ハリクラフター S−19Rの修復

製造後75年近いと思われるハリクラフターのS−19Rの修理です。
ただ資料(http://www.nostalgiaair.org/Resources/)によれば6K8 6K7G 6Q7 41 76 80となっていますが、
実機は6K8 6SK7GT 6SQ7GT 41 76 80です。
改造の跡は見られませんので ラジオ工房の掲示板に書いたら梅田さんから別バージョンがあると知らされました。
山田(成)さんから回路図もいただきました。
ご協力 有難うございました。
真空管の構成から見て6K8 6K7G 6Q7 41 76 80の方が古いバージョンのようです。

正面の画像
中央の窓はサブダイアルです。
目盛の割り付けが不思議な構造になっています。
100〜0〜15の目盛が振られているのですが、ダイアルを回しても全部をカバーしないのです。
仕方がないので 100〜0の範囲に入るように調整しました。
0位置がバリコンの羽根が最も抜けた位置になります。
これを基準にメインダイアルの校正をするのです。



上面のパネルを外したところ。
IFTはC同調と思われます、調整が非常に微妙でやり難いです。



シャーシ内部



左端のコイルがアンテナコイル 中ほどで横向きのコイルが発振コイルです。
回路構成は5球スパーに近いですが、アクセサリーとしてBFO回路がついています。
BFOのコイルは右上のアルミ缶の中に組み込まれています。
ケミコンが付加されているので どうもアメリカで一旦 修理されたもののようです。



主な不具合事項
アンテナを接続するとMWは一応受信しますが 弱いです。
@ VRの具合が悪く 音量調整がうまくできない場合がある


 VRを新品に交換したのですが、調整は正常にできるのですが 音が最少の位置でも聞こえるのです。
調べてみると 0位置でも数十Ωの残留抵抗があることが判りました。
これは千石電商で購入したスイッチ付VRですが、手持ちの2個ともほぼ同じ状況です。
中国製のVRなので こんなものなのかはしれませんが 困ったものです。

手持ちの別のものに交換しようと、念のため端子をショートしても音が小さくならないのです。
原因は残留抵抗ではありませんでした。
高周波(IF信号)の回り込みです。

さらに6SQ7GTのグリッドをアースしても同じです。
出力管41のグリッツドをアースすると音が消えます。
さらに念のため 6SQ7GTを抜いてみたのですが、小さな音が聞こえるではありませんか。
さらに 6SQ7GTを挿して見ると、まだ真空管が働いていないのに大きな音が出るではありませんか。
完全に6SQ7GTの電極を経由して455KHzが41のグリッドに到着しているのです。
250PFのコンデンサーでプレートやグリッドをバイパスしてみましたが、効果は殆どありませんでした。
6SQ7GTを抜いた時 41のグリッドに250PFでバイパスすると さすが音は消えます。
最終的に 諦めることにしました。

AAVC が全く働かない。
AVCが効かないことに関しては詳細に調査した処、コンデンサーのリーク、 IFTなどの調整ずれ、抵抗の値が高くなっているなどの複合原因のようです。
まず IFTを455KHzに合わせます。
C同調なので 調整は非常に微妙です、これでAVC電圧が出るようになりました。
なお回路図上には、AVC回路の平滑抵抗(1MΩ)が有りません。
回路図の赤い×印の部分です、現物には有りますので 回路図の間違いと思われます。
さらに
スプラグのチューブラ型ペーパーコンデンサーも微妙にリークが有ります(1〜2MΩ)。
低周波の結合回路(VRへのコンデンサー)やAVC回路のコンデンサーを交換しました。
これでAVC電圧が少し高くなりました。
また6SK7GTのカソード抵抗はR4が550Ωに、R5が3.5KΩから大幅に変化していました。
これもAVC電圧が低い原因です。
回路図を見るとSWの3バンドは全てR4だけなのに MWではR5が加わるようになっています。
これではMWの感度が悪いは当たり前です。
なぜこのような設計になっているのか 不思議です。
長大なアンテナを接続してSWを受信する場合 そのままではMWに混変調が発生するのを防止するためかもしれません。
アマチュア―受信機にとってはMWはおまけだったのかも。
500Ωを300に3500Ωを100Ωに変更しました。
これでMWも高感度で受信できます。
MWを主に受信する場合はこの方が良いのではと判断しました。

これで良かったかどうかは これからの使用状況によります。
ただMW受信時 音が小さくならない現象はこの反作用(副作用)かもしれません。

コンデンサーはスプラグのペーパーコンデンサーが使われています。
リークで不具合な部分のみ フイルムコンデンサーに変更しました。
出来るだけオリジナルな状態を残したいからです。
電源コードも さすがにひび割れしているので 新品に交換しました。





時代的に古いと思われる回路図



今回の実機と同じ回路図。
但し 現物に比べAVC回路の平滑抵抗(回路図印の部分)が省略されている。
多分回路図の間違いと思われます。
さらに
シャーシの背面にオクタルソケットが組み込まれていて、不思議に思っていたのですが、
回路図を見ると外部電源で動作できる仕掛けだったようです。










調整
IFTの調整は済ませたので ダイアルの目盛合わせです。
中波と短波1(バンド2)までは可変のパディングコンデンサーがついているので 比較的簡単に合わせられました。
ところが バンド3はパディングコンデンサーが固定なので大変です。

6.15MHz付近で6MHzが受信できるのですが、コイルの間隔を調整しても ここまで動きません。
パディングコンデンサーの容量が大きくなる過ぎているのかと外して測定してみても殆ど変化なしです。
どうも このあたりが合わないと気持ちが悪いので 悩みました。
インダクタンスが足りない場合はコアを入れて調整できるのですが 逆ですから困ります。
数時間ほど格闘して、ついに真鍮を挿入することでインダクタンスの調整をすることにしました。
低い方が合えば 高い方の周波数はトリマで合わせられます。
これで何とか実用的に使えるようになりました。
バンド3は5.5M〜17MHzまで受信範囲です、コイルは同じボビンに巻いてあり、3個のうち中央部分です。
この為 他のコイルに影響させず 調整するのに工夫が必要でした。
最終的には 最後に両端(バンド1 2)を微調整して終わりにしました。

バンド4は独立コイルです 受信範囲は16〜45MHzです。
感度の点でも実用的ではないので 悩ましいのですが、念のため周波数を合わせるこに挑戦しました。
実はこのバンドは狂いが大きく コイルの調整範囲を超えていると予想されていたのですが、
無理に コイルを広げてみました。
17MHz付近で あと 数十KHzまで追い込んだところで、念のため 高い周波数を確認しよとすると発振停止です。
ANTコイルとOSCの共振周波数の差が近くなるので 引き込み現象を起こして駄目になるのです。


  この状態だとインダクタンスが多いのです。 
   コイルの間隔を広げることで インダクタンスを減らします。
これであと数十KHzまで追い込んだのですが・・。
元に戻しました。
デッドポイントが大きいんです。


感度試験

最終的に感度試験もしました。
想像以上に高感度でした、5球スーパーにBFOを付けただけですから 余り期待していなかったのですが。
ダブルスーパーのICF−5900より 少し悪いくらいの感度です。

2013年10月18日
2013年10月28日:178
2013年10月29日:333

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