真空管ラジオの修理 リンカーン ラジオ 修復記

リンカーンのラジオの修理を依頼されました。
外観とシャーシ部分は非常に綺麗です。
このラジオは昭和30年代中頃頃販売されていた5球スーパーラジオのキットです。
普通はこの時代ではレス方式が圧倒的に多いのですが、キットと言うことでトランス付きになっています。
型名の記載はありませんが5M−A2型と良く似ています。
おそらくこのラジオは5M−A2型の後継機でしょう。
5M−111型ということが判明しました(この行は2009年10月13日追記)。
5MーA2はキットが4,350円、完成品が5,000円です(電波技術1960年2月号による)。
実体配線図付きで初心者用としても便利でした。

中を開けて見ると確かに素人の組み立てです。
状況は
@BCバンドはダイアル目盛りが狂っているが受信可、感度いまいち。
ASWバンド全く受信できない。

素人が組み立てたラジオの注意点は
@未完成で最初から動作していないことがある。
A修理というよりラジオの製作をまず完成させる気持ちが必要。
B完成後修理。
C若し修理を依頼されたのなら敬遠した方が無難です。
 上手くいって当たり前、出来なければ技術力を疑われるだけです。
 素人が作ったラジオの修復は技術力と時間が必要です。

電源を投入せずケミコンテスターでB回路に順次50 140 280Vをかけてみると
@ケミコンは何とか使えそう。
A6AR5のG1に+電圧が出る(これは0.01μFの絶縁不良を意味する)。
B0.01の交換、6AV6のG1の0.01μFのテスト これはOK。
C6AV6のP回路の音質調整用コンデンサーの絶縁不良→交換。
D6BA6 6BE6のG2のバイパスコンデンサー交換

これで電源投入
確かにBCはOKなるもSWはNG。

外観は非常に綺麗です。
シャーシにも錆がありません。
保管が良かったようです。




自分の半田付けも含め、素人の組み立ては残念ながら一目でわかります。
やはりプロは違います。
このラジオは比較的半田は上手くついていますがやはり素人組み立てです。
部品の配置にも多少無理があり、空中にブランコしているのも。

キットは実体配線図つきの為、コイルなど部品の端子には記号がありません。
(実体配線図の通りに接続するので、安く作るために記号は省略した??)
どの端子が何につながっているか誤配線を見つけるのが意外と大変です。
スイッチ廻りとコイルの端子の関係は個々に確認して行くしかありません。
端子に記号が書かれていないのでテスターで接続を確認してゆくわけです。
SW帯のコイルは抵抗値が低いので、一旦端子の半田を外して抵抗値を測り、配線と総合的に見合わせて、どの端子がANTかEかF等を確認してよきます。
(ここで Eはアンテナコイルの1次コイルのアース部分を、Fは2次コイルのアース側とします)
半田を外したコイルの写真は下記。
シャーシ上面のアンテナコイル
左がBC 右がSW
配線を外さないと測れない
結果的にANTコイルのアース配線が抜けていたことがわかりました。
BCバンドコイルのEとSWコイルのEそれにSWコイルのFが接続されただけで、本来この部分がアースに接続されるべきなのに無接続。
参考回路 リンカーン5A-35をご覧ください、但し同じ物ではありません。
回路は少し異なりますが、ANTコイルまわりの配線は同じです。

一応これで ラジオの製作と修理は終了。
以下調整に入る。
@IFTの調整
455KHzの信号でIFTを調整 調整する4箇所のうち1箇所が極端にずれていた。
ネジは普通1〜2回転でOKなのに数回以上まわさなければならなかった。
Aトラッキング調整
このラジオはANTコイルも発振コイルコア付きで親切設計になっている。
目盛りあわせ
600KHzは局発コイルのコアで1400KHzはトリマであわせる、短波も同様。
トラッキング調整の低い方はコアで高い方の周波数はトリマで合わせる。

キャビネットに入れて、これで無事修理完了。

この種キットは修理が大変ですが、実際ラジオとしてはあまり使われていない事が多いです。
真空管は新品同様の綺麗さでした。
また分解して部品にする時は便利でしょう。

これらのラジオを修理する時はディップメーターがあると非常に便利です。
トラッキング調整が大幅に狂っている時 凄く役立ちます。
受信周波数でANTコイルに結合した時ディップするかどうかで、調整の狂いか誤配線か切り分けられます。



2001年7月10日
2001年11月14日修正
2005年8月16日移転

2006年6月24日移転

2009年10月13日: 1,055 同じ機種の5M−111の組み立てを依頼されました、参考にしてください。





ラジオ工房修理メモ

radiokobo-all