA1923Yに交換されているが、増幅率が大きすぎる感じ。
470Ωの抵抗で3V近く電圧が下がっているIF 2段のみで。
キットに含まれていたトランジスターを日本製の2SC1923Yに交換したことが原因と思われます。
オリジナルのトランジスターについては当方での調査はしていません。

D IFに455KHzの信号を入れて調整すると発振する。 
EAFは正常に動作している様子。



OSCの裏側の画像 黄色コアのIFTのコンデンサーを破損させた感じです。
チタコンの残骸が見えます。
巻きなおした形跡はありません。



添付された回路図です。
説明書はタイ語らしく 全く読めません。
せめて アンテナコイルの接続順など 肝心な部分だけでも日本語訳がほしいところです。

トランジスターの交換(2011年9月15日)
バイアス抵抗を変更して、それぞれのTRに流れる電流を1mA程度に落としましたが、まだ発振します。

やむなく2SC535(Hfe:B)に入れ替えてみました。
元回路に近い構成で 発振しなくなりました。
やはり トランジスターを無暗に変更することには副作用がありそうです。
回路図を見ると トランジスターはある一定のHfeのものを選別して使う必要がありそうです。
特に回路構成が標準と異なるので、発振しやすいのかもしれません。
あとは局発回路ですが、7mmのコイルは老眼では扱いにくいです。






ついに動作するようになりました(2011年9月16日)。

トランジスターを2SC535に変更することで、IFが動作するようになったので、今度はオシレーター部分です。
7mmのOSCを探したのですが、どうしても見つからず、10mmのOSCを使うことにし、
下駄をはかせて基板に組み込みました。

なお キットのシルク印刷と基板のパターンではOSCの脚の配線が逆になっている(間違っているので注意)。
このような間違いはキットとしては致命的です。
シルク印刷では左側の脚がバリコンに接続されているように記載されているが、
パターン面ではこちら側がアース(共通)になる。

なお同封されていたOSCコイルはインダクタンスを測定してみると、600μH程度です。
同調容量を300PF程度とすると455KHzになりますので、どうもIFTのチタコンを抜き取って詰め込んだようです。
何故このようなことが行われたのでしょうか?。




OSCのコアを動かして、周波数の低いほうで530KHzを受信できるように調整。
高い周波数はトリマを調整して1620KHzが受信できるようにしました。

付属のバーアンテナでは低い周波数でトラッキングが取れませんので、
絹巻き線を巻たしました。
(画像 バーアンテナ下側の赤い部分が巻きたしたコイル)
これでJOAKが最高感度になるようにコイルの位置を調整して終了。
高い周波数はトリマで調整するのですが、OSCが邪魔して調整が完全にはできませんでした。
バーアンテナもいい加減なものが組み込まれています。
別の機種用のものを流用したのかもしれません。



検波用IFTに300PFを付加しました。
これで音量が大きくなりました。
どうもこの部分はなぜか同調容量も省略されているようです。

さらに局発回路は
手持ちのOSCの足の出し方がコレクター側引き出し線の位置がパターンと逆になっているのでジャンパー線で 対応しました。
(なおこれまでの試行錯誤の結果パターンカットされている部分があります。)
IFTはタップを出して、インピーダンスを低くして使うことが殆どです。
今回のようにタップの無いIFTは初めて見ました。
その代りか 同調容量を大きくして 共振インピーダンスを下げているのかもしれません。
動作は不安定です、これがキットの宿命といえばそれまでですが。

今回の騒ぎの発端はいい加減なOSC(発振コイル)が含まれていたことに起因しますが、
トランジスターの電圧がおかしいことから、さらに騒ぎが大きくなりました。
キットに同封されていたTRがどのようなものだったか不明ですが、持ち主が2SC1923(Y)に交換したことでさらに新しいトラブルが発生したようです。
設計された当時のオリジナルの石は2SC3194です、これが入手できないので、キットは別の韓国製のものに交換されたようです。
Hfeは比較的低い物を使う前提で作られているようなので、互換品を選ぶ時は注意が必要です。

なおバーアンテナも規格外のものが使われていました、注意してほしいところです。

このキットは発売当初はそれなりに動作していたのでしょうが、その後の部品の供給が変わった時点で、怪しげなキットに変身していったようです。
輸入して 頒布する場合 細心の注意が必要だと感じました。
結論からいえば教材に値しないキットと言えるでしょう。

井上さんのホームページもご覧ください。

ラジオ工房掲示板の主な書き込み

TRラジオOSC発振回路計測方法(問題の発端)

投稿者:JH4ABZ  投稿日:2011年 8月 1日(月)10時23分6秒
内尾様、皆様こんにちは。
トランジスタラジオのOSCについてお知恵を拝借したく、書き込みです。
軽く経緯を書きますと、私の知人が、ラジオ少年のTRラジオキットを1台は私にプレゼントするつもりで、2台買購入し、自分で1台制作し、うまく動作しないということで制作済み1台、未作成1台を持ってきました。キットはこれです。
製品番号KIT−2価格1700円(本体1,619円税81円)生産国 タイ

