ナショナル CRV−1の修復

1)CRV−1の現状

友人が入手したナショナルの通信型受信機CRV−1。
雑誌などの記事で見たことはあるが、実物は初めて。
どうもあまり売れなかったらしい。
出来るだけオリジナルにとの要望で、復元を引き受けた。


第1IFTがクリスタルフイルターに交換されている。
6BE6を使ったプロダクト検波?で、
AF段の6AV6 6AR5を空中にシャーシに。
これらをオリジナルに戻すことに。
オリジナルのIFT(未使用)は依頼者が別途準備してあった。
バリコンの配線を見た時は見事だと思った。
どうもこれはメーカー出荷時、この部分は配線済みらしい。
(大部分の部品は取り付け済みで、購入者は配線をすれば出来上がり)


復元終了して、通電中の写真。

 



2)復元以前のシャーシ内部

このラジオはキットを組み立てたもの、良く見ると半田つけがいかにも不味い。
最終的にIF段全部を一度ばらして、再組み立てすることに。

分解しながら、観察すると電源SWが無い、
本来 SW付き500KΩが500KオームのB型に交換されている。
通信型と言われる高級品だが、音量調整にB型は相応しくない。
電源SWはスピーカーの切替SWを流用している。
ヒーター配線を見ると細いビニール線が使われている。
1.6Aののヒーターを賄うには細すぎる。
スピーカの配線も細いシールド線が使われている。
(スピーカーの配線には大電流が流れます)
どうも相当初歩のマニアが組み立てたらしい。
先を考えると段々心細くなってくる。


電源の3KΩ 10Wに 2KΩ 3Wの抵抗が並列に追加されている。
良く見ると焼けかかっている。
6BE6を追加したためB電圧が低下したので、対策したのでしょうが、
抵抗値の低い3Wの抵抗に電流が多く流れるので、危険です。
(10W 3KΩの抵抗の方が電流が少ない)
これも初歩のマニアによくある間違いです。

3)現状での動作確認

通電に先立ちケミコンテスターでまず確認した。
漏洩電流が10mAと多いがこの種の受信機はブリーダーを使っている可能性が高いので、直ちに不良とは言えない。
ケミコンの半田つけを外して、再確認し、ケミコンはOK。

ひとまず電源を投入、出来れば現状で動作確認したかったが、音は全然でない。
仕方が無いので、現状での動作確認を諦め、分解した。

4)いよいよ修復

まずIFTやクリスタルフイルターなどを取り外す。
mTソケットはそのまま使う事も出来たが、IF段は錆びが酷いこと、AF段はあまりにも汚いことで、新品に交換した。
VRはB型ではスムーズな音量調整が出来ないので、D型(A型をよりスムーズにしたもの)のSW付き新品に交換した。

抵抗はリード線を接続して、再利用。


左は古い7ピンソケット
これは低周波段6AV6用。
右は交換した新品。
あまりの汚さに交換をした。

当初IF段だけ新品と交換を予定していたが、結局検波段も交換した。
古い方も絶縁は大丈夫だったが。

IF段の配線途中経過。
ヒーターの配線は今回は1.3Aだが、
途中までは太いビニール線に交換した。
途中で切れているビニール線は従来使われていたもの。
(以前は6BD6×2 6BE6 6AV6 6AR5の1.6A)

AFとIFの配線が終わったところ。
これで通電する。
受信は正常に行える。
配線はほぼ正しいようだ。
しかしSメーターが全然動作しない。

Sメーターを働かせているのはRF段の6BA6だ。
6BA6のカソード電圧の変化をメーターで読む仕掛け。
この部分は手をつけていなかったが、良く見ると配線図と異なる。
抵抗値も全然異なる。
一瞬 誤配線かと思ったが、抵抗に松下の(三角?)マークがついているので、これはオリジナル部品と思われる。

修理を引き受けた時2つの資料を預かった。
この内 綺麗な回路図Bを基準に配線していた。
不思議に思って、別の資料を見ると同じと思った回路図が違うことに気づいた。
結局このCRV−1は回路図Aによって組み立てられたようだ。
どちらにしても2種類の回路が存在したようだ。
改良されたのかもしれないが、この機種の発売期間は非常に短かったと思われ、その間に改良するとは不思議だ。
あるいは片方が試作回路なのかもしれない。

回路図 A



回路図 B




ナショナル自慢の周波数直線型バリコン。
その後小型化して、クーガ2200にも使われる。

5)Sメーターで振り回される

6BA6の回路に間違いが無いことを確認してもSメーターが動かない。
0調整用VR不良ということもあるので、確認しようとするとSメーターを外さなければ出来ない。
VRは上記写真のBメーターの下、ダイアルのプーリーの間にある。
苦労の末確認するも重大欠陥はなし。
(交換したかったが、つまみが取れずに諦めた)
部品不良を想定して、抵抗などを取り外して調べて行く。
ふと気づくとSメーターへのリード線の中継端子がアースされている。
実はもう一本のリードもアース端子経由だった。
よもやの事に気がつくのに時間がかかった、残念無念。
どうも組み立て時からSメーターは動いていなかったようだ。


