RF1 IF2増幅・電池管受信機  ハリクラフター S−39の修復


電池管を使った4バンド受信機。
1T4 1R5 1P5GT 1P5GT 1H5GT 3Q5GT 1H5GT 35Z5 35Z5
高周波1段増幅 中間周波2段増幅 BFO付 バッテリー やAC(117V) DC 電源用
バッテリーは45Vの電池2個(B電源 90V)と6V(A電源)の電池を利用する。
2本の35Z5 35Z5はフィラメントとB電源用です、立ち上がるのに時間がかかるのが欠点です。
整流管のヒーターは抵抗を含めて、直列に接続されています。
整流したB電圧は2本とも並列に接続され、それぞれ分割して利用されています。

電池管のフィラメントを直列に接続して使う受信機の修理は慎重にする必要があります。
すこしの油断で フィラメントを断線させる可能性が高いからです。
傍熱管の受信機に比べ、手間が2倍以上かかります。





分解した時の画像です。
最初は回路図も無かったので、35Z5付近の調査から始めました。

フィラメントは2系列で構成されていて、それぞれが50mAですから、合計100mA必要です。
他にB電源用が必要になり、35Z5GT2本並列でこれをまかなう仕掛けでした。
フィラメントの接続は
電池使用時:下記の2系列でそれぞれ6V。
@3Q5の1/2 V8(1H5GT) V4(1P5GT) V5(1H5GT)
A3Q5の1/2 V1(1T4) V3(1P5GT) V2(1R5)
AC DC使用:
V6(3Q5) V8(1H5GT) V4(1P5GT) V5(1H5GT)の7.5V
V1(1T4) V3(1P5GT) V2(1R5)の4.5Vの2系列になる。
このようにする理由はAC使用時B電圧が高く、最適なバイアス電圧を得る為のようです。
電池管の出力管のバイアスは電池の場合 計算上5.25V AC使用時 6Vになる。

部品の交換は、あちこち他の部品の下側になっているので、手前側の部品を外してから行います。
ペーパーコンデンサーは絶縁不良が多かったです。

抵抗は断線している物がありました。


1R5のソケット、8ピンあります、こんな物は始めて見ました。
何故こんな物を使ったのでしょう。


ブロック型のケミコンは交換しやすいように4ピンと6ピンのプラグ付です。
試験してみると、見事に駄目です。
ST管のベースを利用して代用品を製作しました。
最近のケミコンは小型なので、この点では便利です。
左右の黒い物が代用品。


こんな形で組み込まれていました。


修理後のケミコン。


動作試験中。

持ち込まれた状態で、不良部品を交換して動作中。
音が小さいのと、歪が大きいです。
右下のセメント抵抗は何故か組み込まれていました。
これが無いと動作しません。
原因は1T4 1R5 1P5GT(V1〜V3)のフィラメント電圧が低下するためです。
経年変化でオリジナルの状態では動作しなかったようです。
写真中ほどの円筒状のものは最初ケミコンかと思ったのですが、
ここはロッドアンテナの収納部分でした。




元々この機種はAC117Vで使われる設計です。
それを日本でトランス無しに使うには工夫が必要です。
整流管をシリコンに変更し、各部分の抵抗値を変えました。

1250Ωのセメント抵抗は3,000Ωの抵抗に変更しました。
これで、3Q5の系列には7V、1T4 1R5 1P5GTの系列には4.5Vが加わるようになりました。
フィラメント電圧は微妙なので、調整に苦労しました。


ガラスヒューズは持ち込まれた時から組み込まれていました。
ヒューズが無いと不安ということで組み込んだのでしょう。
整流管のプレートとカソード間にシリコンダイオードを2個込みこみました。
原理的には1個でも電流値からすると耐えられるのですが、24Ωのラッシュ防止抵抗が入れてあるので、
W数の関係もあり、それぞれにダイオードを組み込みました。

元の真空管に戻す時はこのダイオード2本を外してください、簡単にオリジナルの状態になります。



更にフィラメント電圧降下用の抵抗にタップがあり、これが使われていないようなので、
この間をショートしました。
真空管に加わる電圧を見ながら可変する必要があります。




今回の修理で 一番手間がかかったのはフィラメント電圧の調整でしょう。
傍熱タイプの真空管を使った受信機に比べ、作業の手間は2倍以上かかりました。

455KHzのIFT調整、各バンドごとの目盛り合わせ、トラッキング調整をしました。
IFTは相当帯域が広い感じで、あるいは同調コンデンサーのQが落ちているのかもしれません。
IFTを分解修理すれば良いのでしょうが、とてもそこまでは手が廻りませんでした。
トラッキング調整はQが高いらしく、非常に微妙でした。
なお最高の周波数バンドは発振せず、受信できませんでした。


ACで動作中のS−39。
注意事項
ただこの機種のケース部分はアースで電灯線の片側が接続されています。
コンセントにコードを挿す時は注意した方が無難です。
ホット側がケースに出る接続だと感電する恐れがあります。

特に金属の机の上に置くときは注意した方が良いでしょう。
2台なれべて、机の上におくとブレーカーを飛ばす恐れもあります。
なお使用する電圧は100Vです。
ステップアップトランスは不要です。
安全の為には100V:100Vの絶縁トランス(20〜30VA程度)を使うと良いでしょう。



取り外した部品、但し真空管は使用できます。
真空管だと通電後20秒程度音が出なかったが、
シリコンダイオードだと2〜3秒で音が出ます。
これは非常に良いことです。
それと15Wのヒーター電力が削減できます。

ネットで見つけた回路図です、原画はこちらにあります。

この機種の説明は調べてみたらCQ誌 1947年11月発行のNO 5に掲載されています。
昭和22年のCQ誌ですから、古い時代の受信機です。

2009年9月28日
2009年9月29日:185


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