現象は、チューニングをまわしても、ほとんどのところで国営放送が強力に入って、バーアンテナの方向を変え、NHKが弱くなるようにあわせると、運がいいと、NHK第2が入ったりするという症状です。

まずは、SGで455だけは調整。アンテナコイルを外して容量計測すると、440uH、同調回路側ポリバリは未作成のものを計測すると、150p+70Pタイプでした。計算値としては問題なさそうです。
電源は単3*4の6V、その場での確認はそこまでで、とりあえずもう1台を自分が作成して計測等してみることになり、昨晩作成しました。
結果は、知人作と同じで、NHKが幅を利かせています。なお、先頭のTRは、現在2SC1815に変えています。(ためしに変えて見ましたが、結果は同じでした)

前置きが長くなって申し訳ありません。本題です
TRラジオの知識はほとんどありませんので、まずはOSCの発信を確認しようと、オシロを持ってきて、真空管なら、6WC5のカソードに当るだろうと、添付回路の黄色の抵抗のところに繋ぎました。
NHKなど、強力な入感があるところは波形が出ますが、ポリバリをまわしても、その波形の波長(周波数)が変化しません。

自分としては、OSCの周波数だけは、常に計れるつもりでいたのですが。
感覚的には、OSCが発信していない気がしていますが、私の計測方法に問題があるのか、それとも、入管が無ければ、OSCも発信しないのか、そのあたりをお伺いしたく、よろしくです。
オシロは、*10倍プローブ100Mのアナログオシロを使っています。ちなみに、繋いでも、繋がなくてもラジオ受信の変化はありませんでした。

 

投稿者:元JF1GNY/井上 投稿日:2011年 8月10日(水)21時01分19秒
みなさま、岩淵さま、こんばんは。
表記の件、2台購入し(これが最後の2台だったのかな)、1台の部品の点検をしましたので、ご報告します。
測定は、いずれも、L/C METER IIBで行いました。
1.PVC
OSC側:75.46-17.84pF
ANT側:159.2-19.4pF

2.BAR ANT
緑:赤=431.5μH
黒:白=16.11μH
黒と赤を接続してみると、
緑:白=550.6μH
アンテナコイルをほぼ中央に寄せて、ほとんど値がマックスの状態です。

3.OSCコイル(コアの色は、赤で、裏側にコンデンサなし)
1次側:裏返して、3端子のある側を下にして見て、左側からG(共通)端子、E(エミッタ)端子、PVC(ポリバリコン)端子と名前をつけました。これは、基板の絵柄に合わせてあります。
G端子:E端子=284.6μH 、G端子:PVC端子=250.8μH 、E端子:PVC端子=1.190μH
となりました。これは、どなたかのご指摘のように、G端子とE端子の位置が逆のようですが、基板の裏の配線パターンを見ると、G端子の穴の位置からは、PVCのOSC端子にパターンが走っていて、E端子の穴の位置からは、共通ラインにパターンが轢かれています。これから、本件のものは、正常な接続になっていると思われます。
2次側:1.429μHですが、この部分も基板の裏のパターンは、絵柄と逆さになっています。

4.周波数の計算
 ご存知の計算式:f=1/(2*π*√LC)で計算してみました。
(1) 局発の周波数
  ・ FLosc=1086kHz
  ・ FHosc=2235kHz
(2) アンテナ同調回路の周波数(緑:赤)
   ・ FLin=607.5kHz
   ・ FHin=1740kHz
(3) 中間周波数=局発の周波数ーアンテナ同調回路の周波数
   ・ IFlow=478.5kHz
   ・ IFhi =495kHz
となり、なんとか受信できそうですが、同調周波数が高すぎますのでアンテナコイルの同調側の接続を(緑:白)にしてみると、
   ・ FLin=538kHz
   ・ FHin=1541.5kHz
 となりました。
 このときに、中間周波数を455kHzにするには、計算上では、OSCコイルを約350μHにしなければなりません。
 つまり、このキットでは、535-1650kHzの受信範囲で、中間周波数を455kHz付近にするには、アンテナコイルの巻き足しと、OSCコイルのPVC端子とPVCの間にコイルを入れてやらないとトラッキングが取れそうにありません。
 引き続き、勉強のために、AF側から漸次組み立てて、確認していこうと思っております。

 投稿者:岩渕 投稿日:2011年 8月12日(金)21時26分55秒
みなさま、こんばんは
井上さんKIT組立開始されたようで完成が楽しみです。私も以前このキットを購入した
記憶がありましたのでガラクタ箱を調べたら出てきました。井上さんの書き込まれたIFT
コイルを見てみましたら2個には同調用コンデンサーが付いているようです。私が購入した
のは一昨年の暮頃だったと思います。将来知人の子供に組み立ててもらおうと購入したもの
です。写真を撮影した後、確認しましたらコンデンサーが付いているのは黄色のIFTで赤
と黒のIFTにはついていません赤は付いていなくてOKですが黒が付いていないのは不安
です。今回の問題でこのキットを子供に組立させるのは難しいようですね
 