ラグ端子の固定用を兼ねて、アース端子があります。
これを中継用に使ったのが原因。

写真で抵抗を外してある部分が端子の1つ。
もう一つの端子(上のネジ止めの部分)も中継端子に利用。

6)調整
Sメーターが動作するようになったので、調整に入る。
このラジオはSWだけの3バンドなので、トラッキングは比較的楽に取れる。
6−1)IFT調整
SGから信号を入れて調整。
普通のラジオだったら455Kcの信号を直接入れても大丈夫だが、CRV−1は違った。
選択度があまりにも良いので、一度IFTの現状に近い周波数で受信。
少しずつ455Kcにもってゆく操作が必要。
これにはいささか驚いた。
通信型IFT 3本の威力は凄い。
6−2)目盛りあわせ
ただ説明書通に調整すると、ダイアル目盛りと受信周波数が合わない。
仕方なくスプレッドダイアル側をバリコンの抜いた位置にあわせ、メインダイアルを調整するとぴたりとあった。
どうも説明書も完全にはキットの内容とは違うようだ。
6−3)トラッキング調整
周波数の低い方はコイルで、高い方はトリマで調整する。
必ずピークを確認しながら調整する必要がある。
残念ながらSW2のRF段のコイルにピークが無い、どうもSWの接触不良が有るらしい。
古いものなのでバンド切替SWは全般的に接触不良気味だ。




7)まとめ
感度試験をするとシングルスーパーながらICF‐5900と同じか、少し良いように感じた。
選択度は申し分ない。
安定度の試験は出来なかったが、熱源を抱えているので?。
入力にアッテネ−ターが無いので、強力信号ではRFの6BA6が歪むと思われる、
IFゲインの調整をこまめにする必要がありそう。

モニタースピーカー端子や切替SWなどに接触不良が見られる。
古い製品なので仕方が無いでしょう。


 

CRV−1の修理その2(2013年6月30日)

今回お願いしたいのは、ナショナルの「CRV-1」という真空管式のレシーバーです。
これは45年前にとあるOMさんよりいただいたレシーバなのですが、
最近動作しなくなったので、修理を兼ねてオリジナルの配線に戻しました。
(一部改造されておりました)
組みなおしたところ、受信は出来るように(音が出た?)なったのですが、
各バンドの上から下まで一定の感度がありません。
(IFTのコアを回して調整すると、ある一点だけは感度があがります)この修理をお願いできませんでしょうか?
コイルパックに接点回復スプレーがかかっているあたりも気になるところです。
組み直し時には真空管のソケットを新しくしましたし、ブロック型の電解コンデンサを新しくしました。
コンデンサ類はセラコンでしたので、そのまま使っております。

受信してみると 確かに感度が悪いです、さらにAバンドは特定の周波数で異常発振して受信できません。
とても調整だけで済むような話では無さそうです。
6MHz〜7MHz付近で2つの周波数で特に酷いのです。
まず異常発振を止めないことにはどうしようもありません。
配線を確認したのですが 大きな間違いは無さそうです。

オシロスコープで波形を見るなどしたのですが、Aバンドのみ波形が歪んでいます。
局部発振を止めて DIPメーターから信号を入れても異常発振に近い現象がおきます。
また同調周波数でも 異常発振がおきる周波数が変わります。
どうもほかのコイルとの干渉が原因と思われるような現象です。

Aバンド: 3.5〜7.5MHZ
Bバンド:7〜15MHZ
Cバンド:15〜30MHZ

バンドスプレッドは
@3.5〜3.57MHz
A6.0〜6.4MHz
B6.5〜7.4MHz
C9.6〜10MHz
D11.4〜12.0MHz
E13.8〜14.9MHz
F15〜15.3MHz
G17.4〜18.0MHz
H21.0〜22.0MHz

到着時のアヤーシ上



到着時のアヤーシ 内部



この機種は本来は6X4で整流する設計になっています。
しかし シリコンダイオードに変更されています。
一見大丈夫なように思えるのですが 実はB電圧が高く出すぎて具合が悪いのです。
真空管には内部抵抗があり 実際 整流後の電圧はずいぶん下がるのです。
80や5Y3に比べれば 6X4は内部抵抗が低いのですが、シリコンはさらに低い(電圧低下は1Vくらい)ので注意が必要です。
参考までにGEの規格表では
6X4:tube voltage drop 22V at 70ma
5Y3(80):tube voltage drop 60V at 125ma
5V4G(83V):tube voltage drop 25V at 175ma

