真空管ラジオの修理 テレビアン EC−28

テレビアンの4ペン受信機が修理にやってきました。
昭和12年〜13年頃の製品と想像されます。
ただこの製品は改造されています。
元々は24B 24B 47B 12Fの構成と思われますが、定かではありません。
現品は58 57S 3Y−P1 12Fとなっていました。
58の部分はソケットが交換されていて、オリジナルはリモートカットオフの35だったのかシャープカットオフの24Bだったのかは不明です。
アンテナ回路に可変抵抗がありませんが、アンテナコイルに端子が出ていて、入力が大きい時はこれで加減したのでしょう。


前面左端のトランスは電源平滑用のチョークです。
シャーシ内部 このチョークの真下に出力用チョークが取り付けてありました。
右側は検波管のプレート負荷用の100Hと思しきチョークです。
これらは全て断線していました。

元々検波管のプレート負荷用の100Hのチョークコイルはシャーシ内部に取り付けられていたようです。
プレート負荷用の100Hと対称の位置に取り付け穴が4個見えます。
これらは断線しやすいので交換されたのでしょう。

バリコンの横に遊びのアース線があるので、不思議に思ったのですが、
良く観察するとバリコンも取り替えられています。
バリコンそのものも古く、交換された物とは思わなかったのですが、
ダイアルの目盛りが時計回りで周波数が低くなります。
バリコンは時計回りで容量が減少しますから、交換されたと見るのが正解でしょう。



シャーシ内部。
ブリキ缶入りのペーパーコンデンサーが使われています。

回路図がありませんので、部品の結線を見ながら分解です。

テレビアンMー48似よく似た回路構成です。

コンデンサ類は当然使えませんし、再生用のミゼットバリコンもバネが緩んでとても使えません。
ミゼットバリコンは修理して使うことにしました。


ここまで分解すると出力管周りの配線がわかりました。
@出力管のグリット回路に500KΩの音量調整用VRが入れられている。
この部分がMー48と違います。
A高周波増幅管のカソード回路は350Ωと0.1μFで接地。
B入力回路の感度減衰VRは使われていない。
C出力管のプレート回路はチョーク結合で、
チョークの中点からコンデンサーでスピーカーの接続する低音増強回路が使われている。
この部分はM−48と同じらしい。

ここまで判ったので、あとは分解してしまいました。
不良部品について
@ブリキ缶入りのペーパーコンデンサーは使えないことは仕方ないが、他にVRと再生用ミゼットバリコンが不良。
チューブラ型ペーパーコンデンサーも当然交換要。
グリット検波用マイカは測定してみたらQは落ちるが容量は大丈夫だった、
ただ不安定でも困るので交換することにした。
A電源平滑用 出力用 検波回路の負荷用の低周波チョークは全て断線だった。


バリコンはバネが緩んで、固定できません。
羽根の重さだけで、回転してしまいます。
これでは安定した再生調整は出来ません。


ローターとステーターを分解しましたが、緩い部分は締められませんでした。
仕方が無いので、アマチュアー的に処理することにしました。
これで当分使えるでしょう。


羽根にお動きが硬くなりましたので、この位置でも止まります。
以前はこのような写真は撮れませんでした。
羽根が重力で回転して、揃ってしまう。



左端のソケットが交換されている。
シールドケースはオリジナルのものが使われているが、
ソケットと一体型のシールドケースホルダー(下側の部分)が無くなっている。
ビスの頭を少し上に出して、これでシールドケースを保持する仕掛けになっている。

なお検波側のコイルのシールドは作業上外してある。
このラジオは検波管の負荷にチョークコイルが使われています。
こうすると検波管のプレート電圧が高くなり、出力電圧が高くなります。
グリット検波の抵抗負荷では47Bをフルに働かせるには無理があるためです。
プレート検波だと大丈夫なのですが、感度が悪く、再生もかかり難い難点があります。
12年頃のテレビアンのラジオは真面目にこの部分にチョークコイルをい使っています。
しかしこれが断線したのでは困ってしまいます、尤も抵抗負荷でも我慢は充分出来ます。
大きな音を期待しなければ良いのです。

依頼主の希望でチョーク負荷とのことであり、これは手持ちのコアを使って自分で巻きました。
巻き直しに出そうと思ったが時間がかかるので自作したが、
捲線機の準備が大変だった。
0.1mmφのウレタン線を1万回捲いた。



捲き終わったところ。
机の上で作業はしました。
ここで写真を撮っただけです。



シャーシ内部の様子。

VRも交換した、ツマミが嵌め込み式のため、
長さをそろえ、先端をやすりで加工した。

断線したチョークは3個の内2個は残した、左端は出力用に使われていたもの。
(1個は交換)

スピーカーは出力管直結方式とした。
平滑用のチョークは1KΩ 5Wの抵抗に変更。
12Fのヒラメント側の容量は250V 10μF、1KΩを出たところのコンデンサーは250V 100μFとした。
チョークだとコンデンサーの容量が少なくて済むが、このほうが現代的でしょう。
耐圧は多少心配したがスイッチオン時 数秒間260Vに上昇し、あとは平常の210Vなので特に問題は無い。
3Y−P1なので整流管との起動時間の差がある、47Bであれば全然問題ない。



アンテナをつないで受信中。
コイルがシールドされているので、アンテナ線を接続しないと受信できないが、
感度はなかなか良い。

非常に懐かしい音がします。
しかしHI FIではありません 念のため。


キャビネットに入れたところ。
なかなか 雰囲気が良いと思います。
これは河野さんのラジオです。








































2004年6月16日
2004年6月17日

2005年8月16日移転

2006年6月24日移転
2014年11月3日:3,575 リンク切れ修正

2014年11月8日
なお この機種の修理はもう1台あります 体験記はこちら

修理のノウハウは「真空管ラジオ・アンプ作りに挑戦!」をご覧ください。




ラジオ工房修理メモ

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