投稿者:元JF1GNY/井上さん 投稿日:2011年 9月15日(木)02時00分34秒
追加の報告です。
以前報告したOSCの発振の条件に、以下の3回の改造で、ようやく受信できるようになりました。
ただし、OSCコイルを変更したために、インダクタンスが違いますので、トラッキングは取れていません。今のところ、NHK第2の放送が、ポリバリコンのほとんど開いてない(容量の大きい)ところで入感しています。
また、IF増幅回路もまだ不安定で、ダイオードのところでの波形に変な波形が出るときがあります。
IF増幅回路が、発振しているのかもしれません。
OSCも、電源電圧がさがっているから発振していないのか、それともバイアス条件が悪いからなのかよく分かりません。

1回目の改造
TR3のベースバイアス(電源側10kΩ+グランド側4.7kΩ追加)
TR3のエミッタ抵抗=1kΩ、エミッタ電圧=1.35V(電流=1.35mA);TR3のエミッタ電流を減らす
TR2のベースバイアス:変更なし
TR2のエミッタ抵抗=100Ω、エミッタ電圧=3.2V(電流=3.2mA)
TR1のベースバイアス:変更なし;発振せず
TR1のエミッタ抵抗=1.5kΩ、エミッタ電圧=0.75V(電流=0.5mA)
470Ω後の電圧=3.4V(電流=5.5mA)

2回目の改造
TR3のベースバイアス(電源側10kΩ+グランド側4.7kΩ追加)
TR3のエミッタ抵抗=1kΩ、エミッタ電圧=1.35V(電流=1.35mA)
TR2のベースバイアス:変更なし
TR2のエミッタ抵抗=1kΩ、エミッタ電圧=1.58V(電流=1.58mA);TR2のエミッタ電流を減らす
TR1のベースバイアス:変更なし;発振せず
TR1のエミッタ抵抗=1.5kΩ、エミッタ電圧=1.25V(電流=0.69mA)
470Ω後の電圧=3.9V(電流=4.46mA)

3回目の改造
TR3のベースバイアス(電源側22kΩ+グランド側10kΩ追加);1、2回目の改造で不安定
TR3のエミッタ抵抗=1kΩ、エミッタ電圧=1.58V(電流=1.58mA)
TR2のベースバイアス:変更なし
TR2のエミッタ抵抗=1kΩ、エミッタ電圧=1.6V(電流=1.6mA)
TR1のベースバイアス:(電源側22kΩ+グランド側10kΩ追加);TR1の発振が開始
TR1のエミッタ抵抗=1.5kΩ、エミッタ電圧=1.25V(電流=0.83mA)
470Ω後の電圧=4.3V(電流=3.61mA)

http://homepage2.nifty.com/cesile/JF1GNY/radio/Transistor_radio/KIT-2.html


投稿者:元JF1GNY/井上 投稿日:2011年 8月17日(水)17時15分45秒
みなさま、こんにちは。
OSC部分の検討結果です。
 下記の1番目の(A)から(F)までの回路図をごらんください。
 それぞれの回路図中で、変更した部品に「*」をつけてあります。
(A) キットのままで、OSCコイルの出力側のコレクタと電源を入れ替えました。理由は、教科書としている「はじめてトランジスター回路を設計する本」(奥澤清吉、奥澤熙 共著)の101頁から102頁にかけて、下記の2番目の図のような説明があることからです。
・ 結果は、発振しません。

(B) (A)のベースバイアスを変えました。
・ 結果は、発振しません。

(C) (B)のエミッタ抵抗を変えました。
・ 結果は、発振しません。

(D) (C)のOSCコイルを市販のものに変えました。
・ 結果は、発振しました。発振強度は、OSCコイルのエミッタへのタップのところで、約350mVです。ただし、周波数の高いところで、間欠発振のようになります。

(E) (D)のOSCコイルとエミッターへのコンデンサの間に51Ωを挿入しました。
・ 結果は、高い周波数まで、安定に発振するようになりました。ただし、出力は、OSCコイルのエミッタへのタップのところで、約210mVです。

(F) (D)のトランジスタを、2SC1815に替えました。
・ 結果は、高い周波数まで安定して発振しました。発振強度は、OSCコイルのエミッタへのタップのところで、約350mVです。





参考資料(サンヨー発行)

サンヨーの半導体マニュアルに掲載されていたトランジスターラジオの設計資料です。
どのようなトランジスターが使われていたか、どのようなコイルやIFTが使われていたかが解ります。
この回路図と比較してもKIT−2の回路構成が異質だと解るでしょう。
なおこの回路例の場合、局発回路はベース同調ですから、OSCはエミッタ同調と異なりますので、注意が必要です。

ここでサンヨーのTRのHfeは下記のように規定されているようです。
B:25〜50
C:40〜80
D:60〜120
E:100〜200
F:160〜320
G:280〜560

東芝の2SC1815は下記のようになっていますので、Yタイプでは電流が流れすぎたのでしょう。
hFE (1) 分類 O: 70~140, Y: 120~240, GR: 200~400, BL: 350~700








2011年9月14日
2011年9月15日
2011年9月16日
2011年9月17日
2011年9月20日:452 掲示板の主な書き込みを転載 追加。




   

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