同じ 真空管でも5V4Gのような内部抵抗の低い整流管の場合 さらに注意が必要です。
例えば こちらに参考例があります。
http://radio.eucaly.net/a/R/9R-42J.html

回路図で見ると OSCのプレート電圧は100Vになっているのに 実際は130V加わっています。
シリコンに改造する時は 平滑回路の抵抗を電圧に見合って増加しなくてはいけないのです。
とりあえず OSC回路の電圧が100Vになるように 3KΩの抵抗を追加しました(画像○印の部分)。
これでも 心持小さくなった感じですが 異常発振は収まりません。
仕方がないので まずIFTの調整をすることにしました。
いやはや 弄繰り回したらしく 無茶苦茶な状態でした、これでは相当経験ないと調整できませんね。
中波放送バンドが無いためか アンテナ端子から455KHzを入れても駄目でした。
検波段から入れて 順次調整してゆきました。

Aバンドは4MHz付近は大丈夫なので目盛合わせを行います。
さらに7.5MHzを合わせます、ただし途中は異常発振があり、6MHz付近が調整できません。
次に BバンドとCバンドの調整を行います。
これらで目盛合わせが大変でした、普通は2〜3回で済むのですが、10回位 微調整を繰り返して目盛を追い込みました。
周波数の上下が いやに連動する形で 今まで経験した調整と異なりました。
なおバンド スプレッドダイアルは抜けきった(印あり)位置にした上で メインダイアルを合わせます。

目盛が合うとトラッキング調整です。
Aバンドのアンテナコイルが焼けていますが、使えないことは無さそうです。
ところがRFコイルのうち BとCバンドで調整してもピークの反応が無いのです。
アンテナコイルは正常に反応します。
ちなみにAバンドではRFコイルも反応するのです。

ならば別の方法とバリコンに並列にポリバリコンを接続して 調整してみましたが 駄目でした。
容量が増えると Sメーターが下がるのです。
逆に下記の画像のようにスプレッドバリコンを外すとSメーターがあがるので コイルのインダクタンスは規定より多いと判断しました。
コアの軸を動かしても反応しませんので コアがボビンに固着しているのかもしれません。
あるいはコアが磁気コアでは無くてインダクタンスを減少させる機能の物体かもしれません。

どうもバンド切り替えスイッチの不具合もあるらしいのですがよく解りません。
ただこの部分はB電圧が加わっていますので うかつに接点復活剤はかけられません。
接点部分にみに少量つけるようにしましたが 裏側には届きません。

想像するにバンド切替で不要コイルをショートする部分も不具合もあるようです。

あれこれやっている内に Bバンドも反応するようになり、異常発振も気にならない程度までになりましたので、
最終調整をして これで終了としました。
Cバンドは最後まで 無反応でした。
このバンドはもともと感度が良く無いので このあたりが妥協点でしょう。

調整後はペンキを塗って固定しました。
この部分はあまり触らないようにした方が無難です、非常に微妙です。



調整 後のシャーシ内

AC電源回路に普通のコンデンサーが使われていますので、安全規格のコンデンサーに交換しました。
右下の 丸い○印の部分。






周波数直読の仕掛け

この機種にはマーカーが有りませんが、500KHzマーカーを準備すると便利です。
例えば バンドスプレッドAでは6〜6.4MHz間を10KHzで目盛ってあります、実質5KHzが直読出来ます。
これは その後クーガ2200でマーカー付で実現した考え方の初めかもしれません。

バンドスプレッドダイアルを3.5MHzに合わせ、メインダイアルの太い黒線の範囲でマーカーが受信できるようにすれば、
バンドスプレッドダイアルで6〜6.4MHz間をほぼ5KHzで直読出来るわけです。

メインダイアル
 
バンドスプレッドダイアルが校正点(バリコンが抜けたところ)より、
バリコンが最大容量になった位置で マーカーを受信しますので、
メインダイアルは6MHzの信号が6.35MHz付近で受信できるのです。 

マーカーは別に準備する必要があり、できれば500KHzが便利です。
1MHz・・・3.5MHz・・・6MHz・・・22MHzと必要な高調波が出ます。
 バンドスプレッドダイアル
 ラジオ日経6055KHzを受信しているところ。

(指針が6MHzの位置でマーカーが受信出来るように、メインダイアルを調整し、
その後希望の周波数までバンドスプレッドダイアルを動かす。)



 

2001年12月26日
2002年1月4日
2002年1月5日
2002年1月7日
2002年1月9日
2002年1月14日
2002年1月16日
2002年1月17日完了

2006年7月20日

2013年6月30日:5,901
2013年7月1日:6,069

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