無名メカー製6石トランジスターラジオの修理

無名メーカーの6石トランジスターラジオの修理をしました。
無名と言ってもUnited Royalと表示されています。 
修理は思い違いから着手したのですが、修理そのものは想像以上に大変でした。
元箱入りのラジオですが、恐らく昭和30年代後半の製品と想像されます。
外見上は非常に綺麗であまり使われていないようですが、内部はだいぶ修理痕が有ります。
もしかして「キットを組み立てたのか」と思われるほど、半田付けをやり直した跡があります。
あるいは修理途中で投げ出したものかもしれません。


元箱入り。
右側はケース。
当然回路図がありません。
パターンを追いかけて見当をつけるのですが、
ジャンパーやトランスのリード線がやたら多くて、
部品の陰になり、不明な部分が多くて困りました。
部品を動かさぬと見えない部分があります、
しかし動かすとパターンが取れそうで怖いです。


分解したところ。
ゲルマニュームトランジスターが使われている。
低周波トランスはリードタイプで、
とんでもないところに接続されているので回路を追いかけて行くのが大変。
初期のトランジスターラジオに多い、接着力の極端に弱い銅箔を使っています。


昭和30年代中頃から後半にかけて流行した裏基板方式。
裏基板という言葉は我々コレクター仲間の通称です、
正式になんと言うかは知りません。
ケースを開けたときにトランジスターが見えません。

この時代の基板の銅箔は接着が悪くすぐ外れます。
外観に比べ、彼方此方修理したような痕跡がありました。


賽の河原

@苦心して、不良部品を交換し、なんとか動作するようになりました。
Aしかし音量の調整がほとんど出来ません、また間歇的に動作しなくなります。
調べてみるとVRの残存抵抗が相当有ります、これでは音が小さくなりません。
さらに端子部分がぐらぐら状態です、この為接触も悪いようです。
仕方なく新品と交換しました。
まったく同じ物が無いので、工夫してつけました。
(ケースに入れた時、多少操作感が悪い時があります)
B完了と言うことで、ケースに入れました。
処が音が出ません、どうもケースに入れるとどこかがショートしているようです。
これを修正して、再度組み立て、やれやれと思っていると
C今度はラジオを上向きにした時はOkなのですが、下向きにすると音が出ません。
真空管ラジオならともかくTRラジオでは初めてです。
IFTのコアの割れを疑ったのですが、これは調べた結果違うことがわかりました。
D結局わかった事は不良部品(検波後の0.1μFコンデンサー)の芋半田らしいということです。
部品を交換して修理できました。
Eしかし外した0.1μFコンデンサーはショート状態でしたが、
この部分が芋半田だったのか、あるいはショートと回復を繰り返していたのかは現在不明です。
ラジオを上向きと下向きでこんな小さなコンデンサーの内部でショートと回復を繰り返していたとは想像できないのですが、
芋半田にしても考えにくいです。
F半田コテで取り外した後は熱変形しているので素人が確かめるすべはありません。
非常に不思議な故障でした。
G修理しても 修理しても次々壊れるので「賽の河原」的故障と呼ぶべきでしょう。
H動作するようになって心配なので、3日ほど動作させて見ました、何とか無事動作しましたので完了と言うことにしました。

反省
トランジスターラジオ生産初期の無名メーカーのラジオは修理が困難なものがあるという事を改めて認識しました。
時間で換算すれば数倍の工数がかかってしまいました。
その部分は修理した自分が割り切れば良いのですが、どうも信頼性がいまいちです。
こちらの方は依頼者に割り切れなさを感じるのではと心配しています。

ご注意
皆さん初期のトランジスターラジオを購入する時、修理が難しいものがあると想定すべきでしょう。
動作を期待する場合、無名メーカーのこの時代のものは避けたほうが無難です。
修理は出来るのですが、使って壊れないと言うことは期待できません。
電気的にOKでも、機械的に非常にひ弱です。

2002年6月26日

ラジオ工房TRラジオ博物館1へ



2006年8月5日よりカウント

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