真空管ラジオの修理 DYNAVOX(発振不良の調査)

ラジオ工房の掲示板で話題になったポータブルラジオの調査結果です。
主なやりとりは下記の通りです。

7月31日(月)15時30分15秒
ポータブルラジオ(1R5-1T4-1S5-3Q4-セレン)を修理。
IFTの調整も終えてトラッキング調整に取りかかりました。
558KHzをほぼダイヤル位置で聞こえるようにOSCコイルのPCで調整すると、666KHZがダイヤル位置810KHZくらいで受信します。
666KHZをダイヤル位置666KHZで聞こえるようにPCを調整すると、558KHZは受信しなくなります。
(高い周波数の放送はどちらの場合でも大きくは、ずれていません。OSC側VCのトリマーはほぼ全開状態です。
メーカー製なので、これも怪しい)シャーシーもOSCコイルも小さく、調整棒を入れる事は困難です。原因を調べる手立てはないでしょうか。

8月 2日(水)07時09分40秒
上杉さん
現物の詳細が判りませんが、現象としてはパディングコンデンサーの不良の時に同じ現象が起きます。
ただポータブルだと普通は親子バリコンを使うので、違うようですね。
あるいは2バンドだったらこの可能性はあります、もう少し説明ください。

8月 2日(水)22時32分52秒
MWのみの1バンド、パリコンは親子バリコンです(容量は判りませんが、固定羽根はANT側が14枚、OSC側が10枚、大きさは同じ、両方トリマー付き)。
OSCコイルの端子は5個あり、@1R5のG1、A同G2-4、BVC、C22KΩを介してIFT、DPCを介してシャーシにつながっています。
@は他の端子とは導通なし、BとD、AとCは夫々導通があります。
PCは両側に端子が出ているタイプで、片方がOSCコイルのDに直に半田付け、反対側がシャーシに半田付けされています。
ANTコイルはなく、ループアンテナになっています。
NHK1、2はなんとか受信しますが、ローカル放送は非常に弱く、ループアンテナに手を近づけると受信します。
(これは先日お教えを乞った時にトラッキング調整が出来ていないのでは・・とご教示戴きました。
ループアンテナは導通(3.7Ω)があります)また外部アンテナ(3mほどのケーブル)をループアンテナのHOT側に繋ぐとよく受信します。
このような状況ですが宜しくお願い致します。
8月 3日(木)06時26分54秒
お早うございます。
PCはパディングコンデンサーのようですね、親子バリコンには普通使わないのですが、容量はどうなっていますか?。
この容量が変化していると思われるのですが?。
8月 3日(木)21時13分59秒
内尾様、今晩は。PCとVCの容量を測りました。PC:197〜516PF VC/ANT側46〜356PF
VC/OSC側28〜244PF(いずれもトリマーを締め切って)の値です。宜しくお願い致します。
8月 5日(土)10時12分49秒
内尾様、有難う御座います。
この件には直接関係無いと思いますが、怪しいCや高抵抗を交換しました所、少しは感度が上がりましたが、トラッキングの症状は変わりません。
もう少し頑張って色々やってみます。また宜しくお願い致します。
8月 7日(月)12時11分24秒
メーカーは「DYNAVOX」、型番は「3P-8?」です。?の所が判別出来ません。
私の見る限りでは改造されたようには見えません。
バリコンはシャーシーからスペーサーで浮かせて取付けてありますが、シャーシーに穴を明け直した跡もありません。
ただ気になるのはPCの端子の片側がシャーシーに半田付けされていて、反対側の端子にOSCコイルが半田付けされていますが、
(つまりPCがOSCコイルの支持金具を兼ねています)このPCが無理矢理取付されたように少し曲がって取付けられています。
もしご覧戴けるようでしたら現物をお送りさせて戴きます。宜しくお願い致します。
8月 7日(月)16時57分19秒
上杉さん
送っていただければ、調べてみます。
すぐには対応できません、10日ほど後でお送りください。

ラジオ本日到着し早速開けてみました。
木箱に入れたラジオです、蓋を開ければ操作面が現れる仕掛けです。
アメリカ製と思われます。
1R5 1T4 1S5 3Q4のAC DCの兼用タイプです。








後方から写した写真。
ACコードが内蔵されています。
黒いツマミのSWは電源の切替用と思われます。
通電しなかったので未確認です。


シャーシ内部 配線の模様
上杉さんが見事に修理してあります。




パディングコンデンサーは「大型トリマ」と云う感じのものが組み込まれています。



パディングコンデンサーは
半田付けの感じからして、最初から組み込まれたものにまず間違いありません。
調査方法と結果。
電池管ラジオはうかつに通電すると酷い目に遭うので、通電せずに調べる事にしました。
まず ループアンテナも測定してみました、310μHでした、ただこの数値は大きすぎます。
ラジオを筐体に入れたときにシャーシ部分がコイルに近づくので、丁度良いインダクタンスに減少するのではと想像します。

次にDIPメーターで、発振コイルの共振周波数を調査しました。
バリコンを入れたところで OSCコイルにDIPメーターを結合します。
530+455=985(KHz)でメーターの指針がディップするようにパディングコンデンサーを調整します。
バリコンが抜けきったところで2MHz付近でディップするか確認します。
ただディップが凄く浅いです、なんとなく判りづらい感じです。
トラッキングは別にして 放送波帯はカバーできそうです。

バリコンの親側の容量測定:350PF

発振側のバリコンの端子とOSCコイルの接続部分の半田付けを外し、
@バリコンの容量測定 :230PF
AOSCコイルのインダクタンスの測定:(210μH Q:30)
Bパディングコンデンサーの容量測定: 360PF(Qが低い)

ここまでの数値を見ると 実際動作させてみて、調整すれば原理的に放送波帯はカバーできるはずです。
ただ大問題が見つかりました、それはOSCコイルとパディングコンデンサーのQが極端に低いことです。
コイルとパディングコンデンサーを切り離していないので、どちらが悪いのか、双方とも悪いのかは不明です。

Qの悪さは測定器がないと判りませんので、上杉さんが悩まされた原因ではと思います。


Qの測定はX印の部分の半田を外して、AとB(Bをアース)でコイルのQを、
アースとB点でパディングコンデンサーのQを測定しました。
本来は部品を外して測定すべきです、コイルの別の巻線がそのままですし、どこまで正確かは不明です。
ただ傾向として、異常にQが低いことは認められました。
まずパディングコンデンサーを交換して試験してみてください。

@パディングコンデンサーのQがこんなに低いのは信じられません、何か原因がありそうです。
A絶縁抵抗も測定してみましたが、これは大丈夫でした。
B大きなトリマ程度で何故360PFもあるのか、不思議です、誘電率の高い絶縁物を使っているのでしょうか?。
この大きさだと 普通は100PF以下なのですが?。


ループアンテナ用のラグ端子取り付け方がまずいので、アンテナコイルのリード線が挟み込まれます。
少し方向を変えました。
ここまで調べたので、返送する事にしました。
結果は本人から報告あると思います。



2006年8月15日
2006年8月17日
2006年8月18日





ラジオ工房修理メモ